雲のむこう、約束の場所    (アニメ) 2004年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

ハード寄りで、新海作品の中では一番好きかも知れない。

 

監督・脚本 新海誠   上映時間:91分

 

キャスト
藤沢 浩紀(ヒロキ)      - 吉岡秀隆
白川 拓也(タクヤ)       - 萩原聖人
沢渡 佐由理(サユリ)   - 南里侑香
岡部                       - 石塚運昇
富澤 常夫                  - 井上和彦
笠原 真希                  - 水野理紗
有坂                          - 木内秀信
水野 理佳                  - 中川里江

 

 

予告編


感想
新海誠が初めて本格的にスタッフを使って制作したアニメ。
やはり基本設定としては「ほしのこえ」同様、中三(14歳)前後の少年少女がコアになっている。

 

最初の「つかみ」がイイ。分断された「エゾ」にそびえ立つ巨大な塔。

それを毎日眺めながら、いつか飛んで行こうと飛行機を作るヒロキとタクヤ。その実現性には多少のアヤしさはあるが、バイト先が米軍の下請けとなれば、けっこう重要なパーツの入手も可能。

 

次第に明らかになる塔の正体。並行宇宙を観察する事で未来予測が出来るという持って行き方。基本は多元宇宙論(マルチバース)。

資料を読み出すとキリがないが、分岐されるべき宇宙が無限にあり、それを部分観測する事で未来の方向付けが出来るということか(うーん・・・)。その並行宇宙とサユリの夢とを合体(なんとまあ強引な)

 

しかし先日小松左京の「ゴルディアスの結び目」にもあった様に、女性の心の中に生じたブラックホールなんていう事もあるから、それはそれで「アリ」かも。

 

覚醒と引き換えに記憶をなくそうとしているサユリと、夢つながりで彼女を救い出そうとするヒロキ。それをサポートするタクヤ。

この美しい三角関係。
マルチバースという宇宙摂理と政治を組み合わせる、手法の斬新さに惹かれる。多少の破綻があっても、SFなら許される。

この辺りについては監督のセンスに拍手。

 

並行宇宙の侵食が塔の破壊で止まるなら、他にイロイロ研究を続ける方法もあるだろうに・・・まあここは深入りせずファンタジーとしての幕引きを考えれば、このエンディングにはナットク。

 

ただ、ヒロキ役の吉岡秀隆がイマイチ。あの甘ったれた言い回しにはちょっと嫌悪感がある。内田有紀と離婚したのも多少絡んでいるかも(そういえばこの出演時には結婚中だったんだ)


つっこみどころは・・・・
やっぱヴェラシーラだな。
かなり特異な形態で、大きな先尾翼と環状主翼の組み合わせ。スタビライザーはV型。
飛ぶには飛ぶと思うが、ジェット飛行の後の「人工飛行(?)」とか言ってたのに切り替わる時、先尾翼が割れてXウイングみたいになり、それが更にクロスして二重反転のプロペラの様に動き出した。
もし先尾翼が揚力を担っていたとしたら、縦クロスした時には揚力ゼロとなって安定がバラバラになる。
回転しているという事で、推力を得ているのかな?
この点について専門的にレビューしている人がいるので、そちらにお任せ。

 

 

あらすじ  詳細はコチラ(優秀!)
1996年
青森の津軽半島に住む中三の藤沢浩紀(ヒロキ)と白川拓也(タクヤ)。そのすぐ北は分断された「エゾ」。共産国家群の「ユニオン」が支配する。そのエゾの中央にそびえ立つ巨大な塔。


その塔にあこがれ、自作の飛行機ヴェラシーラで飛ぼうと製作を続ける二人は、材料集めのために米軍下請けの蝦夷製作所でバイトをしている。親分肌の社長、岡部。

 

二人に好意を寄せる沢渡佐由理(サユリ)に口を滑らせてバイト先まで連れて来てしまうタクヤ。

 

結局ヴェラシーラの事もバレるが、それは三人の共通の秘密になった。

 

サユリを塔まで連れて行く約束をする二人。
だがある日、塔の夢を見たサユリは姿を消す。
目的を失い、ヒロキとタクヤはヴェラシーラの製作を止めてしまう。

 

3年後(1999年)
岡部の運営する反ユニオン組織ウィルタ解放戦線に協力して、在日米軍のカレッジ・スクールに通い情報を集めるタクヤ。

ウィルタの目的は塔の破壊。

 

