❀  ポンポンに願いを  Ⅶ  ❀ | ぴかるんのブログ

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ピンクのポンポン


ピンクのポンポン★103

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏のソロツアーで止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。

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  コンサートに来れて嬉しいけれど、相棒の妹が一緒ではないせいか、何か物足りない……
 チビを連れて来れば良かったかな?と、渋谷をウインドーショッピングしながら考えたけれど、帰りの電車の混雑を考えると、やはりチビはお留守番に限る!と結論を出した。


 三歳下の妹は、いつも私の後ろをついて歩いていて、何でも私をマネた。

 妹が中学に入学した日、
 「好きになる芸能人まで、マネしなくて良いよ」と言うと、
 「マネじゃなくて、同じ人を好きになっているだけ」と、珍しく膨れっ面を見せた。


 そして、タッキーの存在に先に気付いて、興味を持ったのは妹だった。

 「この人、カッコ良いね」
 雑誌の記事を見ながら、言った私に、
 「先に好きになったのは、私だからね」と、妹は得意げな顔を見せた。


 二年前のソロ公演、私はチビを産んだ直後で、参加を諦めた。

 産後の里帰りをしていた私に、コンサートから帰宅した妹が言った。
 「コンサートは面白かったけど、一人で行っても、つまらなかった」

 妹の気持ちが分かっていなかった私は、
 「贅沢なこと言って…… でも、行かなかったら、後悔していたんじゃない?」と訊いてしまったのだった。妹は、
 「まあね」と、気のない返事をした後、ウチのチビをあやし始めたのだった。


 そんな妹が去年、結婚し、妊娠した。出産の予定日が近すぎるので、今回は妹がコンサートの参加を諦めた。

 少し遠い所へ嫁いだ妹は、里帰り出産に備えて、既に実家で暮らしている。

 妹が帰ってきた日、家族で実家へ行くと、
 「小さい時から仲良し姉妹だけど、二人して子供も夏に産むのね」と、母が笑うと、
 「お誕生日会が一度で片付くから、親孝行でしょ?」と妹が言葉を返して、皆の笑いを誘った。



 体育館へ向かって歩きながら、あの日、一人で出かけてもつまらなかったとこぼした妹に、
 「私も行きたかったなぁ」と言わなかったのだろう?と、今更の後悔をした。

 今日、チビを預けるために実家へ寄った時、
 「ちゃんと二人分、観て来るね」と言うと、
 「うん、色々と後で教えてね」と、妹がキラキラと目を輝かせて言った。

 そして、妹に託されて、今日の私は去年の秋に妹が使ったピンクのポンポン持参で実家を出たのだった。


 二人分のグッズを買い、入場した。

 隣に相棒の妹がいない心細さに、初めて気づかされた。
 妹が強引に週刊誌を私の鞄に入れた理由も理解できた。


 席に座り、御守の代わりに妹のピンクのポンポンを膝にのせてから、週刊誌を読み始めた。内容は全く頭に入って来ないけれど、何もしていないよりはマシだなって、素直に思える。

 次回のソロ魂の時は、いつもの様に二人で出かけられます様に! そして九月は二人で笑顔で出かけられます様に!


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