NHKスペシャル「シリーズ 食の“防衛線”」第1回11/26、第2回12/3 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

NHKスペシャル「シリーズ 食の“防衛線”」
第一回 主食コメ・忍び寄る危機 11/26放送
第二回 牛乳・肉・卵 タンパク源を守れるか 12/3放送

感想
「いつも傍観者的なNHKスペシャル」といいながらも、今回はさすがに考えてしまった。
1回目は主食のコメ、2回目は乳製品が主体だったが、いずれもウクライナ侵攻が一つの引き金になって綻びを生じ始めた。
肥料、飼料についても国内自給と別のところで運用されていたため、危機に気付くのが遅れた。
こうなって来るとスイスの様な、食料政策を憲法に明記するぐらいの覚悟が国として必要だったのだろう。 

食料については、5年先でさえ危ういかも・・・
急がれる「飼料用トウモロコシ」の生産拡大。



内容
第一回 主食コメ・忍び寄る危機 11/26放送

千葉:マダガスカルからの技能実習生受け入れ。
現在農家の平均年齢:68.4歳。人手不足で崩壊寸前。
日本の食料自給率38%。各国が輸出を渋ったら崩壊する。

米に忍び寄る危機
日本人の摂取カロリーの2割を占める。

米以外は輸入に頼る。

大規模農家の行き詰まり。

20ha農家の加藤さんは今年破産した。
4000万の融資を受け農地拡大。だが3年前コロナで米の価格が下落。ロシア侵攻により燃料、肥料が高騰。負債は4500万。

秋田大仙市の異変。耕作放棄地の拡大。従来は引き継ぐ受け皿があったが、今はその余力なし。2030年には耕作者のほとんどが70歳を超える。70歳を超えると急速にリタイヤが増える。



労働力確保はスポットワーカーに頼る(ミッシングワーカー)
農協と建設会社が協業。だが定着する人は多くない。
外国人材の活用も試行錯誤。獲得は厳しさを増す。
インドネシアでは日本劣勢。賃金面でヨーロッパが有利。

日本のコメ政策は、以前は優遇されていた。
コメ余り→減反政策に移行。
1995年に食料管理法制定(自由化)
次いで消費者のコメ離れ→米価下落。


政府は自給率38→45%への向上を考えるが、2040年の受給見通しは民間予測と大きく乖離(賄えない)


コメの単位生産コストは、農地がある程度広くなると横ばい。


また今後20年で農業従事者は120万→30万に減少(1/4)
千葉いすみ市。地元の米を給食に使う。有機米として1.5倍の価格で購入。一般の人も買える。輪が全国に広がっている。


スイスの例
国民全体で農業を守る。自給率49%。店の8割はスイス産。
安定に作るための仕組み→農家の総収入の1/3は国からの補助。
金額で3500億相当。支援のおかげで設備投資が出来る。
国民自らが選択した。

第二次大戦後、多額の補助で農業拡大→小麦余り。
1996年に国民投票を実施
→農業を守ると憲法に明記(食料供給の保証)
守るべきラインを定めた。国の厳格な審査。
農家の平均年齢は49歳。国の補助は65歳まで受けられる。

食への意識変革が必要。農家が減るのは自分たちの命の問題。
地域で自給圏を作る。その値段で成り立つ社会を作る。


第二回 牛乳・肉・卵 タンパク源を守れるか 12/3放送
異例のセリ。牛300頭。離農する者が増えている。
酪農関連の生産現場はゆらぐ。ウクライナ侵攻で脆弱性が露呈。
牛乳・肉・卵は米と並ぶ重要カロリー源。


卵の自給率は97%だが、そのエサの自給率は13%。


北海道の酪農家。20年前4軒集まってファーム設立。

北海道が日本の生乳生産を支えて来た。

 

ロボット牛舎で年間50億を売り上げたが、この2年で悪化。

要因はエサの高騰。


戦闘によるウクライナからの輸送ストップ、中国の消費拡大。
更にアメリカ アイオワのトウモロコシがバイオエタノール生産のため4割使われる

また気候変動要素で今世紀末までに24%減少の試算。

食肉用子牛の価格も低迷。6月に14万で売れたのが9月は5千円。
引き取ってもらえない時もある→殺処分。

昭和36年制定の農業基本法による畜産・酪農の規模拡大に伴い、エサの輸入路線に移行(アメリカの過剰生産に同期)

牛は本来草を食べる動物だが、トウモロコシを与えて収量アップ。日本は世界最大のトウモロコシ輸入国となった。

アメリカでの運用を取り入れアメリカから冷凍精液を輸入。

それから40年。生産性は10倍になり大量生産確立。


日本の食料自給率は73→38%になった。


当時の為政者の反省:人の食べる穀物と家畜が食べる穀物を峻別してしまった・・・(家畜のエサの国内生産軽視) 
大規模化のため酪農家の戸数は減った→将来維持出来るか?


2014年のバター不足。畜産クラスター発生。

国は投資の半分をサポートして大規模化を後押し。

生乳生産は上向きに転じた。

それにストップをかけたのがコロナ。
生産抑制→借金を抱えた酪農家。

模索されているのが放牧酪農。多くは小規模(1人30頭まで)
配合飼料は半分ほどで利益は確保できるという(一例)


飼料用トウモロコシの国産化も検討中。小麦と大豆は交互に作っても連作障害が出るが、トウモロコシは土壌改良作用があり、この3種のローテーションならば問題ない。



 

今、飼料用トウモロコシ国内生産は輸入の0.1%以下。
目指すは需要の10%。耕作放棄地を使えば実現可能か?
畜産と稲作の連携を考えた農地活用が今後のカギ。
現在、食用とエサとで政策分野が分かれているため、そのマッチングが大事。
今のところ手間をかけずに作れる穀物はトウモロコシだけ。
これが自給出来れば食料安全保障も上がる。

限られた国土で何を作り、何を食べて行くか、消費者も考える必要がある。
インドでも乳製品の消費急拡大。

食料は命の源。38%の意味を考えなくてはならない