著者: 梁 石日
タイトル: タクシードライバー―最後の叛逆

 先週、出勤途中ねずみ取りに捕まった。40キロ制限のところを61キロで走っていたらしい。事務的に手続きをして、1万5千円の振り込み用紙を渡されて会社に急いだ。もちろん、会社は遅刻だ。

 本著は、タクシードライバーである筆者が日本の道路交通規則に対する理不尽な状況を「駐車違反」「スピード取り締まり」「飲酒運転」について説明し、捕まらない方法を教えてくれている。スピード違反については同様な事をされたこともあり、日本の警察機構にはらわたが煮えたぎるっている。
 また、著書が被害者となった死傷事故とその保険についても、不条理な保険会社の対応についての経験談があり、読んでおいて損はないと思う。

 話は戻るが、危険があるとも思えない田んぼの中の直線道路で、朝のサラリーマンを捕まえてどういう意味があるんだろう。捕まった自分はスピード違反という犯罪(違反)を犯したという思いはない。ただ単に、「運が悪かった」としか思っていない。そんな取り締まりをしたところで、交通事故が減るとも思えない。
 もう警察には何も協力しないと心に誓った。



著者: 鷺沢 萠
タイトル: さいはての二人

 鷺沢 萠さんが自殺してもうすぐ1年になります。作家ってよく自殺しますよね。鷺沢 萠さんの自殺の動機は不明とのことです。

 この本には3本の短編が収められてますがすべて死が絡んでいます。作品が書かれたのは6、7年くらい前ですが、この頃からすでに鷺沢 萠さんは、作品の中で自分の死と絡めていたのではと思えてきます。特に、3つ目の「遮断機」ではそう思えてきます。



著者: 佐藤 雅彦
タイトル: クリック―佐藤雅彦 超・短編集

ポリンキー、バザールでござーるなどをヒットさせた作者の63個の短編集。
短い短編ですと10文字程度です。一冊読むのに30分もあれば充分読めます。
イラストと短文がとにかく可笑しいです。電車の中で読むときは、頬を崩さないように練習しておいてください。




著者: 浅田 次郎
タイトル: 活動写真の女

昭和40年代?の京都・太秦を舞台にした小説です。
映画撮影所で働くアルバイトの学生が、自殺した女優の霊に取りつかれてしまった...。映画と恋愛と青春を描いたきれいな小説です。
なぜか、この時代を題材とした小説だから?浅田次郎の小説だから?は、頭の中でモノトーンの情景が浮かびます。この頃は、まだカラーテレビが普及していなかったからなのでしょうか?とっても不思議です。


著者: 田口 美貴夫
タイトル: 機長の一万日―コックピットの恐さと快感!

 日本航空でジャンボジェット等のパイロットをしていた時の回顧録である。
自動操縦、積乱雲、オーロラとの遭遇等、一般人では味わうことのできないコックピットでの裏話を楽しく読むことができる。
 ただ、皇室だとか首相とかVIPを乗せたときの手に汗握る緊張した操舵の記述があるが、命はVIPだろうと一般人だろうと同じなのだから、VIPだからといって違う操縦をしてもらっては困るんだけど・・・。ちと不満。


著者: 佐藤 正午
タイトル: Y

過去に戻れる能力を持ったらどうしますか?
もう一度学生時代に戻れたら・・・
もうちょっと勉強していたら・・・
あの時の彼女と別れていなければ・・・

そんな能力を身につけた北川健は出会いの分かれ道だった18年前に戻っていった。18年前に列車事故に巻き込まれたバレリーナを助けるために...
そのバレリーナは、事故に巻き込まれ、命こそ取り留めたがその後遺症でのち自殺してしまっていた。

「時をかける少女」にせよ「ドラえもん」にせよ過去に戻るだけで歴史を変えることはしなかったが、これは歴史を変えるために過去に戻るという一風変わった小説です。


著者: 吉岡 逸夫
タイトル: 青年海外協力隊(ボランティア)の正体

僕は学生時代から青年海外協力隊に行きたかった。
ボランティアがしたくて行きたかったのではなく、異国へ行きたいのが本当の理由です。今でも電車の吊り広告に説明会の案内を見ると、ふと異国での自分の姿を思い巡ります。

しかし、すばらしい活動をしている人もいれば、ボランティアという名の美しい姿とは裏腹に、堕ちた現実もあるようです。南米、中米、アフリカでの協力隊員の本当の姿を追ったものです。
堕ちた生活は前に読んだ「ホームレス入門」とダブってきます。


著者: 風樹 茂
タイトル: ホームレス入門―上野の森の紳士録

 日本は、海外の発展途上国に毎年1兆円もの援助をしているそうだ。しかし、反面全国には何万人ものホームレスがいるらしい。ホームレスの中には怠け者もいるが、職が無くて困っている人が多いのも現実らしい。元社長、元銀行員、元教師・・・たちがいる。
 本文にある、「日本国は、まるで外見が大事とばかり肉親には見向きもせず、町内会一の寄付金を贈与する、バカの一家のようである。」には、他人事ではないと思いながら笑える。

 新聞、TV等でホームレスを一掃するとか、ホームレスが若い奴に殺されたとか見聞きするが、ホームレスの現実の姿を見た事がない。と、いうより、見ないようにしていると思う。会社の近くの公園でホームレスのための炊き出しを見た事があるが、避けて通っていた。

 筆者は、上野公園のホームレスの現状を取材し、その中から行政の対応の無さを批判し、日本社会の闇を浮き出しにしている。
 ホームレスの生き方は、何も束縛されるものがなく自由で羨ましいとも思ったが、冬の寒さは想像するだけで大変であり、行政もホームレスの実態を把握し、きちんとした対応を望みたい。


著者: 内館 牧子
タイトル: 週末婚

 この小説、ずっと以前、TVドラマ化されていたそうですね。
 姉の結婚生活を見て、その苦悩から発見した「週末婚」。結婚しても週末しか会わず、その他は別居生活。いつまでも新鮮さが続き、いつまでも新婚生活が続くと考えて始めた。
 でも、結末は思いもよらない方向に進んでいく。

 主人公の月子は大人しい性格のようだが、どうしてそんな事を考え、実行できたがいまいち納得できない。女流作家の恋愛小説はいつもしっくりこない。渡辺淳一の小説なんかはすごく分かるんだよね。
 男女の考え方、ものの見方の違いかなぁ。
 


著者: 筒井 康隆
タイトル: 笑犬樓の逆襲

 筒井康隆のエッセイは、ずっと以前(5年か10年前?)に読んだ事があり、昔とどう変わったか見ようとして、書架を探したが見つからない。ただ、記憶では、筒井康隆なりに社会を批判し、それを小説にしているような事を書いていたような気がする。そういう意味では昨年末に出したこのエッセイも同じであるが、断筆してからの芸能生活とのつきあい、断筆をやめてから作家と芸能人の二足わらじ等を知る事ができて良かったと思う。

 僕は会社ではボランティアとして社内報(小学校の壁新聞に毛の生えたようなもの)の制作に携わっているが、会社という社会の中では、言論の自由はない。会社批判はもちろん、会社にとってマイナスになる事は絶対に書けないし載せられない。発行前の検閲も厳しい。また、面白くない会社行事も面白そうに書かねばならない。

 「笑犬樓の逆襲」では、政治家であろうと作家であろうと平気で個人名をあげて批判している。これは日本という社会では通用しても会社という社会ではあり得ないと1人納得。