監督 降旗康男
原作 向田邦子
キャスト
門倉修造 - 高倉健
水田たみ - 富司純子
水田仙吉 - 板東英二
水田さと子 - 富田靖子
まり奴 - 山口美江
石川義彦 - 真木蔵人
旅館の番頭 - 大滝秀治
見知らぬ男 - 三木のり平
門倉君子 - 宮本信子
解説(Yahoo-映画より)
向田邦子の同名小説を「居酒屋兆治」「夜叉」の降旗康男監督が映画化。主演は高倉健と17年ぶりにスクリーンにカムバックした富司純子。昭和初期の東京・山の手を舞台に、中年実業家の男の友情とその妻への秘めた思いを描く人情ドラマ。昭和12年春。中小企業の社長・門倉修造は、会社勤めのまじめなサラリーマン水田仙吉とは気が合い20年来の付き合いだった。その水田が地方転勤から3年半ぶりに東京に戻ってきたため、再び門倉と水田一家の家族ぐるみの付き合いが始まった。
感想
この「あ・うん」は元々1980年のNHKドラマとして発表されたもの(詳細はこちら )。オリジナルでは門倉が杉浦直樹、水田がフランキー堺であり、各人の特性が良く活きた、上質なドラマとしての記憶がある。
今回の映画版で一番違うのが、たみの位置付け。誰もがあこがれる美人としての説得力は映画版の方が上。また門倉についても、高倉健が演じることで、かなり印象が変わった。
水田役の坂東英二は、セリフ棒読み的な部分もあるが、気弱ながらもそれなりのプライドを持つサラリーマンを好演している。
物語としては、戦友だった二人の男の友情を扱ったものだが、門倉がたみに好意を持っている事を知りながら、水田がその交友を続けるという点が共感し辛い(でもそこが一番のテーマ)。
方や事業で成功した者、他方は一介のサラリーマンという事で、つきあい上のアンバランスを生じるが、その費用差は全て門倉が埋め合わせて交友が維持されている。長いつきあいの中で娘のさと子は門倉に対して「おじさま」と全幅の信頼を寄せている。
門倉がたまたま連れて行った座敷で水田はそこの芸妓「まり奴」に心を奪われてしまい、給料の前借りまでして入れ込む。それを回避するため、門倉がまり奴を引かせて囲う。その事を知り憤慨する水田。真意が判ってもらえずたみにまで苦情を言われ苦しむ門倉。
たみを忘れるために宴席でわざと水田を「顔が卑しくなった」と罵り、水田の方から絶交を言わせた門倉。しばらくその状態が続いた後、水田の娘さと子の件がきっかけで絶交は解ける。
映画では「あ・うん」の意味について、さと子の交際相手の石川が二人を「狛犬みたいだ」と言うところで表現しているが、TVドラマではちょっと違っていたはず。ただ映画サイズにそぎ落とした関係で、まあ止むを得ないところか。
杉浦直樹の門倉では、独特のねっちりした雰囲気がなんとも微妙だったが、健さんの門倉は、表面上は好人物だけど、本心のところでの恐ろしさという部分で、いいキャスティング。でも時々健さんの顔が杉浦直樹に見えたので、顔立ち自体はかなり近いのだろう。
富司純子のたみは申し分なし。こちらも任侠もので健さんと競演した時とは全く違う設定であり、改めてヤクザ映画を観返したくなった。