哀れなるものたち 2024年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

原題:Poor Things

監督    ヨルゴス・ランティモス
脚本    トニー・マクナマラ
原作    アラスター・グレイ『哀れなるものたち』

キャスト
ベラ・バクスター                - エマ・ストーン
ダンカン・ウェダバーン       - マーク・ラファロ 弁護士
ゴッドウィン・バクスター     - ウィレム・デフォー
マックス・マッキャンドレス  - ラミー・ユセフ 助手
マーサ夫人                          - ハンナ・シグラ
ハリー・アストレー - ジェロッド・カーマイケル マーサの連れ
アルフィー・ブレシントン  - クリストファー・アボット
フェリシティ         - マーガレット・クアリー 新たな実験体
スワイニー            - キャサリン・ハンター 娼館のマダム
トワネット            - スージー・ベンバ 同僚の黒人娼婦
プリム夫人 - ヴィッキー・ペッパーダイン バクスター家家政婦

予告編


感想
エマ・ストーンで最近観たのは「ラ・ラ・ランド」ミュージカルは苦手だが、ハリウッドで夢を叶えた女性を好演していた。
そんな記憶が先にあったので、足でピアノを弾き、オシッコを漏らす彼女を見て絶句。歩き方もいつ転ぶか分からないほど。
そんな彼女がどんどん知識を吸収して行く姿が心地よい。
歩き方もみるみるしっかりして行く。

そして悪徳弁護士のダンカン。ベラに興味を持ち旅に連れ出す「悪いヤツ」 最初気付かなかったがあの「ハルク」じゃん。
ところで、今知ったがビル・エヴァンス・トリオのドラムス担当だったスコット・ラファロは彼の兄さんだって(びっくり!)
25歳没。ショックでビル・エヴァンスは半年間活動が出来なかったという。

すいません。上記赤字は間違いでした。マーク・ラファロの兄弟は、スコット・ラファロというだそうです(2008年死去)

曲はいいのでリンク残しておきます(笑)

 

倫理的には全くヤバい話。身投げした妊婦の胎児から脳を取り出して母親に移植するなんて!だったら胎児を救えよって話だが、そこらへんがマッド・サイエンティストならでは。
胎児の体に損傷等あって、単体では生きられないとかいった前提はなかったと思う・・・
そのゴッドウィン自身も父親から人体実験めいた事をやられていて、性行為も不可能な体にされていた・・・
自分にやられた事をごく客観的に眺め、冷静に分析している。それで根っからの科学者に育って行った。これも切ない話。

ベラが性に目覚めるシーンで、次の道具に「キュウリ」と聞いてびっくりしたが、イギリスでもサンドイッチに良く使われている様だ(こっちの使い方も?)

前の夫アルフィーをダンカンが見つけて来た時、ベラがついて行ったのは、自分の出自を知るため。そらー、自分自身が死のうとした理由は、何をおいても知りたいだろう。
ただあの理由だと、お腹の子の親はアルフィーじゃない可能性もあるし、もう少し真相を掴むのに時間が欲しいところ。
でもストーリー的にそれは必要ないのか・・・

ゴッドウィン役のウィレム・デフォーが実に良かった。この顔見るとスパイダーマンのゴブリンを思い出すが、全くメイクとは思えないほどイメージにピッタリ。シワが多いがあれで68歳。

時代としては19世紀末あたりか。医療設備は古めかしく、自動車も馬車に毛の生えた様なもの(実際馬車の方が多い)
その割りに空中を行き交う乗り物があるし、客船は球状船首っぽい。そのチグハグ感が楽しかった。

キワモノの寸前で踏み止まり、何らかの思いを残してくれた。
ただラストの「メェ~~・・・」はなんとも(なくて良かった) 

オマケ
ネット探して、本作に関するトリビアを集めたものを見つけた。
なかなか面白かった。監督が原作者に直接オファーしたとか、撮影は全部セットでやったとか(それも街サイズ!)とか・・・


あらすじ
19世紀末頃のロンドン。女性が川から身投げした。
一風変わった医学者ゴッドウィン・バクスターが住んでいた。


作業場には解剖途中の死体もある。
そこで暮らす娘 ベラ・バクスター。足でピアノを叩き、食べたものは吐き、床に小便をする。首の後ろに手術跡があった。
手慣れた様子で世話をするプリム夫人。
学校では多数の学生がゴッドウィンの解剖の講義を聞いている。
ゴッドウィンが帰って来ると「ゴッド!」と言って喜びまとわりつくベラ。仲はいい。
ゴッドウィンに強く影響を受けているマックス・マッキャンドレスは彼に、助手になりたいと申し出る。マックスが与えられた仕事は、ベラの観察記録を取ること。
自由奔放なベラは常にマックスを困らせ、時には屋上の出窓から屋根にまで出た。だが次第にベラに惹かれて行くマックス。

ある時、どうしてもベラの素性を知りたくでゴッドウィンの研究ノートを漁るマックス。それがゴッドウィンに見つかった。ベラの事実が話された。ベラは橋の上から身投げをした直後ゴッドウィンに拾われた。本人は絶命していたが、腹の胎児は生きていた。その胎児の脳を女性の頭に移植したゴッドウィン。


