ネットのなかった90年代までは漫画の読者は雑誌の読者コーナーに投稿するか、作者に直接ファンレターを送るかしていました。
私も読者として感想や似顔絵を投稿し、掲載されて賞金、商品を貰ったことがあります。子供には現金が嬉しかったですね。
雑誌の投稿欄もファンレターも雑誌の読者が書いて下さったものです。励みになりましたし、批判的な感想も勉強になりました。
まず編集部がチェックしますから、嫌がらせがあっても直接作家の目に触れないようになっており楽でした。
さて、ネット時代になると様変わりし、雑誌の読者でない人から
メールや書き込みが来るようになります。
悩んだのはそちらです。どこも男女比は半々ですが漫画の読者は女性のみです。酔って絡んでくるような男性は漫画に興味はなくネットで目についた漫画家をおもちゃにしたいだけです。
若い女性のイラストをアイコンに使っていたため、実年齢より若いと思われ、お嬢さん、と絡まれたこともあります(苦笑)。
暴力的な荒らしも、漫画には触れずただ荒らしに来るだけです。
せいぜい漫画なんてバカの読むもの、と蔑むだけです。
読者でない女性の投稿も同じようなものです。
ネットで気を使い対応に苦慮し時間を取られ、仕事ができない日もあるほど振り回されたのは、ネットの「読者でない人」です。
私のようなデジタル移民は、読者層も熱心なネットユーザーではなく、SNSもフォローしてこない人が多いため、ネットでは読者でない荒らしや冷やかしばかり多く、気を使っても仕事に結びつきませんでした。
閲覧数が多かった時も、漫画(雑誌)の売り上げに全く結びつきませんでした。大半は「珍獣見物」だったと思います。
何と意味のない虚しい時間を過ごしたことか、と悔やまれます。
同じ時間を全て創作のために使うべきでした。
ネットに期待した私自身も考えが足りなかったと思います。
読者でないとわかり切った人の口出しは聞き流すべきでした。
せめてもの収穫は、漫画の読者とネットの読者が全然別物だと身にしみてわかったことですね。
ネットで騒ぎになれば売れると思われるかもしれませんが、違います。売れるかどうかはあくまで「読者」の評価によります。
デジタルネイティブの漫画家は、最初からネットで漫画を公開します。フォロワーと読者が重なります。ですからネットの読者を大切にすることも仕事のうちです。その分労力もかかりますが、読者との交流が売り上げに直結し、報われます。
読者でない荒らしは割り切って相手にしなくて良いと思います。
漫画家のことを人とも思っていないからです。
私もせめてこれからは自分のために時間を使いたいと思います。