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「インドの正体」

インドの正体 「未来の大国」の嘘と実

伊藤融 中央公論新社 2023年4月刊

 

インドの存在感が政治的にも経済的にも際立ってきたなかで

一般向けに書かれた書である。

 

 

著者は以下の略歴を持つ。

 

1969年広島県生まれ。防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授。

中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程後期単位取得退学、

博士(学術)。在インド日本国大使館専門調査員、島根大学法文学部准教授等

を経て2009年より防衛大学校に勤務し、21年より現職。(アマゾン書評より引用)

 

著者の分析では、インドが過大評価されたり、過小評価されたりする

独特の存在感に疑問を呈する。

 

確かに、インドは米国・豪州・日本などとクアッドに参加する一方で

ロシアとは協力的な関係を維持する独特な立ち位置を持つ。

 

しかも、経済成長のスピードと人口の絶対数と増加率を誇るので

潜在的な力はおそらく最も強力なのであろう。

 

だからこそ、関心も高まるが、著者はインドの明と暗を率直に分析して

いる。世界最大の民主主義国であると同時に、内政では、差別や分断

などの問題も同時に抱える。

 

そんな複雑な性格をもつなかで、公正な評価は難しいと思うが、

著者はいずれにも偏らずに、平易な語り口でインドを語る。

一般向けのインド解説本がなかったがゆえに、本書が注目され、

数多くの読者を獲得しているのだと思う。

 

好著である。

 

 

 

 

桜井昌司さんの無念

昭和42年に茨城県の布川で起きた殺人事件の被告とされ、

無期懲役の判決を受け、44年後に再審決定がなされ無罪が

確定した桜井昌司さんがガンのため逝去された。(76歳)

 

再審法の改正を目指す運動の先頭に立ち、同じくえん罪と

される袴田巖さんや石川一雄さんと「獄友」として、

警察・検察の不当な取り調べやでっち上げを告発してこられた。

 

心からご冥福をお祈りしたい。

 

「布川事件」再審で無罪確定の桜井昌司さん 死去 76歳|NHK 茨城県のニュース

「応援消費」社会を動かす力

応援消費 社会を動かす力

水越康介

岩波新書 2022年7月刊

 

著者は神戸大学経営学部卒業後、神戸大学大学院博士後期課程を

終了している学者で、現在は東京都立大学経済経営学部教授である。

 

著者によれば、「応援消費」という言葉が市民権を得てきたことを

指摘し、その象徴が日経MJヒット商品番付で東の大関にもなった。

(2020年上半期)

 

その後、ますますこの傾向は強まっていることは、著者のサーベイでも

明らかである。

 

本書を評価するのはとても難しい。

率直に言うと、岩波新書というスタイルで本書が取り上げた

「応援消費」「寄付とボランティア」「世界における応援消費」に

及ぶ。

 

ボイコットとバイコットという概念は、CSR論を学び始めた際に

知ってはいたし、ボランティアやNPO論などもなじんでいた。

 

であるが故に、著者の展開は意外ではなかった。ただ、申し訳ない

言い方であるが、「煮え切らない材料」をあたかも大学院生が

無理やり論文にしているような感があり、ついていくことはでき

なかった。

 

読み手の問題か、著者の構想力の問題かの判定は、書評読者に

おまかせするが、岩波新書という性格からすれば、もっとかみ砕いて

素人に近い人にも共感を得る形にするか、学者の論文としても

 

通用するようにさせるかを明瞭にしないと、書籍の企画としては

失敗であろう。