ピンクのポンポン★80(80-98)
※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
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家族と殆ど口をきかないまま、数日を過ごした。時には一人で外へ出ることはあっても、同級生達と会わなければ、誰とも喋ることなく一日が終わるという具合だった。
そんなある日、学校近くの道で、見覚えのある車が停まっているのを見つけた。近寄って行くと、近所で飼われていたシェパードが女性に連れられて、車の近くを散歩していた。
「家、近所の子やね?」
私の姿に気付いた女性が声を掛けてくれた。私が黙って頷くと、
「体育館、寒いけど、車の中、もっと寒いで」と言いながら、笑いかけてくれた。
「車、エアコンは?」と訊くと、
「ガソリン、入れるの大変やから、つけっぱなしにできひんから。まぁ、このコ、抱っこしてたら温いけどな。恐なかったら、触ってみる?」
私が返事に困っていると、
「このコ、大人しいで。野良猫にも吠えへんから、『番犬、失格やな』って、言われてるんやから」と、シェパードを連れたおばさんが笑った。