長い時間の流れの中で【34】 1・17 失い続ける時 | ぴかるんのブログ

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ピンクのポンポン

ピンクのポンポン★80(80-34)



※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。


§☆§★§☆ V⌒⊥⌒V ☆§ ★§☆§

 朝食の乾パンを配布するという声が掛かったので、体育館の外へ並びに行くと、救援物資か届かないので、子供は二人で一人分ということだった。配布していた学校の先生に対して、量が少ないと不満を言う人も居れば、一緒に避難してきている家族の分だと多量に持って行こうとする人も居て、食べ物に対して、大人が不満を言う姿を見たことの無かった私には衝撃的な出来事だった。

 お隣に居たお婆ちゃんが、自分の分の乾パンを分けてくれようとしたけれど、母は、
 「昨日のお昼御飯まではちゃんと食べましたから、大丈夫です」と言い、きっぱりと断っていた。そして母は私と妹に、自分の分を分けてくれたのだった。そして食後、旅行鞄の中に隠し持っていたキャンディをこっそりと私と妹の口に入れてくれた。
 私も妹も大人が恐い顔をして、食べ物のことで不満を言う光景を見て、体育館の中に居る大人達が恐く感じていたので、母が周囲から見えない様にキャンディを入れてくれても、何も言わず、黙ってキャンディをくちに入れていた。そして、キャンディが口の中で完全にとけてなくなっても、暫くは何も喋らなかった。

 途中、近くに居た他の大人の人が、
 「何か甘い匂いがする」と言った時には、ピクリとしたけれど、家族の人だろうか、
 「気のせいに決まっとるやろ」と言いきって、その後、誰も匂いの話をしないと分かるまで、心がひどく緊張した。


 母は、着ている物以外は何も持ち出せなかったお隣に居たお婆ちゃんに、父のコートを渡した。
 「毛布だけでは寒いから、使って下さい」
 お婆ちゃんは一瞬、驚いた顔をしてから言った。
 「大丈夫、年寄りは寝る時も厚着だし、地震の時はもう目が覚めていたから、この通り、半纏も着とったし、帽子もあるから。それより、あんた達が大事に使い。夜、寒いで。昨夜、こここにおる(居る)皆、寝られんかったわ」
 「じゃあ、我慢できなくなったら、教えて下さいね。私達、教室に居たけれど、やはり寒かったです。昨夜、避難してきた時は暗くて、体育館へ入れなかったので……」
 「夜まで家に、おったの?」
 「一度来たんですけど、入れて貰えなかったんです。でも、火事で全て燃えてしまいました。ガス管が壊れたんです」
 「あんたんとこの(あなたの家の)?」
 「いえ、御近所の家か道路に埋められている部分のどちらかだと思います、突然、爆発して……」
 「そう言えば、近所が燃えてるって、皆が言うとったなぁ。壊れただけで、落ち着いたら荷物を拾いに行けるウチの方がマシかもしれんな。仏壇と写真くらいは拾いに行きたいんやけどな、お父さんのだけやのうて、孫らの写真も私には大事なものやさかい」
 「あの、お子さんは?」
 「東京と外国や。孫や嫁も神戸に居らんで良かった。まぁ、お宅の逆やね。多分、東京におる(東京在住の)娘や孫ら(達)が迎えに来てくれるまで頑張るしかないわ。それまでは、あんたのとこの娘さんら(達)を孫や思うとくわ」
 「宜しくお願いします」
 「うんうん」
 そう返事をしながら、お隣のお婆ちゃんは目を細めて大きく頷いた。

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