鉄男    1989年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

「探偵はバーにいる3」で新聞記者をやっていた田口トモロヲを見て「鉄男」を思い出した。


監督・脚本・美術・編集  塚本晋也
助監督・衣装        藤原 京
撮影                 塚本晋也
                    藤原  京
音楽                 石川 忠

キャスト
男                 田口トモロヲ
女                 藤原 京
眼鏡の女         叶岡 伸
やつ              塚本晋也
医者              六平直政
謎の浮浪者      石橋蓮司

 

予告編

 


オープニング
海獣シアター PRESENTS   -普通サイズの怪人シリーズ-

塚本晋也'S  FILM

 

工場で働く「やつ」。自分の部屋に戻る。部屋に散らばる金属クズ。
やつが自分の太ももにナイフを立て、そこに太いボルトを埋め込んだ。
その足に包帯を巻く。傷口からウジが沸いて出て、やつは叫んで外に飛び出し、走り回る。そこで車に撥ねられた。
昭和歌謡のテナー・サックス。
金網に貼り付けられた金属片の文字。「NEW WORLD」

 


製鉄所で踊る男。 タイトル 「TETSUO」 続いて 鉄男 のタイトル 男の背中が膨れる。

 

朝、洗面所でヒゲを剃る男。

左頬に付いているものを取ろうとすると、血が出る。
電話を受けている男。

相手は女。「もしもし」としか言わず、男も、もしもしを繰り返す。
そこで男が女とSEXをしている幻覚。

我に返った男に相手が「大丈夫?」「ああ・・」
「私あれから、あの事を思い出すんだけど。

変な気分になるの」「ああ・・・・」

 

場面変わって
スーツ姿で電車から走り出る男.左頬にはパッチ貼り。疲れてベンチに座り込む。本を読んでいた眼鏡の女が、逃げるように男からズレて座るが、床に落ちている金属の塊(煙を出している)に気付く。

中にはやつが居て動いていた。
ペンを出してそれを突ついた女。やつの叫び。

男が落ち着いて眼鏡女を見ると、彼女の左手に先の金属塊が貼り付いて、右手のペンでそれを突いている。

眼鏡女の眉間が変形し始めている。
あわててそこを立ち去る男.だが眼鏡女は追って来る。

駅構内から地下道に入ったが、まだ追って来る。
行き止まりのトイレに逃げ込む男。上から襲って来る眼鏡女の顔にペンを突き刺す男。
眼鏡女が一瞬ひるんだ隙にトイレから逃げ出すが、すぐに追い付かれ、殴る蹴る、でボコボコにされる。

そしてとどめに、機械と一体になった眼鏡女の左手が男の顔に。

 

町工場の自宅に逃げ戻った男だが、眼鏡女はなおも迫って来る。

さあ来い!と言って挑発する眼鏡女。
反撃した男は、眼鏡女の中に居るやつに攻撃を加えた。

倒れる眼鏡女。
体をケイレンさせながら二階に上がる男。体内で変化が起き始める。
右手がこわばり、袖をめくると腕が金属化し始めている。

右足のくるぶしも、靴下の裂け目を剥がすと金属が見える。
機械化された足で町中を走り回る男。部屋に戻ると、倒れた筈の眼鏡女が水着姿で踊っている。腹から1メートル以上の太い管が出て、くねっている。その頭は蛇のようだ。
四つん這いで動けない男。眼鏡女は男の顔を舐め回し、その蛇の頭を男の尻に突っ込む。激しく動く管に男は悶絶し「NO!」。

 

 

部屋で目覚める男。目を覚ますため、洗面所で水道の水をかぶる。左頬の傷は更に広がっていた。
男と同居している女。「大丈夫?」との問いに「ああ・・・」

女と激しくSEXする男。男が絶頂に達した時、女が「痛い!」と言って逃げた。
フライパンで何かを焼いて女に食べさせる男。フォークでそれを食べさせた時、男に衝撃が走る。次にやった時も。

女がフォークを咥えた時に感じる不快感。
次にウィンナーを出した時、女はそれを舐め始める、金属音がして不快になる男。女がウィンナーを咥えた時、再度男に衝撃が走る。

 

再び男が女と抱き合った時、異様な感覚に目覚める。そして男のペニスが金属化してドリルの様に回転を始める。

 

 

その上、シャツの下で肉体がボコ、ボコと動き始める。

たまらずトイレに逃げ込む男.
女がそこを開けようとすると「お願いだから開けないでくれ」。
それを無視してなおも開けようとする女「たいていの事には驚かないから」。
男は「バチが当たったんだ」と嘆く。女がむりやり戸を開けて、被っている布を外すと、顔の半分が金属クズで覆われた男の顔が。
叫ぶ女。男は女を追う。女は熱したフライパンで男の顔を焼くが、更に逆上させただけ。女に馬乗りになった時、女が男のノドに包丁を突き立てた。

男を刺しながらも抱き付いて愛撫している女。恍惚とする男.

