千年の甍(古代瓦の製法) | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

 瓦づくりは古代(飛鳥時代~奈良時代)から行われ、製法は近年まで引き継がれました。瓦づくりは粘土選びから始まります。粘土は山や畑、水田から採掘し、2年ほど雨つゆにかけ、何度もひっくり返して寝かせます。

 

 その後適量の水を加えながら素足で踏みつけます。この作業を「土打ち(つちうち)」と言います。土打ちした粘土は「タタラ盛り」を行い、瓦の大きさや厚さに合わせた板状の粘土を切り出します。

 

 土づくりに使う道具

 

 

 板状の粘土を形づくります。形づくりは大まかに丸瓦と平瓦に分かれます。

 

● 丸瓦

 

 丸瓦は円筒を縦に割ったような形状で、平瓦と平瓦の間に被せ、雨漏りを防ぎました。丸瓦は玉縁(たまぶち)があるものと無いものがあります。どちらも円筒形の木型に麻布袋を被せ、粘土を巻き付けて叩きしめた後、2分割します。

 

 丸瓦の製造

 

● 軒丸瓦

 

 軒の先に用いる軒丸瓦は、雨が軒先から中に入らないように先端部分に紋様を施した瓦当(がとう)を設けています。紋様は「范(はん)」と呼ばれる硬めの木を彫った木型に粘土を押して写します。桶巻きで2分割した丸瓦と瓦当部分を接合して作ります。

 

 軒丸瓦の製造

 

● 平瓦

 

 平瓦は長方形の板を反らしたような形で、幅が細い方が軒先になります。木型(桶)に麻布袋を被せ、粘土を巻き付けて円錐台形に成形し、乾燥させた後、4分割します。成形した瓦は、乾燥と焼きで約15%ほど小さくなるため、桶の大きさはそれを見越して計算しなければなりません。

 

 平瓦の製造

 

 

● 軒平瓦

 

 軒平瓦は軒丸瓦と同様、軒先から雨が中に入らないようにするだけでなく、強い風で瓦が飛ぶのを防ぐ役割もあります。軒丸瓦と異なり、平瓦と瓦当部分を一体化させた後、成形を行います。

 

 軒平瓦の製造

 

 

● 鬼瓦

 

 鬼瓦は大棟や下り棟の先端に、雨水が入らないように据え付けた飾りの瓦です。飛鳥時代から鎌倉時代の中頃(15世紀)までの鬼瓦は、「范(はん)」と呼ばれる木型に粘土を押して抜き出した板状のものでした。

 

 鬼瓦の製作道具は様々で、何種類もの道具を使います。竹ベラは職人が作るため用途は様々で、金ベラは磨きをかける時に使います。竹環(ちっかん)は玉粒のような珠紋を作る時に使います。鎌は余分な粘土を切り落とす物です。その他、粘土を削る土削りや、磨くための紐磨きや、しないベラなどがあります。

 

 

 形づくった瓦(素地)は乾燥させてから窯に詰め、徐々に窯の中温度を300~400度ぐらいまで上げてあぶります。あぶりは素地(そじ)や窯自体の水分を抜く作業です。次に火勢を1000度以上に上げ、高温を維持して本焚きを行います。すると粒子同士が焼結され、堅い焼き物へと変化します。その後冷まして窯出しします。あぶりから冷ましまで通常3昼夜ほどかかるそうです。