実話とドラマは役割が違う | 牧村しのぶのブログ

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韓国ドラマを見ていて偶然の多用に気づきました。

偶然4回会ったら運命」という台詞もありました。

人気ドラマ「39歳」ではヒロインと恋人は第1話で偶然4回会い恋に落ちます。「愛の不時着」ではスイスで2回以上、北朝鮮でも2回会います。

転生を繰り返す運命もあります。「トッケビ」では4回まで転生できることになっており、同じ男女が転生してやり直します。

輪廻転生は古くはバラモン教にあり、ヒンドゥー教、仏教へと伝わっています。古代ギリシャ、原始キリスト教にもありましたが

認める宗教と認めない宗教とあります。

 

これは現実とは異なります。


今現在恋人、配偶者のいる人が4回以上偶然出会って結ばれたと

いう体験談を聞いたことはありません。

稀にはそういう人もいるかもしれませんが、私は知りません。

 

そもそも運命の人というものが現実にいるかどうか不明です。

いないと思っている人もいるでしょう。

確かめようのないことです。


しかしドラマでは4度以上の偶然、転生の繰り返しによって2人が運命で結ばれた男女だと視聴者に感じさせます。

その説得力は現実の経験ではなく過去のドラマによって作られたものです。

 

偶然の他に、男女が危機を共有して恋に落ちる吊り橋効果もよくドラマで使われます。米国ドラマ「ストレンジャー・シングス」のナンシーは、最初スティーブとつきあっていましたが、怪物に

襲われる恐怖を共に乗り越えたジョナサンとつき合うようになります。しかしその後ジョナサンが家庭の事情で引っ越して遠距離恋愛になると、再び怪物に襲われ、共に戦ったスティーブに心が傾きます。危機を共有した相手に惹かれる吊り橋効果が発揮されています。それがないと説得力が弱くなります。

吊り橋効果はドラマに活用されていますが現実にあることです。

被験者には気の毒ですが、実験によって確かめられています。

 

ドラマは心理学も宗教も呑み込んで作られています。

吊り橋効果のように現実に起こりうる要素も含みますが、転生や偶然の繰り返しは現実とは違います。

 

恋愛経験のない人がどういうものか考えたい時、ドラマは参考になりません。それよりは現実に経験した人の話を聞きたいのではないかと思います。危険を回避したり、チャンスを作ったりするために使える情報があるからです。

 

実話は漫画でも人気があります。

正直言うと、以前は覗き趣味だ、嫌いだと思っていました。

しかしドラマを集中して見ているうちに、癒しにはなっても参考にはならないと、あらためて思うに至りました。

まず出会いに偶然の繰り返しは期待できません・・・。

 

自分が経験しておらず、恐れていること、不安に思っていることを他人の経験を通して知り、失敗を避けたい、恐怖を和らげたい、対策を講じたい、などの必要があって実話が求められているのではないかと思います。

 

作られたドラマと実話では求められる役割が違い、どちらが良い悪いということはありません。

 

実は私自身長年それがはっきり区別できていませんでした。

 

ドラマはドラマで現実から離れて吹っ切って良いと割り切ることができました。