「荒神」(7) 作 宮部みゆき 画 こうの史代
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(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)終章 オマケ
感想
いよいよ終盤に向けて緊張が高まる。今までのキャストが勢揃いで、ややごちゃごちゃした印象がある。
ここはある程度登場人物を絞り込むべきだろう。
弾正の部下の中にも、あまりのひどさに朱音たちに助力する者たちが出て、最後の作戦を支えている。
この辺りはとても共感出来る。
ただ、朱音と市ノ介(弾正)があやまちを犯したというくだりは、何か取って付けた様な感じ。
実の兄妹でそういう感情が起こるのか。
ありそうにないからドラマチックだと言ってホイホイ採用してしまう安易さが、主婦作家の限界なのかなー。
このエピソードのおかげで、ドラマの質かずいぶん落ちた印象がある(まあ、アップしたと思う人も居るだろうけど・・・・・)
最後の半月、どんな結末を見せてくれるのかな?
あらすじ
第五章 荒神 362~386(3/19~4/12)
僧坊に捕らえられている直弥、金次郎、園秀、宗栄、源じい。
彼らはみな数珠つなぎになって縛られていた。
そんな時、天井から声が。伊吉の姿を見て驚く直弥。
お前は間者か、と問う宗栄。
事情を知っているなら助けてくれと伊吉に頼む。
伊吉は天井から降り立ち、捕われた者たちの縄を解いた。
逃がす者と縛ったふりで留まる者の二手に分かれる事を提案する宗栄。
園秀が絵馬のことで伊吉に詰問する。
あの奉納絵馬には生薬の調剤方法が記してあったという。「かんどり」そっくりの症状を起こす事が出来る毒薬。だが伊吉が言うには、絵馬はとうの昔に家老の柏原信右衛門が持ち出した。
六角堂を破壊したのは別の間者。伊吉が返り討ちにしたという。
ぶら下げられている蓑吉のところへ伊吉が戻り、縛ったままの蓑吉を引き上げて餅を食わせた。
本堂と僧坊の様子を話して聞かせる伊吉。
下を見ると、弾正が姿を現し、部下たちに戦備の支度を指図していた。
「あんなの、何にもならねえ」とつぶやく蓑吉。
弾正の奥方を助けたいなら、厩に居ると教えて伊吉は去った。
いつのまにか蓑吉の縄は解けていた。
厩の方に用心しながら近づいて言った時、蓑吉は不意に首根っこをつかまれた。
それはやじだった。驚く蓑吉。だがその匂いからやじが女である事をすぐに見抜く。閉口するやじ。
僧坊に残った宗栄、直弥、園秀、源じいの四人。
源じいが縄を解き、部屋を出ようとした時、弾正の副官がそこに立っていた。手には源じいの鉄砲と直弥の両刀。
副官は彼らを逃がすつもりだった。
副官に音羽の事を問いつめる宗栄。副官は園秀に「お台様がお呼びだ」と言って引き連れて行く。宗栄も無理やりついて行く。
厩の隅までたどり着くと、音羽を庇って座っている朱音が。
朱音は音羽を副官に託すと宗栄と園秀を隣の間に移り、今までの話を全て二人に聞かせた。
そして、和尚の呪文を自分の背中に写す様、園秀に迫った。
正気なのかと気色ばむ宗栄。
穏やかに朱音は語る。兄も自分も罪人なのだと言う。
市ノ介と朱音が十六の時、市ノ介は養家を出奔する前に朱音の元へ。
今生の別れとの思いから、朱音は兄に押し流され、間違いを犯してしまった。
宗栄は、あの怪物が弾正と朱音の子だと悟る。
筋は通っていないが、抗弁する言葉がない。
園秀は人が変わった様になり、朱音の願いを引き受けると言った。
自制が切れ、朱音を抱きしめる宗栄。
自分が香山の地を訪れた理由を語る宗栄。
朱音が宗栄に願い事をする。もし自分が「つちみかどさま」とひとつになったら、必ず倒してくれと。承知する宗栄。
左平次が和尚を背負って到着した。やじが女だと判明。
本堂の屋根の上の蓑吉。そこへ音もなく並ぶやじ。
事が始まってからの手筈を蓑吉に指示。
弾正の声がした。本堂から出て来たのだ。三十名ほどの武装集団だが、とても怪物に太刀打ち出来るとは思えない。
怪物を呼び寄せる手順により、鐘楼が鳴り始めた。
再び現れた怪物。真っ黒な影が動く。
そこへ部下二名がそれぞれ、和尚は担ぎ、打ち掛けをすっぽり被せた音羽は引っ立てて鐘楼の方へ進んで行った。