某省の選考採用試験を受験した話。過去に受験した主な公務員試験はこちら。

公務員試験の話①【新卒:特別区】
公務員試験の話②【転職:特別区→政令市】
公務員試験の話③ 国家公務員採用Ⅰ種試験(理工Ⅰ区分)
公務員試験の話④ 国家公務員経験者採用試験(係長級(事務))

◆ 受験動機
(1) 前提
3年前の試験で、某省の担当者から「別の選考採用があるので挑戦してみては?」と助言いただいたこと。当時は事情があり見送ったが、今も選考採用は実施されていて一定の採用実績もある。「受験資格」「求める人材」も自分の経験と適合している(ように見える)。昔からやりたい仕事だった。

(2) 必要性
地方公務員20年目(特別区4年+政令市16年目)。65歳定年として、職業人生は折り返し地点が見えてきた。今後を皮算用すると、あと1〜2年で課長補佐級、40代後半で課長級になり、タイミングと能力次第で部長級に手が届くかどうかといったところ。

しかし、昇任意欲は経験を積むごとに萎んでいった。

圧倒的に勉強不足な職員(職位問わず)や周囲と軋轢を起こす職員、そんな職員をフォローして疲弊する真っ当な職員(本当に頭が下がる)、人材育成の軽視、政治的圧力で歪められる業務、隠蔽しようが忖度しようが短期的な組織防衛に長けている=調整能力として尊ばれる組織風土、一生懸命練った議会答弁を読み間違いながら棒読みする政治任用職。昨今、パワハラ首長がよく報道されるけど、人材の枯渇は一般職だけでなく、政治任用職でも進行している。質・量ともに充実の一途を辿るサイコパス人材の存在は、ゆっくりと、しかし確実に僕をめげさせていった。同僚友人や配偶者からの情報もこの傾向の補強証拠となる。結局、訳の分からん連中に振り回されるうちに、僕は職業人生を終えるのだろうか。

一方で、不満を全て黙殺すれば仕事自体は簡単だし楽である。通勤30分で子どもの保育園迎えをしても18時半には帰宅できるし、有給は取りやすい。超勤月20時間で「今月は結構働いたな」ってレベル。給与も僕には十分。ワークライフバランスは、世間一般と逆方向に振り切れている。地方公務員一般の現象ではないかもしれないが、僕の勤務自治体の僕の職種では普通のこと。

「こんなんでいいのかな?」「職業人生を終える時『やり切った』って思えるのかな?」ここ数年モヤモヤしていた。やがて幻滅していた「あの人達」と同じ末路に至るのでは?既にそのレールに乗っているのではないか?次第に人格的生存に関わる問題に。

(3) 許容性
「ブラック霞が関」なんて新書がある。確かに忙しいとは思うけど、ピーク時より勤務条件は改善しているように思う。超過勤務手当(残業代)は支払われるようになったし、テレワーク・フレックスタイムなど育児との親和性も高い。いつも激務なわけではないし、勤務期間も残り23年、新卒官僚の半分ほど。意外と激務耐性あるし、何とかなるんじゃないか?

…最悪の事態として、万が一燃え尽きたりメンタルになって稼働できなくなったとしても、年金受給年齢(70歳想定)まで家族を養える程度の蓄えはある。当面、配偶者にかかってしまう負担は、家事代行サービスでも家政婦でも、何でも使って分散させる。

◆「競争試験」と「選考」の違い
細かい話だけど、この試験は「選考」であって「競争試験」ではない。国家公務員法の36条と57条。

(採用の方法)
第三十六条 職員の採用は、競争試験によるものとする。ただし、係員の官職(・・・)以外の官職に採用しようとする場合又は人事院規則で定める場合には、競争試験以外の能力の実証に基づく試験(以下「選考」という。)の方法によることを妨げない。

(選考による採用)
第五十七条 選考による職員の採用(・・・)は、任命権者が、任命しようとする官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該任命しようとする官職についての適性を有すると認められる者の中から行うものとする。


試験の対象が不特定多数のものを競争試験、免許資格や経験年数等で特定しているものを選考というとか、細かな違いはもちろんあるんだろうけど、国家公務員法33条1項には次のように規定している。

(任免の根本基準)
第三十三条 職員の任用は、この法律の定めるところにより、その者の受験成績、人事評価又はその他の能力の実証に基づいて行わなければならない。


大きな違いはない。過去に2回受験した国家公務員試験(国家公務員採用Ⅰ種試験(理工Ⅰ区分)国家公務員経験者採用試験(係長級(事務)))は人事院が主催しているけど、今回の選考は採用先の某省が直接主催しているというのも違いといえば違いか。

◆第1次選考
中途採用の基本3点セット「履歴書」「職務経歴書」「小論文」を作成し、申込期限までに応募した。今でも稀に郵送のみ受付のところがあるけど、メール送付。2週間ほどして書類選考通過のメール連絡があった。

◆第2次選考
複数回の面接試験(Web・対面)。実際に転職することが目的なので、予備校で試験対策の講座を受講するなど小手先の対策はなし。自分の現状・キャリアを詳らかにして、その上で当否を判断していただく。久しぶりに面接でめちゃくちゃ緊張した。どの面接でも、終了後はスーツが汗でえらいことになっていた。とりあえずやれるだけやったので、ダメなら練り直してリトライするか、このまま仕事を続けるかじっくり考える。

果たして、内々定の連絡があった。配偶者に伝え内諾を得る。翌日、上司に退職意向を伝えた。

◆今後のこと
16年ぶり2回目の転職を敢行する。勤務地は霞が関の可能性が高く(育児の関係でありがたい)、その後は地方支分部局に転勤したり、他省庁・関連団体に出向する可能性もある。今のうちに語学力(英語)を巻き直して、残る仕事をやり切りつつ必要なスキルの基礎を構築する期間にしたい。有給休暇の残り(30日弱)もなるべく消化したい。

知らなかったのは退職金のこと。前回転職時(特別区→政令市)と同じように今回も自己都合退職で清算と思っていたところ、国家公務員退職手当法という法律により、地方公務員→国家公務員の場合は勤続年数を引き継ぎできる規定になっていた。確かに人事院HP「退職手当の支給」に「職員としての『引き続いた在職期間』には、地方公共団体や退手法施行令で定める公庫等における在職期間が通算されます。」とあったし、勤務自治体の条例をよく見たら対応する規定があった。退職金の実質的目減りを防げたのは嬉しい。

◆待遇
わが国の公務員は約339万人いて、分類すると次のとおり。


内閣人事局パンフレット「国家公務員の給与(令和5年版)」

59万人いる国家公務員のうち、最もポピュラーな行政職俸給表(一)の適用を受ける国家公務員は約14万人。級別構成は次のとおり。いわゆる「管理職員」と言われる7級(室長・企画官級)より上は極端に人数が少なくなる。


国家公務員給与の実態(令和5年8月人事院)

42歳でまた新人。精一杯やってみよう。

◆今後の勉強方針
迷ったけどしばらくは法律の勉強からは離れる。一生離れるかもしれない。仕事と家庭に全力投球するので手一杯だろう。天命を知る年になって、自分のキャパシティとモチベーション次第でその先を考える。