「四海の数」展 | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

2月1日(土)の散策。

 

 JR芦屋駅から南へ25分ほど歩き、芦屋市立美術博物館に到着。

 

 

 数をテーマにした現代アート展を見に行きました。

 

 

 展示は今井祝雄(1946-)氏の作品から始まりました。「10時5分(1972)」は、その名のとおり1972年10時5分、ブラウン管に映った映像をスクリーンプリントした作品です。

 

 

 1979年5月からほぼ毎日、日記代わりにインスタントカメラで自分の顔を撮り続けているという今井氏。「ときの重奏(2005)」は、2004年まで25年分のデイリーポートレイトを9分半の映像で流すというとても面白い作品です。

 

 

 久門剛史(1981-)氏の新作「Artist(2019)」。真っ暗な室内に雷が響き渡り、嵐の夜を連想させます。乱数を用いた作品で、不規則に変化する光や音をコンピュータで制御。雷が光った時に見えるバックの絵は、具体美術協会の元メンバー、田中敦子(1932-2005)氏の「作品(1963)」です。

 

 

 壁に掛かっている時計は、久門氏が制作した「clossfade(2019)」です。肉眼では見えない小さな数字が、一定の時刻になるとルーペが重なって読めるようになるというものです。

 

 

ここで何度か出てきた 具体美術協会について説明。

 

 具体美術協会とは、1954年、吉原治良(1905-72)を中心に芦屋で結成された前衛美術のグループです。「ひとの真似をするな、今までに無いものをつくれ」という吉原氏の思想のもと、野外などで次々と従来の表現を超えた作品を発表しました。

 

 

 その活動は、フランスの批評家ミシェル・タピエ(1909-87)によって海外に紹介され、評価されました。1972年、吉原氏の死によって解散しましたが、その後も国内外で展覧会が企画されるなど、戦後日本美術を代表するグループとなっています。

 

 

 

 以下、具体美術協会会員の奇抜な作品を挙げてみました。筆の勢いと色で気持ちを表現したようです。

 

 

 木枠に張った多数の紙を突き破って通り抜ける紙破りのパフォーマンスで知られている村上三郎(1925-96)氏。

 

 

 床に広げたカンバスの上に絵の具を置き、天井からぶら下がったロープにつかまりながら裸足で描く手法を考案した白髭一雄(1924-2008)氏。

 

 

 

 観客自身がパフォーマーで作品の一部になる、津田道子(1980-)氏のインスタレーション、「あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。(2019)」。目の前の人と映像の人は別人で、映像は24時間前の様子を映したもの。残念ながらその時間に人がいなかったようで誰にも出会えず、作品の醍醐味は分からずじまいでした。

 

 

 お気に入りの作品は、中村裕太(1983-)氏の大作「かまぼこを抽象する(2019)」。長谷川三郎(1906-57)氏の版画「眼横鼻直(1956)」や「蒲鉾板資料(1997)」などを分解・考察し、生み出された作品です。

 

 

 どんな作品が出品されているのか想像がつかず、好奇心だけで行った展覧会ですが、期待以上に良いものでした。

 

 

 美術博物館の庭に、小出楢重(1887-1931)氏のアトリエを復元した建物があります。

 

 

 小出氏のデビュー作は第7回二科展に出品した「Nの家族(1919)」。フランス留学から帰国後の1924年、信濃橋洋画研究所を創設し、関西洋画壇の指導者として活躍。晩年は日本独自の裸婦表現を確立した人物として、高く評価されました。

 

 

 チケット購入時にもらった割引券を使うため、美術博物館の敷地内にある喫茶店に入りました。昔ながらのレトロな喫茶店。この時代、レジの無い喫茶店も初めてです。

 

 

 「四海の数」展限定メニュー、ラムレーズンのワッフルを注文しました。コーヒーとのセットで700円。どうも限定品に弱いです。

 

 

 甘い物を食べる気力が蘇ってきました。散策はまだまだ続きます。