ウクライナ情勢は?(23)__空の戦い | 悠釣亭のつぶやき

ウクライナ情勢は?(23)__空の戦い

ウクライナ戦争は膠着状態か、若干ロシアが優勢の状態で
継続しているようだ。
ウクライナ軍は反転攻勢が上手く行かず、地雷原や障害物で
強固な防衛線を敷いて後方から航空攻撃を行うロシア軍に
苦戦している。
近代戦においては制空権というか航空優勢が無いと、劣勢に
なる事が明らかだが、それが明確になってきたように見える。


そんな中、ウクライナ軍はドローンを巧みに使って、劣勢を
跳ね返そうとしている。
黒海艦隊の艦船に対する水上ドローンが指揮艦を撃沈したり、
巡洋艦や揚陸艦も多数破壊して、黒海艦隊の勢力を3分の1
程度は無効化にしたという。

また、小型の自爆型ドローンは戦車に体当たりしたり、開いて
いるハッチに突入したりして、これまたロシア軍の戦車に多大な
損害を与えているという。
ロシアは初期に投入した戦車の半数を失ったという説もある。

最近の映像ではロシア軍の自爆型ドローンに対して、小型
ドローンで体当たりして撃破したというものまで出てきた。
ドローンは安価な上に製造期間も短く、家内工業的に作れる
ことから、ウクライナ軍の強い戦力になっているようだ。


これらのドローンは1人称視点での操作(搭載カメラの映像を
見ながら、目標を探して突入する)が可能な「FPVドローン」で、
兵士は安全な場所から操作できるので、効果的だ。

このタイプのドローンはイギリスとラトビアが共同でウクライナに
数万機単位で大量供与すると、2月に両国の国防省が発表
しているから、今後もさらに多くのドローンが使用されるだろう。


欧米各国が供与を約しているF16戦闘機が間もなく配備される
段階となっている。
今までのウクライナ軍は旧ソ連製の戦闘機が主体で、性能は
見劣りし、ミサイルの精度や到達距離にも難点があったし、
ロシア側がその運用を知り尽くしていたから、有効に使えるはず
も無かった。

従って、航空戦はパトリオットなどの迎撃ミサイルによる防衛が
主体とならざるを得ず、ロシア軍の後方を叩くことがほぼ不可能
だったが、今後はこれが大きく様変わりするだろう。

問題があるとすれば、航空指揮や操縦士の練度、目標捕捉や
対空ミサイル回避などだが、F16の低空対地攻撃力や対空対地
レーダーや対戦闘機戦能力などがロシア軍に勝るのは明らか
だろう。
F16の配備によって、前線の状況が一変するかも知れない。


ウクライナ軍は、ロシア軍の航空戦力を統制する機能を減殺
する事にも注力している。
これはF16配備とともに非常に有効に働くだろう。

ウクライナ国防省は2月24日、ウクライナ軍がロシア空軍の
A-50早期警戒管制機を撃墜したと発表した。
この機体は戦場からはかなり後方のロシア本土のアゾフ海に
面した地方上空を飛行していたが、ウクライナ軍により撃墜
されたという。

ウクライナ国防省は、1月にもロシア空軍のA-50を撃墜したと
発表しており、今回の戦果で、2機目の撃墜となる。
どのように撃墜したのかは明らかにしていないが、旧ソ連時代の
長距離ミサイルによるものと推測されている。


また、3月9日には、ウクライナ軍の無人航空機が、ロシアの
ロストフ地方にあるベリエフ航空機工場を襲撃したとの発表が
あった。
ベリエフ航空機工場は、ロシア空軍のA-50早期警戒管制機の
製造、アップグレード、保守、修理を担当する工場。

これによって、A-50の後方支援にも支障が出そうで、ロシア
軍の指揮管制機能は大きく損なわれると思える。
常時遊弋する指揮管制機の運用が制限されれば航空優勢に
直接的な支障となろう。


後方の指揮管制機でさえも撃墜されるとなると、ロシア軍の
指揮系統は更に後方に下がらざるを得ず、ウクライナ西方の
視野が大きく狭められる結果となる。
これは単に航空優勢が劣化するだけでなく、迎撃機能も劣化
することになる。

これによって、ウクライナ軍の行動が容易になり、F16の
行動も大幅に支障が無くなる事になる。
F16の本格配備で、ウクライナ側のホントの意味での反転攻勢が
始まる事になる。