バンクシー展 天才か反逆者か② | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

先日の続き。まずは「政治」から。

 

バンクシーは政治を好んで採り上げ、イギリスのEU離脱などといった政治的な問題で暫し意見を述べてきました。バンクシーの作品には政治に対する意見がはっきりと表われています。

 

 

アイ・フォウト・ザ・ロウ(2004)

1981年3月30日に起こったレーガン大統領暗殺未遂事件から得た作品。男は負傷して地上に横たわり、CIA職員に取り囲まれている。彼が持っているのは銃ではなくて筆。おそらくバンクシーの分身であろう。

 

 

クイーン・ヴィク(2003)

治世中(在位1837-1901)ゲイに反対する法律を通したヴィクトリア女王。その女王を卑猥な性行為を営むレズビアンとして描き、イギリス政府が偽善に満ちていることを示唆した。

 

 

プレグジット(2017)

2017年、イギリスの港町ドーバーに突如出現した作品。巨大なヨーロッパ連合の旗から作業員が金色の星の1つを削り取る様子は、イギリスの長びくEU離脱のプロセスを表している。作品は建物のオーナーによって塗りつぶされてしまったが、今でもバンクシーのインスタグラムには残っている。

 

 

ポム・ミドル・イングランド(2007)

芝生でペタンクに興じる3人の中年女性。ボールは導火線に点火された爆弾である。果たして、凡庸な中流階級を皮肉ったのか?戦争や破壊、貧困という残酷な現実から保護されている上流階級を批判したのか?

 

 

ロイヤル・ファミリー(2001)

2001年ロンドン・ハックニー地区に出現。英国王室の人々を漫画キャラクターとして描いた作品で、2003年にはブラーのシングル「クレイジー・ビート」のジャケットになった。地元当局が上塗りしようとしたが、作品を守ろうとする人々のおかげで今でもほぼそのままの状態で残っている。

 

 

ターフ・ヴォー(2000)

2000年5月、環境運動家達がロンドンにあるチャーチル像の頭を芝生で飾るという事件が起こった。英語の「ターフ」には、「芝生」と「領土」2つの意味がある。バンクシーはそこからヒントを得て、チャーチル首相をモヒカンのヘアスタイルにし、泣く子もだまる政治家から、反体制のパンク・ロッカーへと変身させてしまった。

 

 

モンキー・パーラメント(2009)

サル議会の議員たちは互いにバナナを投げ合うつもりでいる。議員たちによる経費不正申告という国民的スキャンダルに応じて制作された作品。2019年、サザンビーズのオークションで990万ポンドの値がついた。

 

 

モンキー・クイーン

背景の標的はイギリス国旗の色で、サルの肖像はエリザベスⅡ世を表わしている。もともと路上で見れる作品だったが、女王の戴冠50周年の式典が控えていたことから政府の依頼で撤去された。

 

 

次は「スマイリー・コッパー」。若き日のバンクシーが生み出した象徴的イメージらしく、様々な技法で描かれています。

 

 

スマイリー・コッパー

背中に天使の羽をつけ、優しい微笑みを浮かべた制服姿の警官。一見、友好的に見えるが、手にはマシンガンを抱えている。バンクシーにとって警察は、いつ攻撃のための銃が使われるか分からない要注意人物以外の何者でもなかった。

 

 

ストップ・アンド・サーチ

「オズの魔法使い」の主人公ドロシーと愛犬のトトが警官に呼び止められ、かごに不法に持ち込んだものを隠していないか検査を受けている。移民をめぐる問題や政府による入国規制を風刺した作品。

 

 

スノーディング・コッパー(2007)

警官がコカインを吸い込んでいるこの絵は、2007年にトイレの壁に描かれて塗りつぶされたが、2人の実業家によって建物ごと買い取られて壁から切り取られ、16週間かけて修復され、2017年に元の場所に戻って来た。今はガラスに守られて公開されている。

 

 

ルード・コッパー(2002)

紙に描かれたものを250部発売。モデルの男性にサインした一枚をあげている。バックにはアナーキーのシンボルマーク。警察が友好的なことはめったになく信頼すべきものではないと警告している。

 

 

グラニーズ(2006)

老女たちが編んでいるセーターには、「パンク・ノット・デッド(パンクは死んじゃいない)」「サグ・フォー・ライフ(我が道を行く)」と、穏やかな笑顔には似合わない過激な言葉が書かれている。大衆文化の基盤の揺らぎを象徴した作品。

 

 

ポリス・キッズ(2005)

「警察」と書かれた防弾チョッキを着た子供たち。一見楽しそうな絵だが、親の過干渉によって自由を奪われた子供を表わしていて、バンクシーは保護から守る保護の必要性を訴えている。

 

 

コップ・カー(2003)

ここには警官の過酷な仕事が描写されている。自分たちの車のことすら把握できていないのに、どうやって市民を守ろうというのか。

 

 

ワン・ネイション・アンダー(2008)

赤いジャケットを着た少年が梯子に上り、壁にメッセージを書いている。「CCTV(監視カメラ)の下で、国民よ一つになれ」と。そして地上から、少年は番犬を連れた警察官に撮影されている。ここでバンクシーは、私たちが進歩の道をたどればたどるほど、プライバシーの権利が失われ、カメラの監視下に生活を送ることになるという事実に注意を促した。現在ロンドンのニューマン・ストリートにある郵便局の側壁にこの作品は存在しない。

 

 

なお、イギリスで人間が監視カメラに映る回数は、1人1日当たり平均300回。カメラの設置数は2007年の時点で420万台に達していた。これは世界中の監視カメラおよそ20%に相当する。

 

 

政府当局はこれほど大量のカメラを必要とする理由について、法執行機関による犯罪検出を支援するためと主張。しかし、監視カメラの映像で解決した犯罪は、わずか3%に過ぎないのが実情だ。それにしても、イギリスってそんなに治安の悪い国なのでしょうか?

 

 

今日はここまで。次に続きます。