妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3  2018年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督 山田洋次
脚本 山田洋次、平松恵美子
音楽 久石譲

 

キャスト
平田周造       - 橋爪功      父
平田富子       - 吉行和子    母。周造の妻
平田幸之助     - 西村雅彦   長男
平田史枝       - 夏川結衣        幸之助の妻
金井成子       - 中嶋朋子        長女。税理士
金井泰蔵       - 林家正蔵        成子の夫。
平田庄太       - 妻夫木聡        次男。ピアノ調律師
平田憲子        - 蒼井優           庄太の妻 看護師
加代              - 風吹ジュン      居酒屋の女将
角田                  - 小林稔侍       医者・周造の同級生
泥棒                  - 笹野高史      
講師          - 木場勝己
タクシー運転手  - 笑福亭鶴瓶
刑事           - 立川志らく
鰻屋            - 徳永ゆうき
巡査(中村)       - 藤山扇治郎

 

 

 

あらすじ
朝の風景。食事の用意をしたのに牛乳だけ飲んで出ようとする幸之助。香港に出張。いいなーという息子に「遊びに行くんじゃない!」。仕事はクレーム処理。
今月分の生活費を貰う史枝。これでは足りないと言う史枝に渋い顔で数枚渡す幸之助。タクシーが来て出掛ける幸之助。
友達の家ではお父さんがお母さんから小遣い貰っている、と息子。
平田家は、周造の時から男が金を渡す方式。家計を考えなくていいから楽、と富子。

 

周造が二階から降りて来る。「お父さん、今日は?」の声に「角田君とゴルフ」。角田は同級生で開業医。
富子はカルチャーセンター。息子が「ママも行ったら?」と言うと「行くならダンス」
高校時代、ダンス部でフラメンコをやっていた。だが昨年幸之助に言ったが相手にされない。

出迎えに来た角田の軽に乗って出掛ける周造は、家族の忠告で昨年免許返納。
巡査の中村が来て、史枝に最近空き巣が増えている、とチラシを置いて行く。
近所の主婦二人がパートに出掛けるのを見て羨ましい史枝。

 

カルチャーセンターの富子。仲間数人に男性講師。与謝野晶子の小説がテーマ。三回結婚をしている講師を冷やかすみんなに閉口の講師。
買い物の帰りにフラメンコ教室を見学する史枝。見ているうちに、自分が踊っている空想。

 

成子の事務所を訪ねる庄太。父親たちが墓参りに行くのに小遣いをやりたいが、自分だけで負担出来ない。

成子二万、庄太一万で話がつく。


「かよ」で飲んでいる周造と角田。二人の田舎は瀬戸内海。史枝からの電話を適当にあしらう周造。

富子に小遣いを渡す庄太。だが富子は、本当は行きたくないと言う。墓までは急な坂。年老いた親戚に会うのも気苦労。その話から史枝に、言いたい事があったら言わないと、と言う。
外で働きたいと言う史枝。自分で得た金を自由に使いたい。私は誰にでも出来る仕事をしているだけ、と嘆く史枝を励ます憲子。

 

二階で掃除をしている史枝。一息ついて周造の椅子にふと座ったままウトウトしてしまう。
そこに入って来た泥棒。鍵のかかっていない勝手口から入り、財布から金を抜いた。
冷蔵庫の牛乳を飲んでから、思い出した様に冷凍庫を開け、奥からビニールに包んだ袋を取り出す。その中身は札束。
そこで史枝が掃除機を持って階段から降りて来るのと目が合った。あわてて逃げ出す泥棒。
仕事をしている庄太に史枝から電話。泥棒に入られたという。身動きが取れない庄太。

 

刑事の事情聴取を受ける史枝。被害は普段使いの一万数千円と彼女の時計。それだけですか、と聞く刑事に言い難そうに、冷蔵庫のヘソクリが取られた事を話す史枝。金額は40万近い。

 

皆が居るところに帰宅する幸之助。クレームが何とかなって上機嫌。だが泥棒に入られたと聞いて急に不機嫌に。
ヘソクリの40万を取られた事にこだわる。俺が稼いだ金、家計費増やしてくれって言ったのは何なんだ!
成子が、10年も20年もかけて主婦がヘソクリするのは常識、ととりなすが「こんなイヤな思いさせやがって」とネチネチ続ける幸之助。八つ当たりされて怒って帰る成子。
その後も続ける幸之助。私がガマンすればいいのという史枝に、結局俺が稼いだ金。ピンハネみたいなもんだと続ける。泣き出す史枝。