 

 

男が気付くと、女は動かなくなっており、血を吐いて倒れた。

男の、ペニスのドリルで下腹部をかき回されて女は絶命していた。
自分の体を湯船に沈める男.体の金属化が次第に進んでいる。

医者のところに行った男。
「一体どうなってんだ。信じられないよ」

「よくそんな体でここまで来れたな」
「脳に金属が突き刺さっているんだよ、どうして生きられるんだ」
「きっと、芸術的な刺さり方をしているんだろうな」

「引き抜けば即死だな」

 

中では女が再び蘇えり男と格闘、女を倒すと電話がかかってくる。
「全部知っていますよ」「鋼鉄のケダモノ!」そして繰り返される、車が角を曲がって迫って来る映像。
倒れている男の前で、車のドアを開けて「大丈夫ですか?」と言ったのは男自身。女連れだった男は、その撥ねた相手を山に捨てたのだった。罪を逃れるように、その場で女とSEXする男。
「こっちを見てる。こっちを見てるよ・・・」
男は、これが撥ねられた「やつ」の報復だと理解する。

 

目覚めて、街を走り回るやつ。
男の元に来たやつ。外の水道に手をかけると水道管が凍結し、地下を通って凍結が進んで行く。それが男まで届く。

「久しぶりです。もうすぐアナタは脳まで金属になる。おみやげに面白いものを見せましょう。NEW WORLDだ」
見せられた場所。荒涼とした所に金属化した胞子が密生している。

逃げる男.それを追うやつ。

 

ヒゲの浮浪者が現れる。鉄の棒でやつをビシバシ殴る。やめろー!

気付くと大きな工場で倒れていた男。外を見るとやつの姿。工場を稼働させてどんどん男を追い詰めて行く。

 

いつの間にか男は巨大化した体の腹部に、一部分として存在していた。近づいて来るやつ。

「この体中の赤サビが見えますか。最初に体に組み込んだ金属棒は、細胞と同化する前に、傷口で錆び始めました」。
「貴方が初めに触れたシェーバーは、それはキレイなもんだった」
「最後だ、ざまあみろ。その体でいつまでも生きやがれーー」

やられようとした直前、男が体からワイヤーを出してやつを絡め、取り込んだ。
金属の中で対峙するやつと男。再び金属片の文字「NEW WORLD」。

 

 

巨大ロボット化した鉄クズ。それに取り込まれた二人は顔だけ出している。

男「ああ、とってもいい気分だ・・・」
やつ「よーし、こうなったら世界中を、鋼鉄の塊にしちまおうか」「ああ・・・」

「そして、世界中を錆び腐らせて、宇宙のもくずに返してやろうか」「面白いなーー」
「さあ、俺たちの愛情で、世界中を燃え上がらせてやるぜーー」
「やりまくるゾーーーー!」

街を走り出す巨大ロボット。

 

 

感想
20年ほど前にレンタルビデオで借りて観た。今回YouTubeで拾ってみたら2件ほど出て来たので視聴。
男が次第に、金属と同化して行く話だとは判っていたが、今回観返してみて「へー、こんな話だったんだ」とびっくり。

 

体に金属を埋め込んで同化しようとしていた「やつ」が男の車に撥ねられて、その報復に動く。だが結局二人は金属を介して同化してしまう、という事。

とんでもないけど、同性愛が描けている・・・・んだろうな。


映画として考えれば、かなり稚拙と言わざるを得ない。だが、ややもすればかわいく写ってしまう「コマ送り手法」を、もっとざっくり荒っぽくする事で、独特の効果を出している。
また時々、ドキっとするような場面もあって、この監督の非凡さが感じられる。

 

しかしペニスの金属化(それもドリル化)には恐れ入った。
また白黒だからまだ見られるけど、カラーだったらすげぇだろう。

当時みんな20代。まさに若いからこそやれた。


ヘタなレビュー読むより観るのが一番(いつまで公開かの保証はない・・・)

 

『鉄男』はいかにして生まれたか?

 

 

この監督さん、こっちの人(山本晋也)と間違えられ易い・・・