感想
久しぶりに宇宙ネタで「ホォ!」と感嘆した。
金属量の多さから、太陽は銀河系の深部で生まれ、様々な要因により移動を続けて今の場所に来たという仮説を立てた。
そしてガイア衛星による天の川銀河のマップ作り。
いて座矮小銀河の衝突による銀河の振動。
そして銀河に流れを作っている渦状腕(スパイラル・アーム)の運動によりはじき出された太陽・・・
いろんな仮説の寄せ集めではあるが、こうして考えてみると天の川銀河の中で、知性ある星として地球が誕生したのは、相当に稀な出来事だったと言えそうだ。
この奇跡のような僥倖のおかげで文明を築いた人類が、いま何という愚かな事をしているのか。言葉がない。
内容
CHAPTER 1 天の川銀河とガイア衛星
天の川銀河の正体は2千億以上もの恒星からなる銀河。
半径5万光年、太陽は中心から2万6千光年離れている。
天の川銀河を最初に描いたのはウィリアム・ハーシェル。スケッチして記録した。星の一つひとつが円盤上を回るイメージ。
そのイメージが崩れつつある。
きっかけは2013年に打ち上げた「ガイア衛星」
2台の望遠鏡を回転させ、星々の正確な位置と色、明るさを記録し、三次元空間に再現。
年周視差:ある期間をおいて撮った星の画像の角度と距離により、どの様に動いたかが分かる。
打ち上げ後10年で3回のデータが公開された。
誰でも引き出せるらしい→コチラ
18億の恒星全てのデータを引き出せる。変化は驚くべきもの。
天の川銀河に異変を発見したテレサ・アントージャ。
星の位置と速度を整理して、不思議な模様を見つけた。
波打ちながら回転する星の集団を見つけた。
銀河の円盤に何かがぶつかって波打ったという。
シミュレーションによる絞り込み。3~9億年前にぶつかった。
その時何が起きたか→いて座矮小銀河(直径1万光年)が天の川銀河の周囲を転回している。それが周回、接近。
→星々に衝撃を与えた。その振動に太陽も巻き込まれている。
太陽はその接近の遥か前(46億年前)に誕生している。
いて座矮小銀河は、星の誕生にも関わっている。
天の川銀河の、星々の年齢分布を知ることが出来る。
色と明るさから夫々の星の年齢が分かりグラフが作成出来る。
それを星生成率で現すと、銀河誕生時には星が多く出来、次第に減って行くが、その後星発生のピークが3度現れる(60,20,10億年前)この時何があったのか→スターバースト。
要因は銀河同士の接触。これにより星間物質が多くなる。
いて座矮小銀河がどの様に接触したか。ストリームとして残っている。60,20,10億年前、天の川銀河に最も影響を与えた。
これがなければ太陽は誕生していなかったかも知れない。
CHAPTER 2 太陽移動説と旅立ち
辻本拓司(国立天文台)の考察。
太陽は、標準的(中年の)恒星だが他と大きな違いがある。
年齢の割りに金属量が多すぎる。恒星の金属量は光のスペクトルから算出出来る。水素とヘリウム以外が金属。
超新星爆発のガスから若い星が生まれる。
若い星ほど金属量か多い。
銀河の中心に近いほど金属量が多い
この事から1996年、ローランド・ヴィーレンが太陽移動説を提唱。金属量からみた太陽の位置はもっと内側。
天の川銀河の中心部から移動したのではないか?
1977年、ヴィーレンは天の川銀河の星は拡散すると発表。
軌道上で重力を乱す空間に遭遇すると、円軌道からずれて行く(星々が混ざり合う)それはどんな旅だったのか。
太陽は孤独に銀河系をさすらって来た。
銀河系の中に太陽と同等の組成の星を13個見つけた。
それらの生まれた場所は銀河中心から4キロパーセク。
だがこれでは中心すぎてその重力場から脱出出来ない。
注:1キロパーセク:3260光年
銀河の中心部は星の密集部。そこにバーと言う棒状構造がある。
更にバーの回転速度が判明。銀河中心にあるラグランジュ半径の存在。バーの回転と共に星を強い重力で捕らえている。
その半径である6.5キロパーセクを超えるのは困難。
どうやって脱出したか?
銀河を取り巻く渦状腕(スパイラル・アーム)
今までは安定した形だと思われていた。スパコンで設定を変えて再シミュレーション実施(2022年)の結果、渦状腕は10億年
スパンで誕生と消滅を繰り返している事が判明。
20億年前、腕が大きくなる時にトルクが働いて、太陽を外に連れ出した。
そして、太陽の金属量がなければ地球も生まれていなかった。
CHAPTER 3 太陽 はるかなる旅路
渦状腕の中に超新星がたくさん生まれる。宇宙線が大量に発生し、地球の雲を増加させた。これが地球の寒冷化「全球凍結」を招いた。夫々22,7,6,5億年前に夫々起きている。
そのメカニズムが地球外部にある。渦状腕の内部を通った時に全球凍結が起きている(大量絶滅と飛躍的進化の源)
酸素濃度変化とも符合する。
注目したのは星間ガス(ガイアでこれの3Dマップが作れた)
それが泡状構造物(ローカルバブル)大きさは1千光年ほど。
太陽はそのバブルの中心にいる。そうなった時期は1400万年前。超新星爆発が相次いで起きて広がり、バブルを作った。
太陽は500万年前そのバブルに入り込み、現位置になった。
場所が悪ければ、超新星の大量爆発で生命は消えていた。
現在太陽系はローカルバブルの中。出るのは7~8百万年先。
今は銀河系の中で最も安全な場所に居る。
500万年で進化した人類。
銀河系の枠組みの中で地球を俯瞰し、考えなければならない。
今日の一曲(宇宙つながりで・・・)
Earth, Wind & Fire - Fantasy 1977