 

墓の掃除をする周造と富子。この墓に入るのはイヤだと言い、カルチャーセンターの友達と共同で墓を買って、そこに入りたいと言う。

 

墓参りの帰り、泰蔵の車で帰る周造と富子。

大変な事が起きた、と泰蔵。

家に帰って、史枝が居ないのに気付く周造。

史枝が家出したと聞いて、いつかこんな事が起きると思っていた、と富子。ふてくされる幸之助。
40万の金に相変わらずこだわる幸之助。だが皆、今大事なのは史枝さんがどこに居るかだ、と言う。
憲子が行先を聞いていた。茂田井の実家。史枝から電話があった。両親が生きていた頃は良く遊びに行っていた。今は空き家。
「知らせる相手が間違っている、憲子さんは他人じゃないか」と言う幸之助に怒る庄太。「他人じゃないよ、憲子は僕の妻だよ。史枝さんだって元は他人だったじゃないか」
泰蔵が「私だって他人でした」と補強。
史枝さんが、憲子さんだけに打ち明けた気持ちが判る、と富子。彼女も嫁としてこの家に来た。

 

それでも抵抗する幸之助に「偉そうな口きくな!女房に逃げられた男が」と言ってしまう周造。
「それ言っちゃダメだ」と泰蔵。
逆上して外へ飲みに出る幸之助。富子が、明日からは任せてちょうだい、と家事を引き受ける。

 

息子が部屋で泣いているのを慰める庄太と憲子は、以前聞いていた二人のなれそめを話す。
史枝が通勤電車で気分が悪くなった時に、席を譲ってくれたのが幸之助。でも今は愛していないんだろ、と嘆く息子。

 

朝、腰痛で動けない富子。台所では周造と子供たちがバナナと牛乳。弁当が作れないので、幸之助は子供に金を渡す。

周造が洗濯をしているところへ角田が来て富子を診察。1週間はダメ。
角田が手を回して加代を呼んでいた。富子の手前、家政婦協会から来たおばさんという事に。
加代のおかげで何とか家事が回り、昼を作ってもらってビールで乾杯する周造と角田。
「お嫁さんの有り難さが判ったでしょ」と加代。

 

茂田井の家を掃除している史枝を訪ねる叔母のとも子。

昨夜明かりが点いていたのを見て訊ねて来た。
その後同級生の京子を訊ねる史枝。歓待する京子。

 

一段落して角田の車で帰る加代。
夕食の事を気にする富子だが「家政婦さんが下ごしらえしてくれた。鍋の火ぐらい見られる」と言う周造。だがソファに座ったとたん、寝てしまう。
うなぎ屋の兄ちゃんが、家から出る煙を見つけて勝手口から入り、ボヤを消し止める。

 

電話でその事を泰蔵から聞く庄太。だが憲子の祖母が家を出てさまよっており、探している状況。
あちこち探し、ようやく寺で住職と話しているところを保護。

帰りのタクシー運ちゃんにお父さん、と声をかける祖母。

 

京子の家で夕食までよばれる史枝。叔母のとも子も一緒。家の事は、時期を見て帰ればいいと言うとも子に対し京子は、別れちゃえ、と挑発。何ならスナック開こうか?

 

昼休み。会社の幸之助に面会する庄太。

相変わらずの幸之助を諭す庄太。
兄さんが行動を起こさない限り姉さんは帰って来ない。ヘタをすれば離婚、慰謝料、親権争い、そういう事になる。それでもいいのか?
不安そうな幸之助。どうしろと言いたいんだ?
昨日史枝と電話で話した庄太。幸之助と交わされた内容を聞いていた。
稼いだ金で史枝さんや子供を養っていると思っているのか?

当たり前だ。
そこが違うんだ。そうじゃない。史枝さんに家計のやりくり、掃除、子育て、全て委ねているから兄さんは一生懸命働くことが出来る。いわば役割分担。20年間の子育て、家事労働がどんなに大変な事か。
要するにあやまれという事か。そんなうわべの事じゃなく・・・・
兄さんが結婚した時、史枝さんは匂う様に美しくて、高校生の僕は、この人は幸せにならなきゃいけない、そう思った。今でもそう思っている。

考えてみるよ、と言う幸之助に「今すぐ行けよ!」「仕事だぞ」
一生に一度あるかないかの事、カミさん倒れて救急車とでも言えばどうにでもなる。去って行く幸之助。

 

