今日は、とある大学からの作品調査受入れ。

担当は、保存担当の学芸員である塚本君。

でも、展示場の壁にある作品を、降ろして、戻しての作業には、もう一人いるので、そのお手伝い。

 

それから午前中は、アテンダント・スタッフさんの全体会。

こちらは社会連携課の竹本さん、寺元さんにほぼお任せだが、ずっと立ち合い。

 

アテンダント・スタッフさんは、40人ほどが活動してくださっているが、未就学児童から大学までの、学校団体受入れには欠かせない力。

でも、この状況下で学生団体の受け入れもないし、なにより、来館者のアテンダントをするスタッフという役割ゆえに、活動機会が激減。

でも、メールでの連絡だけでは行き届かないこともあるし、館として皆さんに状況をしっかり伝えるための全体会開催。

もっとも、休館日ゆえに展示場を使って密にならないように月曜日開催としたため、仕事があって参加できない方も多い。

結局、17名が集合+リモート4名。

 

 

みなさん、久しぶりに顔をあわせ、そして展示場で作品があると、つい複数人で作品の前に行ってしげしげと眺めるという時間になる。

ともかく密だけは回避。

でも、みなさんがこの美術館を愛し、そして小さな観客たちを受け入れられない状況を悔やんでいるのが、ひしひしと伝わる。

 

 

小さな観客と言えば、寺元静香さんが、FBで、およそ1年前のことを振り返った投稿をして、それがとてもよい内容で、思わぬ方からもお褒めのリアクションをいただいていた。

 

ちなみに、その1年前の投稿。

本人には、FBのシャアを了解してもらったが、そもそもシェアできない設定になっていたので、こちらでご紹介。

 

すごいよね!

こんな場を作ってしまえる力(オジサンには、この起爆力はない。)

 

早く、こうした光景がリアルに生み出し続けられる日が来ますように。

 

 

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寺元静香

 

今日は担当園の子どもたちとお話作り。

子どもたちの"これがいい"

満場一致でフォンタナ≪空間概念―期待≫でお話を作ることになりました。

ルチオ・フォンタナ≪空間概念―期待≫

赤く塗り込めたキャンヴァスに、軽やかな曲線をえがく三筋の切れ目が入れられている作品。

まずは色を観察。

たまたま、私、赤いセータを着ていたので

「見て見て、私にも赤があったよ。みんなには赤がある?」

自分のからだから赤を探すことをしてみました。

ジャンバー、ズボン、トレーナー、靴下、靴の線、ハンカチの縁。

「わたし、赤がないよう。」

「この可愛い赤い頬っぺたがあるよ。」

(照れて、笑う)

みんな、自分の持つ赤色に大満足。

そうして、色んなところを観察して、話し合い、笑い転げて楽しいお話が出来ました。

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これは、ある夜の動物園での出来事です。

お客さんが帰ったあと、飼育員の皆でパーティーをすることになりました。

皆それぞれ自分のリュックサックの中にあるものを取り出して、真っ白の机の上にのせていきます。

唐辛子、いちごジュース、赤い絵の具、すいか、りんごの皮、口紅、そしてお鍋いっぱいのトマトジュース。どれも赤いものばかり。どんなパーティーになるのでしょう?

楽しそうな飼育員の様子に気づいた動物たちは、そっと扉の向こうで眺めています。動物たちはヒソヒソと話し合っています。どうやら、飼育員たちのパーティーに乱入するつもり。

せーの!ドン!

動物たちは勢いよく、真っ白のテーブルの上にジャンプして乗りました。

すると、テーブルの上にあった、唐辛子、いちごジュース、赤い絵の具、すいか... 赤いものたちが一斉にひっくり返り、真っ白のテーブルは、真っ赤になりました。

そして、電球が落ちて、真っ赤になったテーブルに火が!

ボウボウと燃え始めて、本当に真っ赤になっていきました。

すると、騒ぎを知った動物園の象が、のそのそと急いで、パオ~ンと鼻から水を出し、赤い炎を消していきました。

(フォンタナ左隣に展示されるクライン≪無題―惑星レリーフRP10≫の青色から想像。)

火が消えて、黒く焦げたところが増えていきます。やがて、真っ赤になったテーブルは、黒く、黒く焦げてしまいました。

(フォンタナ右隣に展示されるロスコ≪無題 緑の上の緑≫の黒から想像。)

動物園は、焦げた匂いでいっぱいになりました。

そうして、動物園は、こげくさ動物園と呼ばれるようになり、お客さんは減り、動物たちも、違う動物園へと引っ越しをしていきました。

動物たちは、カラフルなお家が並ぶ街の中にある動物園や(フンデルドワッサー)、ピカピカ黄色に光る動物園(カステラーニ)、紫色の四角の形をした動物園(ヴァザルリ)、そして綺麗なお花が揺れる動物園(ライリー)へと歩き回りました。

だけどもやっぱり、動物たちは、焦げ臭くなった動物園のことが忘れられず、こげくさ動物園に戻って、また動物園を皆で作ることにしました。

また、楽しい動物園を作ってね。

おしまい。

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このお話は、フォンタナの作品だけではなく、私たちが居た空間(展示室)にある作品がいくつも登場します。空間全体を使った、お話づくりが出来たのははじめて、楽しかったな。

フォンタナの赤は、クラインの青によって、赤が消え、黒が増えて、ロスコになる。

こんな風に作品鑑賞をたのしむのは、私もはじめてでした。