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ピンクのポンポン


ピンクのポンポン★79(76-2)



※戸籍は男性
 身体は男性でもあり、女性でもある状態
 心は女性

 そんな人を主人公にした物語です。
 先にネタバラシをしてしまうと、『誰が一番かなんて、決められないのぉ』というタイプの人です。


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 思いつめた表情をした彼女の方から、先に声を掛けたきた。
 「あのね、お願いがあるの……」
 私は、彼女に何があったのだろう?と、不安を抱いた。

 「どうしたの? そんな顔をしていたら、いつもの美人さんが台無しよ」
 「ありがとう、お世辞でも『美人さん』は嬉しい。お姉さんも綺麗よ」
 「『心』はね。それで、本題は?」
 「うん。あのね、明後日のお芝居のチケットを買い取って欲しいの。おまけに定価じゃないんだけど……」
 「明後日ね…… 平日だから、何とか都合はつけらると思う。それで、誰のチケットで、値段はいくらなの?」
 「タッキーの舞台で、五万円なの」
 絶句して、すぐに答えが出せなかった。
 私が黙って考え込んでしまうと、彼女は俯いてしまった。

 彼女のおかげで、常連さんの来店頻度が上がっていることは事実だった。
 彼女の話すお芝居やミュージカル等の感想や、あらすじ、見所の説明は、舞台なんて観に行ったことのない人にとっても楽しい内容であることは確かだし、彼女と連絡先を交換して、店で待ち合わせをするお客さんも増えた。

 ここは何とかしてあげたい!と思った私は、事情を訊くことにした。
 「どうして、そんなことになったの?」
 すると、彼女はゆっくりと顔を上げてから、話し始めた。

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 オークションにそれなりに良い席が、定価よりも安く出品されていた。
 いつもの様に父親の名義で入札を始めたけれど、オークション終了時間が余りにも遅い時間だったのと、翌朝は八時半から学校で試験が始まる予定だったので、定価の一万二千円よりも少し高い一万五千円までの入札予約をして、パソコンを落とした。
 なのに、翌朝、通学途中の電車の中で、携帯のメールを確認すると、五万円で落札したことになっていたとのことで、彼女の推測によると、一万五千円と入札予約をしたつもりが、『0』を三回押したつもりが、四回押してから、入札予約のボタンをクリックしたのではないか?とのことだった。
 父親からはひどく叱られるも、もう二度と、こういう失敗はしないと約束することで、今回は許して貰えることになった。

 でも、昨夜、母親から、
 「チケットが届いたわよ」と言う言葉と共に、見せられたチケットの日付がタッキーのお芝居と重なっていたとのことだった。

 両親に相談すると、ひどく叱られた。
 当たり前と言えば、当たり前だった。ちゃんとスケジュール帳を確認しておけば、出品されていたチケットと同じ日の、同じ時間に出かける予定が入っていることは、分かりきっていることだった。

 とりあえず、入札予約金額を間違えて買ったチケットを売ろうにも、出品者から転売防止のために、父親の名義で登録しているIDに購入履歴が残されていたのと、公演日時が迫っているため、どうしようもない状況に陥ってしまったとのことだった。
 少しでも弁償したいという気持ちと、空席が目立つ席なので何とかしたいという気持ちから、断られることを覚悟で、私の所へ頼みに来たとのことだった。

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 お芝居やミュージカル、オペラ等、正直、興味が無かった。嫌いではないけれど、一度もそういう所へ出かけたことが無いのと、
 「ドラマや映画でも、十分に楽しいけどなぁ」という考えしか、持っていなかったからだった。
 あと、お店でのお仕事が楽しくて、常連さんから、一緒に観に行こうよと誘われても、
 「私を目当てに来て下さるお客様が泣いちゃったら、大変だもの」と言っては、断っていた。

 時間とチケット代は都合がつくとして、今迄、お誘いをお断りしてきたお客様達に不快感を与えないだろうか?と、考え込んでしまった。

 「やっぱり、無理かな?」
 彼女が私の顔を見つめていた。
 私が正直に本音を話すと、彼女は、
 「そっか…… それに、今回みたいなことがあると、急用で行けなくなってしまった人がチケットを買って欲しいって、頼みに来るかもしれないものね……」と言って、また俯いた。

 取り敢えず理由を訊いてみることにした。
 「タッキーの舞台、オークションでチケットを買いたくなるくらいに面白いの?」
 「勿論!」
 そう返事をした後、彼女は去年の舞台の内容を楽しそうに話してくれたので、もう一つ、訊いてみることにした。
 「五万円の価値はあるの?」
 「うん、絶対に! だから、たくさんの人が入札に参加したんだもん」
 目を輝かせて返事をした彼女の顔を見て、決心がついた。

 「分かった。チケットは買い取ります。でも、今日、チケットを持って来ていても、お金はすぐに支払えないわよ。普段から、5万円もお財布に入れてないもの」
 そう言うと彼女は、
 「チケット代はいつでも良いの」と言い、カウンター下の棚から膝の上に鞄を取り出した。そして中から、白い封筒を取り出すと、両手で私に差し出した。
 「宜しくお願いします」
 「はい、確かに」
 私も両手で受け取ってから、エプロンの胸ポケットに封筒を入れた。

 「何だ、心も男に戻ったのか?」
 彼女の背後のテーブル席に座っていた常連さんから、声が飛んだ。
 「違うわよ、ラブレターをお預かりしたんです。責任重大よ」
 「何だ、キューピットか。じゃあ、頑張ってやれよ」
 「はい、頑張ります」
 私は両腕で、ガッツポーズを取って、返事をした。

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   いつも思う、もしもこの時、彼女の頼みを聞き入れなければ、こんな楽しいことがあることも知らずに、人生を過ごしていたんだろうなと。


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{ すみません、
書き直してました
今日の部分は軽いノリで流すつもりでしたが、
重い内容へ変えてしまいました   

これから洗濯物を干して、その後で夕飯 
帝劇へは行ってません
  ☝書いておかないと、誤解を招く時間   ]