ウクライナ情勢は?(25)__2極化 | 悠釣亭のつぶやき

ウクライナ情勢は?(25)__2極化

ウクライナでの戦闘は一進一退を続けている。
一時期、支援疲れなどの言葉も聞かれたが、フィンランドと
スウェーデンのNATO加盟など、ロシアに対する脅威が高まる
方向で、欧州の結束は強まってきていると思える。


そのスウェーデンは5月、ウクライナに対する総額133億クローナ
(約2000億円)の新たな軍事支援パッケージの供与を発表した。
これにはASC890早期警戒管制機の供与も含まれる。

同機は搭載レーダーで、遠距離から空中と海上の目標を捕捉し、
味方のF-16と連携して攻撃を指揮する能力を有する。
これは新たにウクライナに配備されるF-16の唯一の欠点(遠距離
からの目標の補足能力)を補うに最も有力な手段である。


6月に行われたG7サミットでは、クライナへの支援やロシアへの
制裁強化が話し合われ、欧米などで凍結されたロシア資産の
運用益を活用しウクライナに新たに500億ドル(約7兆8000億円)
規模の資金支援を実施することも決定した。

ロシアの凍結資産を使う事は、禁じ手に近く、最早ロシアとは
友好関係を継続出来ないとの意思表示に見えるが、かろうじて、
元本には手を付けず、運用益に留めたのはロシアに対する
強い牽制なんだろう。

それに続く、ウクライナ平和サミットにおいては、「原発の安全確保」
や「食料安全保障」、「ウクライナの領土保全」などの共同声明を
採択したが、ロシアとの関係も重視する国々はこれを支持しな
かった。
そして、今後どのようにしてロシアを和平プロセスに参加させる
かが重要な課題であるとした。


一方で、ロシアは中国と更に接近し、5月には首脳会談を行っている。
中国は欧米との関係もあり、武器供与などには関与出来ないが、
ロシアの立場を認める意向。

ロシアはまた6月には北朝鮮を訪問し、「包括的戦略パートナーシップ

条約」を締結している。
これは実質的な軍事同盟で、お互いに有事には軍事支援を行なう

としている。
また、北朝鮮はロシアのロケット技術供与と見返りに、ウクライナ
侵攻に必要な武器弾薬の供給も行う予定。


ロシアはまた、BRICSの拡大にも注力している。
昨年12月の首脳会談では、新たに、エジプト、エチオピア、イラン、
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の5カ国が2024年から
新規加盟すると発表している。

これで世界人口の45%、エネルギ産出の44%、GDPで28%を
占める強大な経済圏を固めたと言える。
ま、主導する国が無いことや、それぞれに大きな問題を抱える国々
だから、どこまで纏まれるかはかなり疑問ではあるが。


かくのごとく、ウクライナ紛争を巡って、一時緩んだように見えた
欧米の結束は、新たに強化されつつある。
ロシアを勝たせてはならないという意思が再確認されたと言える。

一方、ロシアによるBRICS、グローバルサウス、中朝への擦り寄り
など、味方探しが強化されている。
ロシアとの経済関係を重視する国々はウクライナ和平を望む
ものの、ロシアの資源や技術を導入したいという期待もある。

ウクライナ紛争は今や東西の代理戦争と化しており、ロシアの
なりふり構わぬ継戦能力強化に対して、欧米諸国の結束強化と
親ロシア国への経済制裁という、背後の戦いが激化している。
いずれにせよ、この紛争は長期化を免れないが、変化があると
すれば、それはトラさんの登場によるものかもしれない。
現時点では、トラさんの可能性は50%以下だと思えるが。