「七夜物語」(3) 作:川上弘美 挿絵:酒井駒子
感想
まあ、こういうアクション・シーンが連続していると、それなりに高揚感があって楽しいものだ。
かつてのアストロ球団とか(って古すぎ)ドラゴンボールとか。
自分自身と戦わなくてはならないジレンマ。
冷酷になり切れず負けようとするその時に現れたチビエンピツ。
そしてチビエンピツの死と引き換えに夜の闇が開かれた。
この小説もあと少しで終わり(5/6まで)
主人公はさよ。
だが後で出て来た仄田くんの成長の物語でもある。
2人で夢の世界を共有するという新しいシチュエーションの与え方はそれなりに魅力的だったが、いかんせん途中のグリグレルとのやりとりが冗長すぎて貴重な読者(自分も含めて)を失ってしまったのは惜しい。
もっとファンタジー性を前面に出して、尺も少し短くしたら良かったのに。
まとめに入るのはまだ早いか。後は最終回を読んでから。
あらすじ
No.547~567(3/27~4/14)
光の2人の攻撃は続く。影の中の女の子は、さよたちが生きていると困るのだと言う。次には光と影が同時に襲いかかる。
さよたちは彼らから少し遠ざかり、再度話し合いを試みる。
彼らは2人をめざわりだと言う。
何でも許し、なんでもまぜこぜ。
混沌はだめだという。
さよが、私たちの事がいやなのは判ったからそっとしておいてと言うと、光と影は強く反応。2人がここに居るだけで元の悪い世界に戻す力があるという。
仄田くんが、僕も能率が悪い事は嫌いだと反論すると、彼らはチビエンピツやグリグレルの話を出して彼を否定。
そしてまた決裂。光の攻撃が始まる。
僕たちも戦おう、と仄田クンとさよは影に体当たりしていく。
だが彼らを攻撃するとさよたちも同じ所に痛みを受けてしまう。
それは相手が影の場合も光の場合も同じだった。
次第に衰弱して行く2人。
最後のどたんばで仄田くんは光の女の子の方を軽く突き飛ばしてさよに様子を聞く。さよは何ともない。今まで同性の相手を攻撃していたから自分に跳ね返っていたのだ。
反撃の糸口を掴んでから、2人は大いに善戦したが、冷酷無残に相手をやっつけることが出来ない。
どうしても手加減してしまう。
さよと仄田くんの戦いは、彼らの負けをもって終わろうとしていた。
ぼんやりと横たわる2人の前に今まで出会ったさまざまな人、モノ、動物らが現れては消える。
美しい音楽だけが残り、さよと仄田くんの体に次第に力が戻って来る。
ほの青い光の中に現れた南生と麦子。
高校生の彼らはかつてさよと仄田くんに口笛を教えてくれたのだった。
麦子らも子供の頃にこの世界を訪れていた。
そして去って行く2人。
さよたちの意識も遠のいていった。
そこに現れたチビエンピツ。もともとは仄田くんの持ち物であり、ウバたちとの戦いの中で心を通わせた仲だった。
消えてしまうことに、おおいに抗議するチビエンピツ。
チビエンピツが足を踏み鳴らすたびに元気を取り戻すさよたち。
光と影はチビエンピツに攻撃を仕掛ける。
それをかばい立ち向かう仄田くん。
だが次の光の攻撃でチビエンピツが折られてしまった。
チビエンピツを横たえ、さよと仄田くんは手をつないで光の方へ向かう。
大いなる光が満ち、やがて2人の姿が消える。
夜の世界をくまなく照らす大いなる光。
光と影の子供たちはいずれもむき出しになってしまい、そしてフッと消えた。
第七章終わり
