※11月から永山源太郎が連載中の山口新聞、コラムコーナー「東流西流」第4回記事で書いた原稿です。
第四回 「敬愛する映画監督」
敬愛する映画監督にリチャード・リンクレイターという人がいる。
彼は時間を映し出す作家だ。
彼の作家性が最も出た作品が「6才のボクが、大人になるまで。」
という映画だろう。
六才の少年が十八才になるまでを、実際に十二年間をかけ同じ役者で撮影した。
毎年夏に数日間集まり撮影を積み重ね、
俳優の実生活で起きたことを物語に組み込みながら毎年脚本を更新していった。
何気ない十二年間の日常を描く本作だが、
身体的にも精神的にも劇映画とは思えないリアルさで主人公が成長していく。
この撮影方法なら当然だ。
この映画を観た時に「日本酒的な映画だな」と感じた。
日本酒に長期熟成酒というジャンルがあるがこれに近い。
お酒は熟成を経るごとに変化する。
色は黄金色に、香りはメイプルのような熟成香が出現。
味わいも円熟味を増しまろやかになっていく。
我が蔵にある長期熟成酒には四十五年間貯蔵した「老猿1975」という商品がある。
時間はお金で買えない。時間を経ることでしかこのお酒の味わいも、この映画のリアルさも生み出されない。
効率を求められる現代社会とは逆行するが、とてもロマンティックなことだと私は思う。
昨年、長期熟成用にタンク一本分お酒を仕込んだ。五十年熟成を目指している。
どんな熟成を遂げるのか人生をかけ見守っていきたい。
2020年11月24日
山口新聞掲載
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