スウェーデンのNATO加盟 | 悠釣亭のつぶやき

スウェーデンのNATO加盟

3月7日、スウェーデンのNATOへの正式加盟が決まった。
フィンランドとスウェーデンはそれまでの中立政策を転換し、一昨年の
5月にNATOへの加盟を申請していた。
フィンランドは2023年4月に加盟が承認されていたが、スウェーデンは
反対する国があり、加盟がなかなか承認されなかった。
いずれにせよ、これで加盟国は32ヶ国になった。


NATOへの加盟には参加国すべての承認が必要というルールになって
いるので、1ヶ国でも反対すれば、加盟が承認されない。
反対していたのはトルコ(クルド分離主義組織「クルディスタン労働者党
(PKK)」に対する姿勢への対立)とハンガリー(法の支配を巡る対立)で、
共に、親露ではないにしても、ロシアとの関係が深い国々。
特に、ハンガリーは強い反発を持っていた。

他の参加国による粘り強い説得と、各国内での議論の末にようやく
両国共に承認する運びとなった。
NATOにとってみれば、フィンランドはロシアと直接長い国境を接する
国であって、大きな防波堤になり得る地政学的利点がある。

今回のスウェーデンの参加はそれにも増して、NATOへのメリットが
大きい。
軍事力を高める事で中立を保ってきたスウェーデンが味方になるだけ
でも大きな力になる上、両国の参加によって、バルト海がNATO加盟国
によって完全に囲い込まれることになるからね、


スェーデン側も過去に北方戦争(1700~21年)ではロシアに敗北し
領土を帝政ロシアに奪われた記憶がある上に、今回のウクライナ侵攻
によって、単独での安全保障が困難な事を嫌というほど思い知らされた
わけで、NATOへの加盟によって、国を守る事を善しとしたわけだ。

交渉の過程では、NATO諸国とのスウェーデンの軍事技術の共有を
進めることが焦点となり、ハンガリーもこれを受け入れる形で全加盟国
の承認を得る事となったようだ。


さて、スウェーデンの軍事力とはいかなるものか。
世界軍事力ランキングによると、スウェーデンは29位(フィンランドが
50位、日本は7位)と規模ではそれ程の軍事大国ではないが、徴兵制を
敷いており、動員能力は高い。

また、グリッペン戦闘機に代表されるSaab社等があり、局地戦や迎撃戦
に特化した強力な空軍を保持している。
また先進兵器の一貫した独自開発・製造能力も高い。

特筆すべきは、潜水艦運用能力だろうか。
バルト海は他の海域と異なり、スウェーデン近海では海が浅いし、
潮の濃淡が著しいという。
その海を知り尽くしているという点でも優位性が高いが、対潜監視能力
も高いものがある。

潜水艦はそれぞれに、出す音が違うので、海中に聴音器を設置して
潜水艦の動きを監視しているわけだが、スウェーデンは対潜網を
巡らしてスウェーデン海域を通る潜水艦の動向を補足しているという。


NATO加盟については国内で大きな議論があったようだ。
即ち、集団的自衛権に守られないと安全保障が全うできないとする
意見と、NATOの戦争に巻き込まれる恐れが高まるという意見の対立。

また、スウェーデンは高負担・高福祉の国で、所得税の他に住民税が
28~34%、消費税が25%(食糧の軽減税率でも12%)と高い負担が
あるが、一方で、子育て、医療、教育費は基本的にゼロである。
NATO加盟によって、軍事費の負担が増える事を懸念する声もあった
ようだ。

しかし、結局は、ロシアのウクライナ侵攻の脅威が大勢を傾けた。
国民投票こそなかったが、今や3分の2の国民がNATO加盟に賛成
している。
ま、ムベなるかなと言う所ですな。


今回のスウェーデンのNATO加盟は、
・NATOにとっては大きな進展であった。
 ロシアの行動を知リ尽くしたスウェーデンが加わって、強力な集団的
 自衛集団となった。
・ロシアにとっては大きな誤算と言える。
 バルト海での行動が大きく制限される。
ウクライナ侵攻がスウェーデンの加盟を強力に後押しし、バルト海を
失う結果となった。

今後の懸念としては、ロシアのバルト海への進出は歴史的、国家的
課題であり続けたわけで、現状を快く受け入れるとはとても思えない
ことかな。
だとすれば、カニーリングラードを軸に、バルト3国への圧力を強める
恐れは多分にあるだろう。
必ず、ここが次の火種になると大いに懸念する所である。