タクヤの指導教官、富澤常夫教授は、宇宙の見る夢--並行宇宙を観測する事で未来予測が出来ると考えている。

軍事、政治への利用。装置を作って研究しているが、実現の道のりは遠い。実はあの塔がそれを行うためのシステムであり極めて強力。

設計したのはエクスン・ツキノエ。だがそれは現在機能不良とも見られ、塔の周囲数キロで空間が並行宇宙に侵食されている。

 

後に中三の時から三年眠り続けている少女サユリを見つける富澤。

彼女はエクスン・ツキノエの孫娘だった。


眠りと空間侵食の関係を考え、サユリを東京から支配下の青森へ移送する手続き(ナルコプレシー患者の移送要請書)を行う富澤。

 

サユリが持っていた旧友岡部への手紙(ヒロキへの転送を求めたもの)。

富澤と飲む岡部。ウィルタ幹部の岡部は、タクヤとヒロキを「あいつら特別」と買っている。
PL外殻爆弾(シーカーミサイル)が手に入ると言い、塔を爆破出来るか富澤に聞く岡部。

爆破にタクヤたちの飛行機を利用しようと考える岡部。

 

夢の世界に閉じ込められているサユリ。

空と雲と崩れた町。どうして私ここに居るの?

 

中学卒業後、東京の高校に通うヒロキ。日によって塔が見える日は落ち込む。三年前サユリが消えたショックを引きずる。
岡部からの手紙が定期的に来るが、返事をした事はない。

 

時々サユリの夢を見る。気配だけが体に残る。
僕だけが(私だけが)世界に取り残されている・・・・

そんな時岡部から届いた、3年前のサユリからの手紙。

何度も同じ夢を見るという。寂しさで痛い・・・
病院を訪れるが、既に青森に移送されていた。

そこで白昼夢を見るヒロキ。

 

ヒロキが夢でサユリと会った時、並行宇宙の侵食が拡大。

サユリとの関係を確信する富澤。
もしサユリが目覚めれば、今の宇宙が並行宇宙に飲み込まれる・・・
サユリに引き合わされ、絶句するタクヤ。近いうちに、安全のため彼女はアメリカに移送される。「塔はもはや兵器」と富澤。

 

アメリカとユニオンとの緊張は極限にまで達している。

青森に戻ったヒロキはタクヤと再会。
ヴェラシーラにサユリを乗せて、塔に連れて行けば目覚めると言うヒロキ。今さら夢の話か、ガキの遊びだとヴェラシーラに銃を向けるタクヤ。止めるヒロキとの間で殴り合い。

 

タクヤが勝ち、再びヒロキに銃を向ける。

「サユリを救うのか、世界を救うのか、だ」


翌日蝦夷製作所に行くヒロキだが、誰もいない。窓を割って入ると岡部が。「やっぱりヒロキか。お前らで塔を壊せよ」

 

サユリを病室から連れ出すタクヤは、ヴェラシーラと共に居るヒロキの所へ連れて行く。


ウィルタの活動で腕を負傷したタクヤは、サユリをヒロキに託す。
ソフトはタクヤ、配線はヒロキで機体調整は最終の詰め。
津軽沖での戦闘状況予測を見る二人。

塔の周辺はガラ空き。機にシーカーミサイルを搭載。

 

アメリカがユニオンに宣戦布告し、津軽沖で戦闘が始まった。

サユリを後部座席に乗せ、ヒロキが操縦するヴェラシーラが発進した。

 

戦闘の中、攻撃を避けて塔に近づくヒロキ。


サユリは目覚めの予感がしていた。ああ、夢が消えて行く。私が何をなくすか判った。今の気持ちを消さないで・・・

 

夢での繋がりがどんなに大切か、求めていたか。今までどんなにヒロキ君のことを好きだったか・・・ 目覚めるサユリ。

 

「位相変換拡大!エゾが飲み込まれて行きます!」

私、何かいわなくちゃ・・・・とサユリ。
ヒロキが振り返って「大丈夫だよ、目が覚めたんだから。 おかえり」


シーカーミサイルが投下される。

一直線に塔まで飛び、そして爆発。破壊される塔。

 

「約束の場所をなくした世界でそれでも、これから僕たちは生き始める」