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 少し前に、「みんなで跳んだ」について書いた。僕は、“道徳”が好きなので、今回は久々に道徳ネタです。おつきあいください。


 

 前にも書いたように、道徳は教材で半分以上が決まる。よく扱われるのは、「いいもの」を提示し、みんなでその良さを感じ取るってパターンだ。素直な子どもたちならではの授業パターンだ。でもへそ曲がりな僕はこういう授業は悪いけど眠くなる。だって、教師の手だてや工夫があまり必要ないものだから。
 個人的には、モラル・ジレンマが好きだ。拾った子犬を親に内緒で空き地で飼っていて、病気になってしまったとき、貧乏で親に言えない主人公は、子犬の命を助けるために店の薬をだまって持ってきてしまった…なんていう創作教材を昔、小学校でやっ
たけど、こういうのってモラルを引っかき回される。

 しかし、今回はモラル・ジレンマではなく、昔の中2道徳教科書に載ってた教材から、僕の好きなものを取り上げる。ただし、指導書に従った上っ面な流し方ではなく(おっと、これは過激な発言だったかな。すみません)、教材をさらに奥深く読み込み、子どもに本音で語らす授業をめざしたものだ。

 ◆「名誉の失格」

 あらすじ 学級委員の主人公が、水泳の選手決めで、苦手なリレーの選手になり手がなく、本番当日、優勝に手が届く接戦が続き、残すところリレー種目という場面で、みんなの後押しと自己犠牲の気持ちから、リレーに出ることにした。しかし、主人公は途中で足がプールの底についてしまっての優勝。迷いに迷ってそのことを告げ「名誉の失格」を宣言されたっていう話。

 指導書を元に授業をすると、

<失格の申し出を決意した主人公はどんな気持ちだったですか?>

<自分の責任を果たすことができた経験を振り返ってみよう>

とあり、生徒も

「ウソはいけない」

「正々堂々と本当のことを言った主人公はえらい」

といった意見が出て普通に終わる教材である。

 これでは実に浅いしつまらない!
 

 この主人公、その行為へ至るまでに、実はすごくいろいろな迷いを生じている。また、名誉の失格を受けた後、クラスの方を堂々と見れるずうずうしさ、つまり自己犠牲に酔っている感がある。「足をつかずに泳ぎ切れなかった情けない自分」を、失格を申し出た行為で、「ウソをつかない正々堂々としたヒーローである自分」に置き換えてしまっているのだ。


 この主人公の心の変遷は、すごく現実味がある。途中途中にも、つっこみを入れるところがすごくある内容だ。これを使って、主人公の「ずるさ」と「正義感」をうまく出させながら、最後はその両方を受け入れさせる(共感させる)ことが、この教材のおもしろさだと僕は思っている。(※指導書にはそんな複雑なこと、これっぽっちも書いてないけどね。)
 要は、共感である

 

 そんな授業ができたとき、子どもたちの心をおおいに揺さぶれるのだ。そのために、ぼくらは教材探しに必死になるんだよね。

 

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