妻が死んだ。

78歳だった。



目が覚めるといつも私より早起きな妻がまだ隣で寝ていた。



「おい。」



声をかけても、揺すっても起きない。



もう歳だ。覚悟はしていたことだった。





「もうちょっと待てんかったかの。」

ポツリと呟いて

もう亡き骸となってしまった妻に布団を掛け直す。





隣町に嫁に行った娘に電話を入れる。

電話越しに娘がすすり泣く声が聞こえる。



「昼前にはそっちに行く。」



娘との電話を切り、冷蔵庫を開ける。





作り置きのおかずが3品入っていた。



ご飯をよそって、一人食卓につく。

会話もなくもくもくと食べる。



「おい。お茶くれ。」



しん。とした台所に向かって声をかける。



「そうか…。もう、いないんだったな。」



台所に立ってお茶を淹れようとするが、

湯のみはどこだ?茶葉はどこだ?

とウロウロするばかり。



「おい。何もできんぞ。俺は。」





歳をとると涙もろくなって仕方ないものだ。