「人間の土地」は、サン=テグジュペリの小説
そのタイトルから題名をつけたであろうこの本は、内戦下のシリアを著者が行き来するノンフィクション
日本人女性で初めてK2に登頂した小松さん
登山をやめてカメラを持ち、撮影しながらシリアを旅する中でパルミラに暮らす大家族と出会う
まだ平和だった頃のパルミラは砂漠の中の古代遺跡が残る観光の街
ラクダを放牧し果樹を育て、ゆるやかな暮らしを営む彼らに魅了され写真を撮り
ともに砂漠の夕暮れを眺めた青年、ラドワンにひかれていく
だがシリアは政府と反政府の内戦状態に…
そんな中、ラドワンも兵役に服すことになる
小松さんはしばらく日本に戻った後、シリアに再び渡ると秘密警察がいたるところに監視の目を光らせ、息を抜く場所もない
パルミラの一家を訪ねることもできない中でラドワンと再会するが、軍人である彼と肩を並べて歩くことも、同じテーブルについて語り合うことすらできなかった
一家の兄弟たちも反体制活動に参加して、政府に追われる身になる
その後、パルミラはイスラム国の支配下になり、遺跡も破壊され空爆でたくさんの民間人も犠牲となり、家族は家を捨て砂漠の街に逃れる
市民に銃を向ける立場になったラドワンは軍を脱走して国境を抜け出し、難民キャンプに辿り着くが、難民キャンプでの暮らしも物資が足りずにひどいもの
小松さんと共に日本へやってくることになる…
ラドワンと結婚するためにムスリムになる過程も興味深かったです
。。。
小松さんの行動力に驚きながら読み進める
内戦前後のシリアの人々の暮らしと日常の記録は、いわゆる戦争報道とは違った貴重なもの
暮らしがじわじわと国家と戦争よって破壊されて、人々が難民になるまで、個の顔の見える記録でした
反政府の市民を強制収容所で虐殺していたアサド政権が倒れた今ごろになって、わたしはシリアの過去をこの本から知ることになった
本を読むことで、ただの地図上でみる土地が、「人間の暮らす血の通った土地」になっていく
小松さんにとっても砂漠の街、パルミラに自分自身が行き、人々の暮らしを知ることで初めて「人間の土地」だと認識できるようになったんだろう
それで、このタイトルなんだと思いました
