陳寿を信じれば魏志倭人伝に「謎」はなくなる!? | 邪馬台国と日本書紀の界隈

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邪馬台国・魏志倭人伝の周辺と、まったく新しい紀年復元法による日本書紀研究についてぼちぼちと綴っています。

 

 私の邪馬台国論の根幹をなすのは、魏志倭人伝後世書き換え説です。

 

 魏志倭人伝の行程記事は、帯方郡から不彌国までは里数が書かれていますが、不彌国から投馬国への行程と投馬国から邪馬台国への行程は日数で書かれています。

 

(不彌国から投馬国)

南至投馬国水行二十日官曰彌彌副曰彌彌那利可五万余戸

 

(投馬国から邪馬台国)

南至邪馬台国女王之所都水行十日陸行一月官有伊支馬次曰彌馬升次曰彌馬獲支次曰奴佳鞮可七万余戸

 

 里数は、尺度はともかくとして、万人が共通認識を持つことのできる具体的なものです。

 しかし、行程記事における日数は、とてもあいまいで抽象的なものです。1日で30里しか進めない人もいれば、50里進む人や100里進む人もいるからです。算定基準を明確に定めて里数に変換しない限り、イメージを共有することはできません。

 

 魏志倭人伝では、不彌国から邪馬台国まで合計2か月の日数が記されていますが、それによって邪馬台国候補地は全国にがっているというわけです。

 

 魏志倭人伝後世書き換え説は、陳寿が280年代に完成させた『三国志』魏志倭人伝では、不彌国から邪馬台国への行程記事にも不彌国までと同様に具体的な里数が記されていたと考えるものです。

 

 その大きな理由は、魏志倭人伝内で邪馬台国までの里数に関する記述が3か所あることです。

 

a)各国経由の行程記事

 帯方郡から不彌国まで合計10700余里プラス不彌国から邪馬台国まで合計2か月となっています。

 

b)帯方郡から邪馬台国までの総距離

 行程記事のまとめとして帯方郡から女王国(邪馬台国)まで12000余里であると記しています。

 

c)倭地周旋の記事

 魏志倭人伝は倭と魏の交渉記事に移る直前に、「倭地をめぐり歩いた距離は5000余里ほどである」と記しています。それは狗邪韓国から邪馬台国までの距離ですから、帯方郡から狗邪韓国までの7000余里を足しますと、12000余里となります。

 

 b)とc)は12000余里で共通しています。

 つまり、3か所のうち2か所で12000余里だとされているのです。

 そうであれば、陳寿の頭の中では、帯方郡から邪馬台国までは12000余里だと明確に認識されていたはずです。

 それなのに、a)の最後の2行程だけ日数表記する意味がまったく理解できません。

 12000余里を前提とすれば、1300里となる不彌国から邪馬台国への里数を、わざわざ2か月などという長期間に設定して整合性を崩しているようにすら見えます。

 はたして稀代の歴史家と評価される陳寿がそんなことをするだろうかと考えたのが魏志倭人伝後世書き換え説の出発点です。

 

 先日そういうことを考えていて、以前に「魏志倭人伝後世改ざん説(当初はそのように呼んでいました)は陳寿をとことん信じる説なのですね」と言われたことを思い出しました。

 それで、以下のようなYouTube動画を作ってアップしました。

 

 もし、不彌国から邪馬台国までの行程記事に合計1300里の里数が書かれていたとすれば、どうでしょう。

 現在、魏志倭人伝の「謎」とされているようなことはほぼすべて解消されます。「謎」自体なくなると言ってもよいと思います。邪馬台国論争さえ生まれようがなくなるのです。

 

 とはいえ、後世の書き換えについては、陳寿の原本や書き換えられる前の写本などが発見されない限り証明しようがありません。それは自覚しているつもりです。

 

 ひとつだけ論拠となりそうなのは、裴松之の注です。

 南朝宋の429年、裴松之は『三国志』に陳寿の原文を上回るほどの膨大な注釈を付けて文帝に進上しています。

 150以上ともいわれる文献を参考に、陳寿が書き漏らしていることや間違い、異説、さらには自身の論評なども書き加えています。

 それなのに、300年以上にわたる邪馬台国論争の原因となっている日数表記には何の注釈もつけていないのです。

 もし、その出典や根拠がわからないとしても、のちの隋書に書かれている「倭人は里数を知らず日をもって計る」というような注釈が付けられてしかるべきです。

 それもないということは、裴松之が『三国志』を目にした時点では、そこに「謎」はなかった、つまり日数ではなく合計1300里の里数が書かれていた可能性もあるということだと考えます。

 

 

 

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