ディケンズが25歳の時に連載を始めた、初の長編。
ちょうど、ビクトリア女王が即位した年。1837年に書き始められている。
救貧院に預けられている孤児のオリバーが、さまざまな苦難を経験するなかで、よき出会いによって驚くべき自身のルーツを知り、さいごに幸せになる物語。
正義をつらぬくことや、人として善くあることの尊さを一貫して書き切っていたのがとても良かったです。
読後が清々しい!!
若きディケンズの、気概を感じました。
最後に、第三版によせられたディケンズによる序文があります。
そこには当時、最下層の人々の暮らしをリアルに書いたことに対する、批判が寄せられたことへの反論が書いてある。
「むき出しの、素のままの現実を提示することこそ、この物語の眼目の一つ」「私は幼いオリバーに、あらゆる逆境をくぐりぬけ、最終的に勝利する善の原理を体現させようとした。」「あるがままの犯罪者たち、彼らの醜さ、卑しさ、ひどい困窮ぶりを手加減なく描き出すこと、…最後は絞首台で死んでいく彼らのことを仔細に活写することは、社会にとって有益な、誰かがやらねばならぬ価値あることに思えた。」
善なるものを信じる強い心があるからこそ、底辺の人々を描き、さらに人は生まれながら悪に染まるわけではない、育つ環境や教育によって変わることができると書けたのでしょう。
物語のなかで、不倫の末に生まれた身寄りのない孤児のローズと、階級の差をこえてハリーが結婚を選ぶ。
なかなか、当時のイギリスでは難しかったのだろうけど、そんな理想も物語になっている。
悪党の愛人、娼婦のナンシーの厳しい人生や内面は細かく描写される。ふしだらだと差別され虐げられる女性たちへのディケンズの優しき視線もとてもよかった。
正直、800ページにおよぶ長編、新訳といえども前半400ページまではなかなか読み進むのがむずかしかった。
でも、いよいよオリバーの生誕の秘密があかされていく後半は一気読みでした。
ディケンズの作品は長いものが多いけど、読み終わった最後にまっているご褒美があるのだから!
これから少しずつ読んでいきたいです。