138億光年 宇宙の旅④ | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

今日でこの話は最後です。



銀河の種類

 

 太陽系の属する銀河系(天の川銀河)は、宇宙に数多くある銀河のひとつにすぎません。宇宙には銀河が1000億個あるとも言われており、渦巻銀河や楕円銀河など形もさまざまです。


 

 渦巻銀河は「バルジ」と呼ばれる中心付近の膨らんだ部分の周りに円盤があり、円盤部に「渦状腕」が渦を巻きながら伸びている銀河です。250万光年の距離にあるアンドロメダ銀河も渦巻銀河のうちのひとつです。

 

 

 りょうけん座方向2350万光年の距離にあるM106も渦巻銀河のうちのひとつです。この銀河団は腕が4本あり、そのうち2本の腕(青や紫に見えている部分)には星がほとんど無く、高温のガスと塵から成っています。

 

 

 バルジが細長い構造をしている渦巻銀河を「棒渦巻銀河」といいます。太陽系が属す銀河系(天の川銀河)も棒渦巻銀河です。

 

 

 うみへび座方向1500万光年の距離にあるM83(南天の回転花火銀河)も棒渦巻銀河のうちのひとつです。画像はM83の中心付近、幅5万光年ほどの範囲をとらえたもので、数多くの星や星団、超新星残骸などが写し出されています。特にピンク色の領域は、活発に星が生まれている所です。

 

 

 一方で、円盤が見られず楕円体をした銀河を「楕円銀河」といいます。おとめ座方向2800万光年の距離にあるM104は楕円銀河のひとつで、「ソンブレロ」というメキシコの帽子に形が似ていることから「ソンブレロ銀河」と呼ばれています。

 

 

 おとめ座方向5500万光年の距離にあるM87も楕円銀河のうちのひとつです。画像はその中心にある巨大ブラックホールの影をとらえたものです。ブラックホール周辺にあるドーナツ状の光は、輝くガスなどの明るい所からの光が、強力な重力によって極端に曲げられて地球に届いたものです。

 

 

 バルジと円盤はあるが渦状腕が見られず、凸レンズのような形をした銀河は「レンズ状銀河」と呼ばれています。りゅう座方向4400光年の距離にあるNGC5866は、数少ないレンズ状銀河のうちのひとつです。

 

 

 上記のどの形でもない銀河は「不規則銀河」と呼ばれています。画像は、おおぐま座方向1200万光年の距離にあるM82をすばる望遠鏡がとらえたもので、星々が集まった青白い銀河円盤と垂直方向に広がっているのは、銀河中心部で起きた爆発的な星形成や、超新星爆発によって電離した水素ガスが銀河の外まで噴き出したものです。

 

 

 きょしちょう座方向21万光年離れた所にある小マゼラン銀河も、不規則銀河のうちのひとつです。画像は小マゼラン銀河にある散開星団。星団からの強烈な放射が、星団が生まれる元になったガス雲を吹き飛ばして空洞が空いたような状態になっています。

 

 

 他、かじき座方向16万3000光年の距離にある大マゼラン銀河も不規則銀河です。画像はその中にある超新星残骸SNR0454-67.2をハッブル宇宙望遠鏡がとらえたものです。

 

 

 タランチュラ星雲は、大マゼラン銀河にある星形成領域です。この画像では、幅600光年にもわたる範囲がとらえられています。画面中央左側はNGC2070という巨大な星団で、その中心部には太陽の100倍の質量をもつ星が数多く存在しています。

 


 

相互作用銀河

 

 相互作用銀河とは、複数の銀河が互いの重力の影響で変形したり、合体しつつあったりする銀河を指します。りょうけん座方向3100万光年の距離にあるM51は、大きな渦巻銀河NGC5194と小さな銀河NGC5195の相互作用銀河で、「子持ち銀河」とも呼ばれています。

 

 

 ペガサス座方向2億9000万光年の距離にあるHCG92は、1877年にこの天体を発見したフランス天文学者の名前にちなんで、「ステファンの五つ子」とも呼ばれています。

 

 

 うみへび座方向3億2600万光年の距離にある銀河団Arp142は、渦巻銀河NGC2936と小さな楕円銀河NGC2937からなる相互作用銀河で、ペンギンが卵を抱いているようにも見えます。

 

 

 アンドロメダ座方向3億4000万光年の距離にある銀河団Arp273。画面下に見える銀河UGC1813の重力の影響で、渦巻銀河UGC1810の渦状腕が変形していて、変形したその銀河の形はバラのようだとも形容されています。

 

 

 うしかい座方向4億5000万光年の距離にある銀河団Arp302。「!マーク銀河」とも呼ばれる相互作用銀河で、地球からの見た目の角度が違う2つの銀河が、互いに重力の影響を及ぼし合って相互作用しており、いずれは合体すると見られています。

 


 

局部銀河群

 

 銀河を作っているのは恒星だけではありません。銀河内には恒星の材料となるガスや塵も漂っているし、さらには正体不明のダークマターも存在しています。それらが重力で集まって銀河ができているのです。

 

 

 銀河は「銀河群」や「銀河団」と呼ばれるグループを形成しているものが多く、銀河系の近傍直径500万光年の空間に集まった銀河群を「局部銀河群」と呼んでいます。アンドロメダ銀河もその一員で、中には数千個もの銀河が集まった銀河団もあります。

 

 

 銀河同士の距離が近いと、互いの重力によって影響を及ぼし合い、銀河が変形してしまうことがあります。さらに重力で引きつけ合い、衝突・合体してしまうことも宇宙では珍しくありません。銀河系とアンドロメダ銀河も、数十億年後には衝突する運命にあると考えられています。

 


 

重力レンズ現象

 

 重力によって光は曲がります。そのため銀河や銀河団などの重力によって、より遠方にある銀河からの光は曲がることになります。そのような現象は「重力レンズ現象」と呼ばれます。

 

 

 重力レンズ現象によって遠方の天体からの光が明るくなることもあり、遠方の宇宙観測にも利用されています。また、ダークマターの正体は不明ですが、周りに重力を及ぼすことは分かっているとの事。重力レンズ現象を調べることで、銀河団の中のダークマターの分布も調べられています。

 

 

 こちらはハッブル宇宙望遠鏡が撮影したくじら座方向58億光年の銀河団MACS J0025.4-1222の画像に、高温ガス(青)やダークマター(ピンク)の分布を重ねたものです。

 



宇宙の果て

 

 光は1秒間に30万kmずつ進みます。そのため、遠くにある天体からの光が地球に届くまでには時間がかかります。つまり、遠くにある天体を見ることは、過去の宇宙を見ることになるのです。

 

 

 ろ座方向130億光年以上の距離にある「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」という領域には、およそ1万個にも及ぶ銀河があり、宇宙が誕生してから130億光年以上の距離にある銀河も写っています。

 

 

 宇宙の成り立ちに迫ろうと、2001年にWMAP衛星が打ち上げられました。138億年前に誕生した宇宙背景放射が、今のところ人類がとらえた最も遠い宇宙からの電磁波とされています。

 

 

 地球から始まった宇宙の旅は、太陽系惑星を通り抜け、銀河を彷徨い、宇宙背景放射に辿り着きました。それにしても、138億年前のものをこうして見れるのもすごい事です。