『バブル 日本迷走の原点』 (永野健二 著)
最高におもしろかった本。私よりもうちょっと上の世代のちょっとしたインテリなら思わず引きずりこまれながら一気に読んでしまう。
一言でいえば、日本経済新聞の質のいいコラムと日経ビジネスの特集とを合わせたようなものであろうか。
リクルートの江副浩正、イ・アイ・イ・インターナショナルの高橋治則、秀和の小林茂、小糸製作所の株買い占めで登場するピケンズ、麻布グループの渡辺喜太郎、光進の小谷光浩などが、経営する会社とそれらを取り巻く金融機関とともに、彼らの物語として紹介される。全て現場で取材にあたった著者の手によって実話があぶりだされる。
しかし、”尾上縫”なんて、どうして日本興業銀行はじめ当時のスーパーエリートたちがいかにもこんな怪しげなものに引っかかってしまったのか。
余談だが、私は東京で会社勤めをしている際、イ・アイ・イ・インターナショナルに何度か営業に行った。記憶に違いがなければ、コンピュータ関連の商社のような事業も行っていたのではなかったか。それほど大きなものではなかったが、仕事にもつながったはず。
その後、イ・アイ・イ・インターナショナルなるコンピュータ業界ではちっぽけな存在であった会社が、こんな形でクローズアップされる様子をなんだか不思議な感覚で見ていた。
さて、1992年8月に、当時の宮沢総理と三重野日銀総裁による、銀行への公的資金注入策が検討されという「バブル崩壊後の日本が復活する最後のチャンス」は、銀行と官僚とによって阻止されてしまう。その場面の記述だけでも、現代に生きる私たちはじっくり読み、その意味をしっかりとかみしめるべきではないか。
読まなければいけない本だ。
余談。
レベルもステージもまったく違うものではあるが、現代の「ふるさと納税」のおける返礼品合戦を見ていると、思わず、あの時代にバブルに踊らされた悪意のない素朴なリーダーたちに思い馳せてしまうのは私だけであろうか。
こんな本をかける著者に一度ゆっくりお会いしていろいろと話しを聞かせてほしいと思ってしまったのも私だけかもしれない、というのも余談である。