サマーウォーズ(アニメ)  2009年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

 

監督 細田守
脚本 奥寺佐渡子

 

キャスト
小磯 健二(こいそ けんじ)      : 神木隆之介
篠原 夏希(しのはら なつき)    : 桜庭ななみ
佐久間 敬(さくま たかし)       : 横川貴大
池沢 佳主馬(いけざわ かずま) : 谷村美月
陣内 栄(じんのうち さかえ)      : 富司純子
陣内 侘助(じんのうち わびすけ) : 斎藤歩
陣内 万助(じんのうち まんすけ) : 永井一郎
陣内 太助(じんのうち たすけ)   : 小林隆

 

予告編

 

感想
細田守作品の中では多分一番好き。ここ数年、夏になると観る。
現代はGAFAに代表される様に、インターネット関連企業が社会を動かしている。
だからOZの様な、アバターを介して仮想世界の中で棲息するという概念は、既に始まっていると言ってもいい。

たまたま送られて来た暗号に返信した事で、アカウントを奪われてしまった健二。この辺りのセキュリティ意識の甘さは、ネット安全管理のいい教育例として活用出来るだろう。

 

OZの白っぽい空間と、長野の山奥の、深い緑との対比。最先端のAIとの戦いを片田舎で行っている事のギャップが秀逸。
そして一番は、仮想現実の世界を描きながら、一方で「家族」を深く掘り下げている事。その中核に存在する「栄おばあちゃん」。
夫の愛人の子だった侘助を引き取って、わけ隔てなく育てた。だがその侘助がしでかした不始末。
「これは戦さだ」と言って、過去に世話をした者たちの人脈をフルに使い、事態を収拾しようとする気迫。

それでも最後に孫娘のため、健二に望みを託す。

 

ラブマシーンとの勝負が花札(こいこい)なのも意表を突いて「ウマいっ!」。思わずルールをチェックしたりして・・・

ラブマシーンが「あらわし」を使って陣内家を攻撃するくだりも秀逸。

これは「はやぶさ」帰還のドラマが2010年の話だった事から言っても視点の鋭さが際立つ。

 

宇宙空間からの攻撃という点では「アキラ」でSOLによる攻撃があったが、今回切り口も新鮮。

 

山下達郎の作った主題歌に「零戦が空を飛ぶ」という歌詞があり、ちょっと気になっていた。その事についての記事がコチラにある。
第二次大戦中、上田市に陸軍の飛行場や特攻隊の基地があったそうだ。本編でも多少その事について触れていれば、リスペクト出来たかも知れない。

 


あらすじ
世界中の人々が利用しているインターネット上の仮想世界OZ(オズ)。ケータイやPCから入る事が出来、同時翻訳で世界中の人とコンタクト可能。
ビジネス、行政、納税とも関連付けられ、高度なセキュリティで守られている。その守り主はジョンとヨーコ。

 

7月26日のニュース。

小惑星探査機「あらわし」が地球に帰還するとの報道。

 

学校のPCで友人の佐久間敬と、OZの保守点検のバイトをしている小磯健二は、一年上の憧れの先輩 篠原夏希に頼まれ、夏休みのバイトを引き受ける。

 

そして、長野県上田市にある夏希の実家へ連れて行かれる健二。

そこには夏希の曾祖母「栄おばあちゃん」がおり、彼女の90歳の誕生祝いのため、親族が一堂に集まっていた。

 

栄おばあちゃんを安心させるため、婚約者のふりをするのが今回バイトの内容。
健二は数学オリンピックの日本代表になりそこねた程度の優秀さだが、東大生という夏希のウソで対応に苦慮。
命に代えても夏希を守れるか、と言われて絶句する健二。

 

陣内家は十六代続く家系。栄の次男万助が話す戦国時代の武功。

そんな場にふらりとやって来た男「侘助」。ここに来るのは10年振り。

招かれざる客。ひそひそ話ではいろいろ複雑。本家の養子。大じいちゃんの妾の子。

 

その夜(7/30)、健二のケータイにメールが送られる。何かのクイズだと思ってそれを解き返信する健二。「Thank you」との返事。

 

翌日、目だけ隠した健二の写真がニュースに流れる。OZ内部に潜入してセキュリティを混乱させた犯人だという。OZへのパスワードが無効になりログイン出来ない。東京から佐久間の電話。
そういえば、変なメールを受けた、と健二。2065桁の暗号を一晩で解いた。「ボクがやった。何かの問題かと思って・・・」
今回、メールに返信した者のアカウントが乗っ取られた。

 

夏希のまた従兄弟の池沢佳主馬。OZの中では格闘技の名手「キングカズマ」として有名。


アカウント乗っ取りを行ったのは実験用AI、通称「ラブマシーン」。

キングカズマが封じ込めようとして戦うが、回りのアバターを食って凶悪化するラブマシーン。

 

警察官をしている万助の孫、翔太に連行される健二。
一方ニュースでは「あらわし」のトラブル報道。また信号システムや火事情報システムが乗っ取られ、社会全体が大混乱。

今はラブマシーンが一般のアカウントを盗み放題の状態。

登録者は10億人以上。

もし大統領のアカウントが盗られたら核ミサイルだって撃てる。

 

栄おばあちゃんが立ち上がる。「これはいくさだよ!」
かつて自分が助け、今は各方面で高い地位にいる者たちへ片っ端に電話をかけ、事態の収拾を訴える栄おばあちゃん。

中には警視総監も。

 

