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 僕は、今までの人生で4度意識を失った経験がある。一つは小学生時代の全身やけど、一つは壮絶な刺傷事件、一つは生徒に殴らせて(殴られてではない、ドジな話。いつか話します)、そしてもう一つ、バイクの交通事故で。

 今回はこの4つめの、馬鹿な経験談です。                             

 附属小への通勤途中のこと。初めての小学校一年生担任の入学式当日ということで、ワクワクしながら僕はバイクで附小への道を急いでいた。坂を登れば附小に着くという場所、そのいつも徐行して左右確認する4つ角で、シルバーの方がちょうどゴミ回収をしておられた。僕が頭を下げると、手でいっていいよと合図をしてくれた。そこで、優先道路ということもあり、スピードを落とさず交差点に入った。その瞬間、大きな衝撃が!                    

 「大丈夫ですか?」

 目を開くと、大きな声で話しかける白い服を着た人。まるで救急隊員みたいな・・・?

(そうか、僕は車にぶつかったらしいぞ。でも、あれっ、なぜ、ぶつかって転んだとたん、救急車救急車がここにいるんだろう? そういえば、いやに人も多いぞ? もしかして何分間か気絶してた?)

と、思ったところで、大切なことを思い出した。

(今日は入学式だ。救急車に乗ってる場合じゃない。)

 

 起き上がると身体のあちこち痛かったが、何とか歩けそう。

「救急車救急車に乗ってください」という隊員や男の人(ぶつけた人?)

「大丈夫です」と言って、バイクを起こし、エンジンをかけた。しかしバイクはうんともすんとも言わない。見ればスポークも曲がっている。時間が気になる僕は、救急隊員の声を振り切り、バイクを押しながら坂を登り始めた。後ろから、ぶつけた人が追っかけてきて

「本当に大丈夫ですか?押しましょうか?」と言うので、バイクを押してもらい、坂を登りきった。

 学校に着いて、だんだん身体中が痛くなってきたが、気にはしていられない。入学式の準備だ。黒服に着替えようとボロボロになっていたズボンを脱いだ。すると・・・!


 右足太ももが10㎝ほどにわたってぱっくり割れているではないか。なぜか血は余り出ていない。しかし、中の赤い肉は1㎝くらいの深さまでしっかり見える。こりゃまずい。このままでは縫わなきゃいかん。でも、そんな暇はない。まずはくっつけよう。

 ってことで、近くにあったガムテープで肉を寄せてくっつけた。これで良しと…。黒ズボンをはき、準備完了。教室へ向かおうと歩き出したとたん、テープが外れた。

 しかたがない、それならと、保健室へ。保健室にある白いテープなら“肉”用だから取れないだろうと思ったからだ。

 保健室には、養教サンがいた。

「絶対口外しないでね」と前置きして傷を見せると、当然、

「すぐに縫うべきです」と強く言われた。でもそれを断り、入学式優先ということで納得?してもらい、白いテープで太ももをグルグル巻きにしてもらった。そして口外しないでと再度お願いし、ようやく安心して、教室で入学式前の最終準備をしていると、インターホン。いやな予感がしたが、やはり校長室へ呼ばれた。

(養教サン、裏切ったな)と思いながら行くと、教頭先生が、

「校医さんに電話を入れておいたので、すぐ行くように。15分で帰ってこれるので入学式には十分間に合うから。」と、僕の気持ちを先読みし有無を言わせず命じられた。さすがだ。おまけに教頭先生が連れてってくれるというので、従うしかなかった。学校の裏手にある校医さんは、手際よく、でもほとんど感覚がなくなっているのをいいことに、麻酔もせずに10針ほどささっと縫ってくれた

 無事、“肉”がくっつき、入学式を迎えることができた。

 しかし、まだ、災難は続く。

 

 音楽教師である僕は校歌の指揮担当。壇上でその指揮をしている最中、だんだん右手が、いや右肩全体が動かなくなってきたのだ。途中から左手だけで指揮をしつつなんとか仕事を終え、降壇しようとすると、なんと右足も動かない。階段は絶対無理だと思ったので、這うように舞台裏に下がると、そこにはなぜか泣き顔の奥さんが。教頭先生から連絡を受けたそう。奥さんの介助で舞台裏の階段を下りることができた。なんとしても保護者には気付かれまいと、その後の学級開きをなんとかこなしたが、午後には完全に右半身の感覚がなくなっていた。

 この一件で、僕はバイク10年間使用禁止を奥さんから言い渡されたのだった。


  僕が悪いんじゃないのに・・・。でも、救急車救急車には乗ってみたかったなあ。