ピンクのポンポン☃７９（７６－２）
※戸籍は男性
身体は男性でもあり、女性でもある状態
心は女性
そんな人を主人公にした物語です。
先にネタバラシをしてしまうと、『誰が一番かなんて、決められないのぉ』というタイプの人です。
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せっかく少し早めに家を出たけれど、楽しみにしいた銀座でのウインドーショッピングを楽しめないまんま、演舞場へ向かって歩き始めた。
翌年に建て替えを控えていた歌舞伎座の前を歩いてみた。
歌舞伎座も、併設されいるお蕎麦屋さんも、敷地内で営業してい焼き栗のお店も、
「ここが壊されるのは、もっと先ですから！」と言わんばかりに、何事も無いように“普通”だった。
敷地内に、公衆電話やチケット発券機が置かれていたけれど、夜の部も始まってしまっているので、敷地内は閑散していた。一幕だけ観ることができる入場口に並ぶ人の列もそう長くはない。
せっかくなので、時間潰しに歌舞伎座の周囲を一周してみると、建物に歴史を感じた。ニュースで知ってはいたけれど、既に鳥歌舞伎座の建て替え工事の時に同時に取り壊されてしまう近所のビルの店舗の中には、移転済みの店舗もあり、仮店舗の場所を案内する貼り紙を出している店が何軒かあった。
当時の歌舞伎座を見ることは最後かもしれないと思いつつ、歌舞伎座の周囲を一周した後、演舞場へ向かった。
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首都高の都心環状線の脇の交差点を渡ると、予想通りに目的地が同じと見える女性達の行進に混ざって演舞場へ向かうことになってしまった。
でも、皆、楽しそうな顔で歩いてる。
好きな芸能人に会えるせいだろうか？ それとも、内容が楽しいものだと分かっているからだろうか？と考えながら、歩いていたら、途中から、私を追い越しては振り返る女性が何人も現れた。
いっそのこと、
「心は女性です！」とカミングアウトしようかと思ったけれど、その日の格好だとジョークにしか解釈されないことは分かっていたので、俯いて会場まで歩くことにした。
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映画館みたいに、普通にチケットを渡して半券をもぎって貰う間は、女性名義のチケットということでドキドキしていたけれど、何も言われなかったので、ホッとして、入場した。
入場すると、すぐに会場の案内係の女性から声を掛けられたので、そのままチケットを渡して、席まで案内して貰った。
案内係の女性からチケットを返して貰い、席に座ると、確かに舞台から近くて良い席ではあるけれど、客席に傾斜が少ない分、自分の後ろの席の人達は舞台が見えづらいだろうなぁと思った。
初めての場所ということもあり、もの珍しく感じたので、後方を見上げると、二階席は舞台から近く感じた。でも、三階席は随分と遠くて、舞台がちゃんと見えるのだろうか？と思ってしまった。
視線を元へ戻すと、つい三分程前の会場へ向かって歩いていた時と同様に、私自身が注目さている様な空気だった。勿論、客席全体からではないけれど、たくさんの視線を感じた。そんな視線を避けるために携帯電話をいじっていたけれど、後ろの方から、わざわざ前の方の通路へ出てから外の廊下へ出る人が何人も居た。丁寧にも、皆さん、私の傍を通り過ぎた後で一度振り返り、最前列の通路へ出てからもう一度振り返るという念の入れようだった。
後から私の両隣に女性が座ったけれど、既に不機嫌な顔を作って携帯電話をいじっていたせいか、どちらも声は掛けてこなかったけれど、すぐ前の人には随分とジロジロと見られてしまい、
「そこまで男一人で来ることは“珍獣”扱いなの？」と心の中で呟いてしまった程に、イヤだなぁと思っていたら、
「席も席だし、絶対に事務所の人か、関係者じゃないの？ 似た様な人、居たと思うんだけど、誰だっけ？」という言葉が露骨に聞こえてきた。
私は、その言葉を聞いて、そういうことだったのネと、納得した。
若い男が一人で来たことで注目を浴びるていることが重荷になっていたけれど、席が原因で周囲に誤解を招いていたのなら、勘違いしている皆さんに申し訳ないのは事実。でも、そのまま、皆さんの“夢”は壊さないようにしておこうと思った。
それに残念なが、チケットを譲ってくれた若い常連客であるお嬢さんから、近くに有名人が居ても名刺を渡すことはダメ！と釘を刺されていたこともあり、その日は名刺入れは家に置いてきていたので。
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｛ せっかくなので、以前の歌舞伎座の様子を描いてみました。
今でも、はっきりと思い出せるから、不思議……
当時は猫５匹、今は何匹かな？
(↑ 300回目に欠席となった人) ]
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