家の中には犬の頭に鶏の体といった動物たちがいる。


ゴッドウィン自身も、父親から様々な人体実験を施されていた。

マックスの影響を受けて、次第に周りのものに興味を示すベラ。
そんなある日、リンゴを手にして股間に当て、恍惚となるベラ。もっといいものはないかと探し「キュウリ」と言ってそれに手を伸ばした時、マックスが見つけて不道徳だと注意。不満のベラ。

急速に様々なものを覚えて行くベラに惹かれるマックスは、ゴッドウィンにベラと結婚したいと申し入れた。
それを受け入れたゴッドウィンは、彼女を家から出したくないため、様々な制約を書き込んだ契約者を作成するため弁護士ダンカン・ウェダバーンを呼んだ。
その契約内容が妙なものだったため、相手の女性に興味を持ったダンカンは、窓の外から侵入してベラに逢う。


無防備なベラはダンカンの誘いに簡単に乗ってしまい、セックスの喜びを知る(熱烈ジャンプ)
言葉巧みに外の世界の素晴らしさをベラに教えるダンカン。

結婚する前にダンカンと旅行に行きたいと言い出すベラを、ゴッドウィンは拒絶しない。弱気のマックスは何も言えない。
そしてポルトガルのリスボンへ旅に出たベラとダンカン。

旅先であちこちチグハグな行動をするベラだが、セックスの活力は並外れており、翻弄されるダンカン。だがホテルの中だけでは満足出来ないベラ。そしてある時、ベラを言いくるめて大きな箱に入れた。箱を開けた時、ベラは船に乗っていた。


一方ゴッドウィンはベラの居ない隙間を埋めるため、新たな実験体フェリシティを作り出す。ベラと違って飲み込みが悪い。


船でもベラの旺盛な性欲は変わらず、持て余し気味のダンカン。
食事に行っても平気でセックスの話をするベラ。
だがそんな中で、老婦人のマーサと連れの黒人ハリーだけは先入観を持たずにベラと接してくれた。マーサに急速に惹かれ、貸してもらった本を読み漁るベラ。

またハリーからは哲学的な言葉を学んで行った。

そのうちにダンカンへの興味を失う。


相手にされずヤケになったダンカンは、デッキに居るベラから本を奪って海に捨てる。すかさず次の本を渡すマーサ。
酒とギャンブルに溺れるダンカン
 

ある時、船がアレクサンドリアに寄港した。ハリーに教えられ眼下に広がる貧民の暮らしを見て驚愕するベラ。
ハリーは、これが現実だとシニカルに話す。
ベラは客室に走り、ダンカンがギャンブルで稼いだ金をかき集めて貧民たちに手渡そうとするが、船員に止められる。必ず渡して下さいね、と金を船員に渡すベラ(船員が着服)
金がなくなったと騒ぐダンカンだがベラは沈黙。
そのうちに船長が来て支払いを請求するが、一文なし状態。
最低限の食事だけを与えられ、寄港地のマルセイユで降ろされたダンカンとベラ。二人はパリへ向かった。

たまたま立ち寄った建物で、女性が金を貰う姿を見るベラ。
そこは娼館でマダムのスワイニーが声をかけ、知らない間に客がつき、金を貰ったベラ。その金で菓子を買ってダンカンの元に行くベラ。売春をやったと喚くダンカンはそこで別れる。


他に収入の手立てもないので、スワイニーの許で働く様になったベラは、様々なタイプの男を知って行く。
ある時などは、父親が息子二人を連れてセックスの実演を見せる、メモを取る息子たち。イクためには首を絞めるか肛門に指を入れる・・・
同僚の黒人トワネットとの同性愛にも目覚めていくベラ。

社会主義の集会にもベラを連れて行くトワネット。

ある日マックスからの手紙を受け取るベラ。そこにはゴッドウィンが末期がんで余命僅かだとあった。家に戻ったベラ。


急ぎマックスとベラの結婚式が営まれる。

やっとの事でベラをエスコートするゴッドウィン。
そこに男が乗り込んで来る。その後ろにいるダンカン。
男はアルフィー・ブレシントン卿といった。船でベラを「ヴィクトリア」と呼んでいた男性を頼りにダンカンが探し出した。
自分の事を妻だとアルフィーは言うが、全く心当たりがない。
家に帰ろうと言うアルフィーに、ついて行くと言ったベラ。
アルフィーは自衛のためか常に銃を持ち、屋敷に着いても従者やメイドを脅した。その生活に違和感を感じるベラ。

ある夜、医師と話をするアルフィーに気付くベラ。彼女のクリトリス除去手術の打ち合わせをしていた。自殺する前の彼女は性的に奔放で、彼の手を焼かせていた。
逃げ出そうとしたベラだが見つかってしまう。銃で撃たれそうになるが、弾みで自分の足を撃ったアルフィーは悶絶。
アルフィーをゴッドウィンの家に運び込んだベラは、マックスに処置を頼んだ。
その後ゴッドウィンは危篤となり、ベラに看取られて死んだ。
自分も医師になる決心をするベラ。

その後のベラとマックスの暮らし。彼女と同様の手術を施されたフェシリティーは多少知能が向上。それを世話するプリム夫人。パリ娼館のトワネットも同居。
翌日解剖学のテストがあるベラを励ますマックス。
そして庭では、脳にヤギの脳を移植されたアルフィーが草を食べて啼いていた。