バンクシー展 天才か反逆者か③ | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

先日の続き。まずは「抗議」から。

 

私有地に不法侵入し、他人の家の壁をキャンバス代わりに使うグラフィティ。それに続くストリートアートは抗議という形で姿を現わしました。バンクシー作品のほとんどは、ある種の独断的な意見、あるいは社会に存在する生き方に対する彼の抗議とも言えよう。

 

 

なんだか自身のアート活動を正当化したようにも聞こえますが。以下「抗議」に関する作品です。

 

ファミリー・ターゲット(2003)

子供が標的になっている。家庭を築き、子どもを持つことを人生の第一目標とすることに疑問を投げかけたのか?それとも、世界のあらゆる不正や悪事が子供たちに影響を与えることを警告したのか?

 

 

ゴルフ・セール

1989年の天安門事件をテーマにした作品。この絵のヒーローが持っている「ゴルフ・セール」と書かれた看板は、ゴルフ用品のセールによって戦車を止めることができるという意味なのか?それとも、戦車の列に抗議することはゴルフ・ボールで敵を狙撃するのと同じくらい無駄なことだと言いたいのか?

 

 

ハブ・ア・ナイス・デイ!

2列の武装した兵隊が、戦車を真ん中にして並んでいる。兵士たちはただ微笑を浮かべながら、破壊をするための体制を整え、歩みを進めるときを今か今かと待ち望んでいる。植民地反対を訴えた作品。

 

 

ラブ・イズ・イン・ジ・エアー(2003)

パレスチナを旅行した際、ベツレヘムのアッシュ・サロン・ストリート沿いの建物の壁に描いたもの。後で知った事だが、狙撃される危険もあった。男が手にしているのは火炎瓶でなくて花束。バンクシーはこの作品で、どんな変革も平和的な手段で達成されなくてはならない、さもなければもっと大きな暴力を引き起こすことになると忠告した。

 

 

キープ・イット・リアル(2002)

広告バナーを身に着けた悲しげなサルは、メディアに翻弄された人間の象徴。バンクシーは、この地球の誰もが自分自身に対して正直であり続け、「本当の自分」が面白いと思う方向に進む権利があると信じていた。

 

 

ラフ・ナウ(2000)

もの憂げなサルが「いまは笑うがいいさ。でもいつかは俺たちがやってやる」という標語をぶら下げている。後にこのテーマを発展させ、サルたちに別の標語を持たせた。「警察に嘘をつくことは決して間違っていない」と「本当の自分であれ」だ。このシリーズのうち1点は2008年に50万ドルで売れた。

 

 

ドント・パニック・ポスター(2010)

「ドント・パニック」用に制作したポスター・シリーズの1枚。当初バンクシーは、2010年サンダンス映画祭での自作映画「イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ」のプレミア試写会に先駆け、パークシティとソルトレイクシティでこれらのステンシル作品を制作した。

 

 

不法侵入をお許しください(2011)

2011年、ロサンゼルス現代美術館で開催された「ストリート・アート」展で、バンクシーは地元の学校の生徒たちと共に、3連の祭壇画を制作。最後にペンキの缶と刷毛でひざまずく少年を描き、作品を完成させた。少年は両手をしっかりと合わせ、祈りを捧げている。

 

 

次は「戦争」。

 

バンクシーは著書の中で、戦争や軍隊について次のように意見を述べています。「世界で最も大きな犯罪を実行するのは、規則を破る側ではなく、規則を守る側の人間だ。命令に従う連中が爆弾を投下し、いくつもの村を破壊する。」と。

 

 

なんだか自身のアート活動を正当化しているようにも思えますが。確かに。太平洋戦争末期、アメリカが日本に原爆を落としたのは卑劣なこと。バンクシーの言い分も一理あります。

 

 

以下「戦争」に関する作品を挙げました。

 

フラッグ(2006)

1945年2月にジョー・ローゼンタールが撮影した報道写真「硫黄島の星条旗」がもとになった版画作品。壊れた車の上に星条旗を立てているのは、兵士でなく10代の子供たち。過剰な軍事費によって子供たちに対する国の支援が滞っていることを示唆している。

 

 

ヘビー・ウェポンリー(2003)

