中学の頃の同窓会。

中学を卒業して、もう40年。

あの時、ともに青春を謳歌した友人は俺も含め皆、おじさんとおばさんとなっていた。



懐かしい顔に皆、顔がほころび
思い出話に花を咲かせた。


一人ビール片手にその様子を見ていると

スッと隣に一人の女が座った。


誰だっけな…?


「久しぶり。私のこと覚えてる?」

「えーと…?」

思い出せず自分の記憶を辿ると、一人の女生徒にたどり着いた。

早瀬 春奈だ。


彼女は中学時代イジメにあっていた。
女子からは無視され、男子からはよくからかわれていた。

もちろん俺も例外ではない。


あのイジメられっ子だった奴が、よく同窓会なんかに来たな。
と思いながらも

「あ!早瀬か!!久しぶりだなぁ」

俺はさも親しかったかのように、あの時の出来事など無かったかのように早瀬に話しかけた。


「今は結婚して、北村になったのよ。」
そう言ってビールを注ぎながら彼女は微笑んだ。


しばらく他愛もない話をしていたが
次第に会話につまる。

それもそのはずだ。
早瀬との思い出など俺にとっては無いも等しいものだった。

あるとすれば…
何も考えずただ周りに流され早瀬をからかったということだけだ。



なぜだろう。
今日まで早瀬のことなど思い出したこともなかったのに
今は鮮明に思い出せる。

机に突っ伏して誰とも会話をしなかった姿を

帰り道に一人泣きながら歩く姿を


昨日のことのように鮮明に思い出せる。



「なぁ早瀬。」

「なに?」

「あの頃は…悪かったな。」

40年越しに伝えた謝罪だった。


早瀬は泣いた。


何も言わず
ただただ泣いた。

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妻が死んだ。

78歳だった。



目が覚めるといつも私より早起きな妻がまだ隣で寝ていた。



「おい。」



声をかけても、揺すっても起きない。



もう歳だ。覚悟はしていたことだった。





「もうちょっと待てんかったかの。」

ポツリと呟いて

もう亡き骸となってしまった妻に布団を掛け直す。





隣町に嫁に行った娘に電話を入れる。

電話越しに娘がすすり泣く声が聞こえる。



「昼前にはそっちに行く。」



娘との電話を切り、冷蔵庫を開ける。





作り置きのおかずが3品入っていた。



ご飯をよそって、一人食卓につく。

会話もなくもくもくと食べる。



「おい。お茶くれ。」



しん。とした台所に向かって声をかける。



「そうか…。もう、いないんだったな。」



台所に立ってお茶を淹れようとするが、

湯のみはどこだ?茶葉はどこだ?

とウロウロするばかり。



「おい。何もできんぞ。俺は。」





歳をとると涙もろくなって仕方ないものだ。
言いたい事は山程あるが、言わない方が賢いことを僕はずいぶん前から知っている。





中学三年生のときにクラスであまり目立たない山田 洋平がクラスで人気の安藤 佳苗に告白する。と言い出した。



(高嶺の花だ。無理に決まってる。)

と思ったが

「うまくいくといいな!頑張れよ!!」

と言った。





結果はやはり残念なものに終わった。



山田はひどく落ち込んでいた。

どこに勝算を見出したのか、自信があったようだ。



(ほら、見ろ。ダメに決まってるじゃないか。)



そう思いながらも

「残念だったな。もっといい人がいるって。元気だせよ」

と励ました。



山田は嬉しそうに

「せっかく応援してくれたのに、悪いな。」

と笑ってみせた。





あれから10年。
いまだに山田とは友達でいる。

山田はまたしても不毛な片思いをしているようだった。

(懲りない奴だなぁ。)
と思いながら
「今度はうまくいくといいな。」
といかにも友達思いなセリフを言ってのけた。


家に帰ると、一緒に暮らしている彼女が飯を作って待っていた。
彼女の料理はいつも少し塩からい。
だが、それを指摘したことは一度もない。

今日も塩のききすぎた野菜炒めを食べながら
「美味い!!」
と笑ってみせるのだ。


言いたい事は山程あるが、言わない方が賢いことを僕はずいぶん前から知っている。