佐久間からの追加情報。暗号を解いたのは全世界で55名。

お前は違う。最後で一つ間違えた。

 

力を合わせれば止められるかも知れない、という健二に「それは無理」と侘助。

「それの開発者、オレ」と言う侘助。俺が開発したハッキングAI。

機械に知識欲を与えた。結果は良好。勝てないのはそういうわけ。
皆の厳しい目が突き刺さる。栄ばあちゃんの目も。
挽回しようとして頑張ったんだよ、と侘助。米軍からフォファーがあった。ばあちゃんからもらった金のおかげ・・・
栄おばあちゃんが薙刀を持ち出して侘助に向ける。

「侘助、今ここで死ね!」
戻って来るんじゃなかった、と言って翔太の車を奪って逃げる侘助。
「身内がしでかした間違いは、みんなで片をつけるよ」と栄おばあちゃん。

 

栄おばあちゃん一人のところへ呼ばれる健二。花札をやろうと言われ相手をする。「もし私が勝ったら、あのコの事をよろしく頼むよ」
自信持てません、と言う健二に「アンタなら出来るよ」 そして栄おばあちゃんが勝った。  「やってみます・・・・」

 

翌朝、栄おばあちゃんは亡くなっていた。狭心症でニトロ処方をしていた、と三男で医師の万作。いつもなら心電図データが来る筈だが来なかった(OZのトラブルのせい)。

乗っ取られたアカウントは1000万を越えた。

 

葬式の準備を考える女たちを前にして「そんな事より敵討ち!」と叫ぶ万助。
次男坊は役に立たない、の陰口の中で健二が「僕も賛成です」
「ヤツは危険。せめてボクらだけでもヤツを止めたい」

 

リベンジに向けて動き出す陣内家。

万助の息子太助は電気店。大学に納品予定のスパコンを借用して持ち込み、万助は新潟からイカ釣り船(出力300kW)を陸送。

 

自衛隊の理一は通信車両を持ち込んで衛星回線を繋ぐ。

発熱は氷柱で冷やし、体制は整った。

 

ラブマシーンへ果たし状を送り、パワーアップしたキングカズマが対戦。こちらが仕掛けたエリアに誘導する作戦。

戦いを続けながら、陣内家を模した入り口からカズマが入り、ラブマシーンも後に続く。そしてカズマは脱出し、扉が閉じられた。

そこに送水管が繋がれ、水没して行くラブマシーン。
だがその仕上げの段階で異常が発生。スパコンが熱暴走を起こした。あった筈の氷柱がない。

 

翔太が氷を栄おばあちゃんの所へ持って行き、遺体を冷やすのに使っていた。思わず殴り付ける佳主馬。

ラブマシーンは更に凶悪なものに変身。

吸収されたアバターは4億以上。


そしてワールドクロックが狂い出す。残り2時間のカウントダウン。
端末に原発施設が映し出される。米軍のシステム。GPS誘導で「あらわし」が墜落するまでの残時間。核施設のどこかに落とすつもり。それはラブマシーンにとってゲームでしかない。
止めるにはGPS制御のアカウントを取り戻すしかない。

出来るとしたら侘助だけ。そこで健二が呟く。「まだ負けてない」

「何かまだ手がある。諦めたら解けない」

 

海外回線から侘助にコンタクトする夏希。

栄おばあちゃんの死を知り、ダッシュで戻る侘助。
栄おばあちゃんの残した遺言。

一番いけないのはお腹が空いている事と、一人で居ること。

 

おにぎりを食べると、落ち着きを取り戻すみんな。

奴のゲーム好きを利用する。
OZにカジノステージをセットする。

夏希との花札勝負。賭け金は私の家族。

ラブマシーンが乗って来た。
それと同時作業で侘助がシステムの解体作業を進める。

コイコイ一回ごとに倍。だが勝っても4億分の26。それから連勝を重ねて次々にアカウントを奪還する夏希。


だが油断したスキに負けを喫し、アカウントの残りが2桁(74)に。このままでは賭け金不足で負けが決まる。
その時、アカウントが一つ増えた。ドイツの少年が自分のアカウントを託した。それをきっかけに全世界からアカウントが集まり、1.5億まで増える。夏希のアバターも一新。

 

そこからは夏希の快進撃。どんどんアカウントが移動し、ラブマシーンのアカウントがとうとう2にまで減る。
そしてワールドクロックが残り13分で停止。
だがその中で一つだけ止まらない時計。画像の先にあるのは陣内家の衛星画像。ここに「あらわし」を落とすつもりのラブマシーン。

 

解体作業はまだ終わらない。

 

残り10分を切って、手分けして近所の人の避難誘導に向かう家族たち。

 

「あらわし」GPS誘導にニセの補正情報を与えてコースを逸らす案を健二が思いつく。

作業を始めるが、ラブマシーンがパスワードを変更して妨害。

その都度計算でそれを突破する健二。最後は暗算・・・・
ヤツの守備力を侘助がゼロにし、キングカズマがラブマシーンのアバターを撃滅。
どたん場で補正が効いて、家への直撃は免れたが半壊。

その衝撃で温泉が出る。

 

その後侘助は当局に出頭して真相を告発。

実験を進めた米国防総省が責任を問われる事になった。

 

陣内家での大団円。