第61回目となる今年の正倉院展。
注目の出陳宝物は、「紫檀木画槽琵琶」、「楽毅論」、「金銀花盤」、「桑木木画棊局」、「伎楽面」などなど。
特にどれが目的というわけではありませんでしたが、異国情緒漂う宝物をたっぷり堪能できました。
例年のごとく朝一で乗り込んだものの、観覧者が一様にガラスや展示ケースにはり付く様子は凄まじいものでした^^;
とりわけ、聖武天皇や光明皇后所縁の品が展示されている第一展示室は、なかなか進まず…
やはり「楽毅論」の前は賑わっていました。
楽毅という人物について論じた書物を王義之が書写し、それを光明皇后が44歳の時に臨書したもの。
「肉食皇后」と某書でいわれているようですが(笑)、それに相応しい男らしい(?)筆致でした。
昔の人は文字で人柄を判断していたといいますが、直筆の文字というのは、未知の人であっても不思議とその存在が実感できますね。
紫檀木画槽琵琶も事前PRが盛んでしたが、昭和27年に録音された演奏が流れていました。
意外と重厚な音色で、天平貴族や皇族の生活の一部を垣間見たような気がしました。
てか、昭和27年という年代がすでに歴史上の時代だと思うんですけど…;
両面に描かれた絵も細かいです。
正倉院フォーラムの時に解説されていましたが、ばち受けの部分に描かれた狩猟図で、馬上から振り返って動物を射る構図は西アジアが起源で、パルティアンショットというそうです。背面は、宝相華や鳥を、象牙や鹿角で表した木画技法で、バランスの取れた構図がとてもきれいでした。
金銀花盤は、縁を彩ったガラスや水晶玉の装飾が美しく、銀盤中央には花の角をもった鹿が打ち出されています。鹿の意匠から、てっきり日本製だと思ったのですが、唐製を示す銘文があるようです。
奈良時代というと質実剛健というイメージがありますが、正倉院の宝物を見る限り、日用品にもかなり凝ったデザインを施していて、美意識が相当高かったことが窺われます。
装身用の刀子もあるように、けっこうオシャレだったようですね。
しかも、文様がとにかく細かい!2年くらい前に出ていた「墨絵の弾弓」がインパクトあって未だに忘れられないのですが、絵なんか描けるの?と思うような狭い面にまでこれでもか!!とばかりに描き込まれているものが多いです。それをじーっと見るのが、正倉院展の楽しみの一つだったりします。
あとは献上品を納める箱もいくつかあり、それぞれに素材を生かしたデザインに目を引かれました。
セキュリティの面ではどうなの?(笑)と思われるものの、いかにも「貴重品が入ってます!」という貫禄ある品々。
文書類は、いつもの戸籍や写経のほか、写経生の勤務報告書や給与計算の基準を示したものが面白かったです。写経何枚で布1丈とか、誤字や脱字、脱行に伴う減給がそれぞれきちっと規定されていて、電卓もパソコンもない当時は管理が大変だっただろうなぁ、と苦労が偲ばれました(笑)。
そういえば去年は、プライベート事情満載な下級役人や労働者の欠勤届けが展示されていましたね。
こんなふうに、当時の人々の生活実態が分かるので、見ていて飽きないです。
最後は、天皇ご即位20年記念ということで、過去に正倉院展を観覧された皇族方のお写真とか、皇后陛下の養蚕の様子、宮内庁で製作された織物などが展示してありました。
そこまで見た後、時間もあったので最初の展示室まで逆流して、特にもう一度見たいものだけに絞って2周目へ(爆)。込み具合は相変わらずでしたが、悔いなく気に入ったものをしげしげと眺めてまいりました。
この後、浄瑠璃寺へ行きました。次の記事で…