ラジオドラマ「地下鉄のアリス」1977年 別役実氏を偲んで | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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別役実さんの訃報を3/11の新聞で知った。
不条理劇の作家、という程度しか知らないが、40年以上前に彼が作った「地下鉄のアリス」をたまたま録音しており、一度だけ聴き返していた(録音したのは1978.7.22で、再放送時のもの)
今回聴こうと思って、何とかテープは見つけたが、肝心のデッキが壊れたままで放置状態。


でも大丈夫♪ ネットで探したら、ありました。
内容はあらかた忘れていたが、岡田英次が「砂の女」の昆虫学者とダブって、不思議な世界に誘われた。
そういえば、こちらも武満徹。不条理劇には良く似合う。
りりィもいい味出している。

脚本:別役実 
音楽:武満徹  
制作:現代制作社(NHK東京)
効果:後藤伸行,技術:鈴木清人,演出:平野敦子

出演
岡田英次,りりィ,瀬川哲也,加藤健一,若宮大祐,新村礼子,
稲垣昭三,風間杜夫,水田マリ,草薙良一,中西良太,斎木茂,
中川彰,瀬戸山秀樹,大竹信,堀レモン,笹尾圭

初放送:1977/03/22 再放送:1978/07/22
1977年度イタリア賞参加


聴いてみるのが一番です(55分間のトリップ)


あらすじ
地下鉄をこよなく愛する男がいる。

いつも後部車両に乗り、目立たない様気を配る。
試している遊戯「地下鉄ゲーム」
中央に座ってガモフの天文学を読んでいる。実は本など読んでいない。読むふりをしながら乗客を観察。
本を読んではいないと見抜かれなければ自分(親)の勝利。
幾度か勝利し、幾度か敗北。

だがその緊張が途切れることもある。
顔がだらんとし、異変に気付いて客たちが集まる。
次の駅で客たちに連れられてベンチに横たわる。

敗北には耐えなければならない。
そんな事があると、地下道に降りる前に疲労する。
私の体の各部がしみじみと崩壊していく。

どうしたの?と声をかける少女。外に出たいのだという。

友達の家に行く道順が紙に書いてある。
男は少女を連れて地下鉄に乗る。

だが何度通っても駅に着かないという少女。
性急すぎたんだよ、と男。なぜ?の問いに

「ここは地下鉄だから」
風が吹いているわ、と言う少女に

「地下鉄全体が呼吸している」と男。

ピンボールをする若者に、いろいろ指図する中年。

さっきここにいた娘を知らないかと言うが、若者は知らない。
娘の見舞いに行ってくれるというから道順を教えた。まるで知らない娘。
ああいうのを地下鉄迷子っていうんだ・・・・

切符を買う男。

地下鉄という大きな装置が、切符を買ったことを知った。

中年が、地下鉄の一号から六号までが全部繋がったらしい事を話す。完成したというのは本当なのか?と若者。
今誰かアリスって言ったよ。あのコに何かあった・・・
若者に「アリスがどうかしたのか?」という言葉を人の流れに乗せるように頼んだ中年。
噂の流れが一巡して中年に戻って来た。

「もう少しだったんだが・・・」

アリスをエレベーターに乗せる男。この地下に何百本もの地下鉄がある。そこの通風口から空を見ると、昼でも星が見える。

アリスの事を心配する中年に

「あのコはもう着いているよ」と若者。
娘がいるという、しもた屋の二階を訪れる若者。

女のコが訪ねて来なかったか聞くが、娘は知らない。
「ここにはもう、誰も来ないんですよ」

ラーメン屋で食事している中年と若者。

あのコは迷い込んでいる、私が迷わせてしまった。

操車場を過ぎ、通風口に辿り着いたアリスと男。

「星空が見えるわ」
ここがボクたちの場所。ここに居ればゲームをしなくてすむ。
アリスが、地下鉄が完成した噂を話すと

「ゲームとならない、嘘だ!」と言って走り出す男。

中年が、通風口を見つける。

そこでアリス、アリス と小さく呼び始めた。

地下鉄会社に電話をした男。広報課に繋がり、地下鉄の事について聞きたいと話すと、こちらは事実を伝えるところではなく、調査するところだとの返事。質問の中に応えがあると言う。

質問の中にしか答えがないのだとしたら、ここから出られないかも知れない、と男。
しもた屋に行くわ、と言うアリスに

「行っちゃだめだ」
「誰かが呼んでいるわ」

「あの駅は間違っている、君は騙された」

呼びかけを続けたが、諦めた中年。

私が娘に会いに行くのがイヤだったから・・・
街の噂。アリスという女のコが行方不明になった。

地下鉄がこうなってから、いろんな事が起こる。

逃げるんだ、と言ってアリスと地下鉄に乗り込む男。

どんどん前に行き、先頭車両へ。
運転席に行くんだ。ガラスを割って運転席を見ると無人。
やっぱり地下鉄は完成したんだ。
僕たちに応えてくれる運転手がいなくなった。
ハンドルは自動になってるけど手動にできる、とアリス。
僕たちのものになる。しもた屋に行きたい、とアリス。
警報が鳴り、信号も全て赤になった。
もう止まらない。僕たちが運転し始めた。

暗いわ  暗いね
アリス、愛しているよ。

いや、何も言わなくていい。前を見ててくれ。
僕は、そんな風にして愛していたいんだ。
暗いわ  暗いね

しもた屋での会話。
暗いねー 電気点けようか。

いいわ、この方が星見えて。
今日もお父さん来てくれなかった。

ねえ見て! 地下鉄が火を吹いて空を飛ぶわ
本当に。 何てきれい
 

アリース!