マウリツィオ・ポリーニを偲んで | 私のピアノライフ  with classical music

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ピアノ練習、コンサート等で感じたことを気ままに語っていきます。

マウリツィオ・ポリーニが23日に亡くなったことをSNSで知りました。

 

たぶん、60代以上の方の若い頃の代表的なピアニストはアシュケナージ、ポリーニ、アルゲリッチだという意見に賛成してくれるのではないでしょうか。

今ほど、音源があふれていなかったので、FM放送かレコードを購入して聴いていました。FM放送では、海外の音楽祭の録音が流れてきて、よくカセットテープに録音したものでした。カセットテープは今後、聴くことはないだろうと10年以上前に処分してしまいました。

レコードは決して安いものではないので、少ししか買っていません。その頃は、試しに聴くこともできないので、余計、買いづらかったかもしれません。

 

そんな中、1枚だけ、ポリーニのレコードがありました。

せっかくなので、久しぶりに聴いてみました。レコードは傷つきやすく、案の定、1楽章の終わりの方は、同じところを永遠に演奏する状態でした。

録音は、1968年頃だと思います。1960年にショパコンで優勝したポリーニは、その後、演奏活動から遠ざかり、研鑽を積み、1968年にロンドンでショパンを弾いてカムバックを飾るとジャケットには記載されています。このレコードの録音データの正確な日付は書いてありません。ただ、若い頃の演奏であるのは確かです。

 

ポリーニといったら、超絶技巧のショパンエチュードをさらりと完璧に弾いたことで知られていますが、改めて聴いて見ると違った印象をもちます。このレコードはショパンのピアノ協奏曲第1番ということもあり、超絶技巧より、気品、歌心を強く感じます。こんなに美しく、すっきりとまとまった協奏曲はそうそうないですね。

ポリーニの音を冷たいという人もいますが、私は反対に内に秘めた温かい心を感じました。

 

ポリーニ、アルゲリッチ、アシュケナージとも日本が好きで何度も来日していますが、ポリーニは名古屋にはなかなか来てくれませんでした。名古屋国際音楽祭で一度だけ、コンサートを開いてくれました。

その時のチケット↓

私が20代の頃で、チケットが1万円。破格の値段がついています。

何の曲を弾いたのか、覚えていないのですが、粒のそろった美しい音が降り注いでいた映像が目に浮かびます。今ほど、熱心に予習(?)して聴きにいっていたわけではないのですが、トッププレイヤーは強烈なインパクトを与えてくれるものなんですね。

 

ポリーニは年と共に、演奏が様変わりし、若い頃の超絶技巧は完全に消えてしまいましたが、それでも演奏のオーラは燦然と輝いていました。あんなにボロボロに弾いても何か凄い。音の響きが豊かで美しいからでしょうか。数年前にテレビで見たベートーヴェンの後期のソナタはとても素晴らしく、音楽の神様が降りてきたのではないかと思わされました。

 

たった一度でも、生でポリーニの演奏を聴けたのは幸福でした。

訃報を知った時、あまり感情が動かない私が珍しくポロッときました。

ポリーニさん、長い間、素敵な音楽を届けて下さり、ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

 

【追補】

25日の新聞の朝刊に、ポリーニの訃報の記事がありました。なんと、写真付きでした。