ESG投資、金融・経済関連の情報や書評など -779ページ目

経済見通しの読み方・・・盛り上がらない理由とポイント

毎年年末に、第三四半期のGDP統計が発表されると、各経済機関が経済見通しを発表して、さながらコンテストのような様相になっていたのは、いつまでの頃であったであろうか。


もちろん、日経新聞は恒例記事として取り上げてはいるものの、いまいち盛り上がっていないと感じるのは、3-5%成長を長く経験した世代のノスタルジーの混ざり合った郷愁であろうか


たとえば、1月3日の日経によれば、15人のエコノミストが予測する実質経済成長率は、10年度3.3%、11年度1.2%だ。12月22日に発表された政府の経済見通しは、10年度3.1%、11年度1.5%(名目成長率は1.0%)だ。民間の予測とほとんど変わらない。


そもそも予測数値の幅が狭いし、もっと大事なことは、実質成長率が名目成長率よりも高い=「名実逆転」が解消しないことだ。デフレ状態からの脱出の展望が見えない中で、実質成長率の予想値が0.2%や0.3%程度違っていても、そのインパクトは小さいのである。


さらに成長の原動力が、外需であることも、経済見通しの面白さを半減させている。外需=中国、インドなど新興国の成長の力強さに依存しているとなると、国内要因の分析の重みも軽くなってしまう。


ということで、例年になく、論争点の少ない「経済見通し」であった。

以上


中国の経済・金融の絶好の教科書

中国の存在が経済面でも金融面でも、もはや無視できないというレベルを超えて、まずは分析の最重要課題になったことは、誰も否定できない事実であろう。


特に、リーマンショツク以降において、グローバル経済・金融体制の旧秩序がガタガタになっている状況ではなおさらである。かつては、米国とEUをおさえておけば、経済でも金融でも大きくシナリオを外すことはなかったが・・・・


そこで中国に関する基本的な事項や情報分析のポイントを教えてくれる本はないかと思って探すと、これが意外にないのである。もともと、毀誉褒貶を超えて極論が多いのが、中国論である。


そんな中、こうしたニーズに正面から応えてくれる図書が出版された。


「チャイナ・インパクト」 柴田 聡著 中央公論新社 2010年10月刊 本体1800円


である。本書を読めば、リーマンショック以降の中国の政策対応を追いながら、そもそも経済・金融の基本的構造と政策決定の仕組みがどうなっているか、頭に入れることができる。


素人にとって特に判りにくいのが、中国発のどのような筋の情報を信頼したら良いのか、政府・共産党内部の権力関係がどのようになっているかだが、本書では客観的にかつ日本との対比を踏まえて平易に解説してくれている。


また、マスコミが流す情報の取捨選択にも、われわれは慣れていないのだが、この観点からも、過去の事例を具体的に挙げて、「マスコミはこうした憶測記事を書いていたが、実際には・・・」と解説してくれているので、親切この上ない。


中国経済・金融にかんする基本構造を本書によってしっかり掴んだうえで、さらに今後の新たな展開についての情報を追加していけば、「中国の経済・金融教科書」として活用することができるだろう。


久しぶりに、自分のおカネを出してもいいと思える良書に巡り合えた。


なお、著者は財務省職員であり、2008年6月からは在中国日本国大使館経済部参事官である。





金融機関のCSR

金融機関のCSRというと、先進的に取り組んできたグローバル製造業と比較すると、遅れているというイメージがある。


ただ、3メガバンクをはじめとして、多くの金融機関がCSR報告書を公表している。さらに全国銀行協会(全銀協)のホームページをみると、CSRレポートを公表。様々な側面から、銀行のCSR活動や論評を掲載している。


http://www.zenginkyo.or.jp/news/2010/11/16153000.html


最新号では、日本総研の足達英一郎さんが「金融機関と生物多様性」について寄稿し、その他の活動も具体的なものになっている。


金融機関のCSR活動の全体像をつかむには、SIF-J(社会的責任投資フォーラム)のSRI年報2009年版の「第6章金融機関のCSRの取り組み」が参考となるだろう。2009年3月に金融庁が実施した「金融機関のCSRの実態調査結果」を材料に分析している。


http://www.sifjapan.org/document/nenpo09_jp.pdf


また、メガバンクのCSR活動の最新動向については、月刊金融ジャーナルの2010年10月号の特集「新たな展開に入ったCSR」が参考になるであろう。


以上