OECDのレポートをSRI専門情報機関も報道
Responsible Investor というメルマガは、2011年1月14日号で、
「OECD calls on Japan’s giant Government pension fund to integrate ESG」
Report suggests world’s largest asset pool should sign up to UN PRI
とのタイトルで、この報告書を紹介している。かなりのインパクトのある記事のように思える。
興味のある向きは、下記にアクセスされたい。
http://www.responsible-investor.com/home/article/oecd_calls_on_japans_fund_to_integrate_esg/
(参考)
なお、OECD報告書の正式名称は下記の通りである。
OECD/Fiona Stewart and Juan Yermo (2010), “Options to improve the governance and investment of Japan’s government pension investment fund”, OECD Working Papers on Finance,Insurance and Private Pensions No. 2010/6, www.oecd.org/daf/fin
以上
SRIをGPIFは採用すべきか その3
その2からの続きである。
<この提案をどう読むべきか>
この提案の部分は、本論ではないだけに、なぜGPIFがESGの要素を考慮しなければならないのか、はたまた、PRIに署名しなければならないのか、十分に判りやすい論証がされているとは言い難い。
想像するに、前段部分でやや抽象的で分かりにくい表現だが、GPIFが「国際的多様化の価値・・・について一層認識を高めていかなければならない」とあるのが、その根拠だと思われる。
実際、公的年金の世界では、カナダやフランス、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンなどがPRIに署名しているので、そうした観点からは、そうした価値観を「GPIFも共有すべき=署名機関になる」ことができるとしているものと思われる。
また、報告書末尾の注釈で、次のような記述もある。
注:OECDは社会的責任投資(SRI)を直接的に奨励するものではないが、そうした投資スタンスは、日本政府がアフリカなどの地域への海外投資を増やすという目標達成に寄与するものである。
<組織としての公式見解でなくても意義は大きい>
この報告書の著者のフィオナ・スチュワートとフアン・イエルモは、OECD金融・企業局金融課の統括責任者であるが、
報告書冒頭の注意書きのところで、「本稿で表明されている見解は、OECD理事会が承認した勧告やOECDの委員会によって支持されているその他の調査分析などに依拠しているものの、著者自身のものであり、必ずしもOECDや加盟国政府の見解を反映したものではない。
特に、日本政府は、本稿で取り扱われている問題は依然として検討中であるとして、本稿への一切のコメントを差し控えた」とあるが、OECDの公式文書にこの主旨が盛り込まれた意義は大きいものと思われる。
以上
SRIをGPIFは採用すべきか その2
<OECDがGPIFに関して報告書を公表した経緯>
このテーマを論じようとしていたら、OECDが「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス及び資産運用方針改善案」(フィオナ・スチュアート&フアン・イエルモ共著)というレポートを公表していることが判った。2010年12月のことである。
このレポートは、年金積立金管理運用独立行政法人の運営に関する検討会の2010年11月5日会合で、山崎養世氏が提出したものである。当日の議事録要旨を見ると(厚生労働省のホームページで公表)、
「GPIFの在り方については、公的な第三者の意見を聴く必要がある。日本政府はOECDに加盟し、OECDのガイドラインは日本も批准しているということで、OECDにGPIFの評価を依頼。日本の公的年金の運用の在り方について、国際的な機関からレビューを受けるのは初めての試みだろう」(以上引用)
とあり、同レポートの内容を山崎氏が紹介しつつ、論点を整理したようである。
我々が注目するのは、ガバナンスよりも、GPIFがESGを考慮した投資に踏み切るべきであるとしていることと、UNEP-FIが提唱するPRIに署名することを示唆していることである。
<SRIに関する部分の前提と示唆>
(以下は報告書からの引用である)
「GPIF のより一層の多様化は少なくとも考慮されるべきである。Mitchell が要約しているように、「国が成長するにつれ、高齢社会への約束の形で義務への認識が高まる。
これは世界的規模での株の収益と、資金が枯渇するシステムのリスクとのトレード・オフに関し、より洗練された方法の必要性も引き起こす。要するに、公的に運営されている基金の受託者はより良い運用成績の理論的根拠、国際的多様性の価値及びより積極的運用の機会費用について一層認識を高めていかなければならない」。(同報告日本語版P25-26)
「本稿の目的は、GPIFの資産運用方針立案のための具体的な提案を行うことではないが、ガバナンスが改善された暁に考量すべき事項として、以下の諸点がある。」⇒全部で4つ掲げているが、その4番目として(要旨と本文P29)
(4)運用方針は、GPIFが国内経済及び金融安定性に及ぼす影響の可能性を考慮し、環境、社会及びコーポレートガバナンス(ESG)の要素を含むべきである。GPIFf国連の責任投資原則の署名機関になることができよう。
(以上引用終わり)