まだ明るいうちに帰宅する幸之助に驚く周造。

茂田井に史枝を迎えに行くという。
逃げた女房迎えに行くのに、敵討ちに行くみたい、と悪態をつく周造。
車で走る幸之助。雨が降って来た。

 

家に着き、玄関先で座っている幸之助。

二階から降りて来てびっくりする史枝。
何で来たの?電車?と言う史枝に「自動車だよ。2時間運転してクタクタだ」。ぎこちない二人。
会社どうしたの?と聞く史枝に「妻が救急車で運ばれたとウソついた」

 

包装した箱を差し出す幸之助。香港みやげ。

開けると薔薇の柄のスカーフ。
自分で選んだの? まあな

スカーフを首にかける史枝。
「史枝、俺にはお前が必要だよ」と手を握る幸之助。

「居なきゃ、困るよ」
そこに雷。思わず幸之助の肩に手をやる史枝。

 

東京の家。皆集まっている。帰宅した子供たちは、父親が迎えに行ったと聞いて喜ぶ。
子供らの「腹へった」という声を聞いて、食事の準備をしていなかった事に気付く女性陣。
うな重を取る事に(うな茂にも世話になったし)。帰宅する二人も入れたら10人前。自分が支払うのか、とビビる周造に、富子が自分がおごる、と言った。ヘソクリ?
今は亡くなった、作家だった富子の弟の著作権料が入って来る。通帳はスマホの指紋認証。

周造が悲観的な事ばかり言うので、離婚後の相談をしようという雰囲気に。
きつい事ばかり言う周造に、泣き出す富子。「だから同じ墓に入りたくないの・・・・」

 

雨も上がり、幸之助の車が帰って来る。
刺激してはいけないと言っていた周造がいきなり「史枝さんどうした?結局帰って来ないのか」
一緒だ、と幸之助。
続いて入って来た史枝。気まずいが、皆に促されて「ただいま」
有難うございましたと言う史枝に「お礼を言うのは幸之助」と富子。

 

成子には「もううんざりだ」と言った事の撤回。
そして庄太に「お前なんかに礼を言うのはイヤなんだけど・・・・」と言いかけて涙声に。
そこに届くうな重。「いいタイミング」

 

自分のアパートに帰る途中の庄太と憲子。
明日病院に行くと言う憲子。ナースなんだから当たり前じゃないか、と庄太。
職場ではなくて・・・・・もしかして?

 

 

感想

最近やった、2作目のTV放映はちょっとイマイチだったが、今回はフツーに楽しめた。
家事に奮闘する史枝の、ちょっとした油断で起きた事件。幸之助のネチネチした小物ぶりが秀逸。まあ、自分にも細かいところがあるから、もし同じ事が起きたら、労わる事が出来るかどうか、自信ない。

そして富子の口から、その状況が親子二代で続くものである事も暴露される。
男が生活費を渡すなんて、昭和の習慣。ウチは平成になった頃に、キャッシュカードをカミさんに渡したかな。

20年間溜め込んだストレスが、この事件で爆発した。それでも最初から行き先を憲子に告げていたのがカワイイ。

後は幸之助がどう折れるかが話のポイント。
そこでいい仕事をする庄太。
ピアノ調律師という知的な仕事のせいか、人格的にも一家の中で軸のような役目を持つ。
息子には、親のなれそめの話をし、幸之助には新婚当時の史枝の美しさを思い出させる。

 

史枝役の夏川結衣。結婚20年の、ちょっとくたびれた主婦を好演。20年前のTVドラマ「青い鳥」では本当に匂い立つようにキレイだった(ちょっと惚れていた・・・・)。
今はウエストの辺りが少し段になっていて、シルエットもちょっと悲しい事になっているが、そこらへんも含めて愛おしい。

今回エピソードの様な積み重ねが、シリーズ映画の厚みを増して行く事になる。

 

茂田井という地名が出たので、どの辺だろうと調べてみたら、軽井沢の少し西。都心からだと、2時間ではちょっと厳しいか(3時間は掛からないだろう)。

 

基本、寅さんのパターン。それほど深いものはなく、とんでもない感動を呼び起こす訳でもない。
だが2時間軽い笑いと、ちょっとホロっとした気持ちを楽しんで、微笑んで帰路につく。中にはこういうジャンルがあっていい。

 

そういう点で言うと、メインキャストは名前も職業も不変だが、毎回レギュラーで出る小林稔侍だけが名前、職業などのシチュエーションが毎回変わるのは、ちょっと違和感。
2作目なんか、血を吐いて死んじゃったし。大いなるマンネリを目指すなら、小林稔侍の配役も固定した方がいいと思う。