2003年にバルセロナのある通りに出現した作品。ゾウが背負っているのは爆弾。第2次世界大戦中、ドイツの首都が爆撃され、ベルリンの動物園でゾウが死んだ出来事からインスピレーションを得た。

 

 

バッド・ミーニング・グッド(2002)

悪こそ善なり。この言葉は1987年頃、マイケル・ジャクソンのヒット曲「Bad」と共に生まれた。2002年7月、アルティメイト・ジレンマレーベルが「バッド・ミーニング・グッド ボリューム1」と題されたアルバムをリリース。幅広いミュージシャンの楽曲を集めたこのシリーズは、CDおよびLPで全4作を発表。そのシリーズのカバーアートを担当したのが、バンクシーだった。

 

 

モンキー・サーファー・オン・ボム

バンクシーは1999年以来、爆弾に乗って飛ぶサルのイメージを用いている。以前は爆弾に乗って都市の方に飛んでいくだけのイメージだったが、あるときバンクシーは、このモチーフにあるものを加えた。イギリス政府に狙いを定めたのだ。こうして彼は、自分のものの見方が政権与党と異なることを示そうとした。

 

 

モンキー・デトネーター

飛び上がって大爆発を起こそうとするサルがダイナミックな身振りとともに表現されている。しかし見る人の予想は、サルの好物であるバナナを見たとたんに裏切られる。つまりサルは、自分に必要だと思い込んでいるものを求めているうちに、本当に必要とするものを知らない間に破壊しているのだ。

 

 

ロング・ウォー(2003)

2003年2月15日、イギリス史上最大の反戦運動が起こった。イラク侵攻に反対して、100万人から200万もの人々が街頭を行進したのである。それを受け、26名のアーティスト集団が、アート作品をロンドンのアクアリウム・ギャラリーに展示。そしてバンクシーの「ロング・ウォー」は、反戦運動を象徴する作品になったのである。

 

 

ナパーム弾

ニック・ウトによる報道写真「ベトナムのナパーム弾(1972)」に基づく作品。燃えている服を脱ぎ捨て、泣き叫びながら走る少女。両側に配したミッキーマウスとマクドナルドはアメリカ文化の象徴である。微笑む彼らは少女を救おうとしているのでしょうか?それとも恐ろしい結末へ導こうとしているのでしょうか?

 

 

アプローズ(2006)

視聴者は24時間配信されるニュースにより、戦争もエンターテインメントの一部であるかのように錯覚してしまう。最前線からリアルタイムで送られてくる映像は、世界各地で繰り返される争いの残酷さを正しく伝えていない。この作品では色鮮やかなベスト、そして「アプローズ」と記されたサインがモノクロの全体と対照的なコントラストを描き、コピーを繰り返すことで経年劣化のようなタッチが再現されている。

 

 

ハッピー・チョッパーズ(2002)

2002年、ロンドンのオールド・ストリートに現れた作品。2004年、壁の近くに別の建物が建てられ、今では通りの反対側からしかこの作品は見えない。作品タイトルの「チョッパー」はアメリカのスラングでヘリコプターを意味する単語。バンクシーは飛行隊を描いたが、それらをピンクのリボンで飾り、軍事的に手を取り合って愛国主義を生み出す行為を嘲笑した。

 

 

ボム・ラブ(1998)

ここに描かれた少女は、巨大な爆弾をまるでぬいぐるみを抱きしめるかのように抱えている。その愛情あふれる腕に包まれれば、どれほど強力な爆弾さえも無力化できるかもしれない。

 

 

CNDソルジャーズ

反戦宣言としてイギリスの国会議事堂前に設置したものだが、すぐさま当局により撤去された。兵士たちは平和のシンボルを描いているが、その一方で使っているのは血を連想させる赤い塗料。彼らは恐怖の表情を浮かべており、まるで警官に逮捕されるのを恐れているかのようでもある。

 

 

なんだかバンクシーって安保闘争の時代の若者のよう。そういえばアメリカに追いつけ追い越せの時代で、音楽も洋楽が流行りましたね。ビートルズが好きな人ならバンクシーの絵もいいと思うのかな?

 

 

今日はここまで。次に続きます。