工藤静香さんがミカンとナスの絵を描いた、
という記事を読んだ。
記事には両方の絵も載っている。
またまた、ひとこと言うことにする。
彼女の優れたところ。
ミカンの房が良い感じに描けていて、
美味しそうなこと。
こないだの芸大生と違って、
形体を描くことだけに力をそそぐのではなく、
モチーフの重要な要素が、
しっかりと感じとれている。
つまり彼女は感受性が豊かだと言える。
しかしそれ以外のことは、
何も褒められない。
結局「デッサン力」が足りなさすぎなのだ。
とりあえず1つのモチーフ、
「単体」がまともに描けるよう、
訓練しないといけない。
立体感のある描写!
モチーフには自分からは直接見えない、
裏側がある。
裏側を表現するにはどうすればいいか。
その問題意識が必要。
それから「モチーフ」と、
モチーフを置いた「台」との関係に気をくばること。
めり込んでもいけないし、
浮き上がってもいけない。
2つのモチーフを描く場合は、
「モチーフA」と「モチーフB」と「台」との関係、
ということになる。
その関係が描き切れていれば、
3次元空間も表現されているはずだし、
作者は「画家」を名乗ってもおかしくない、
実力があると言える。
描きやすくするために、
光の設定も重要。
ふつうは左右どちらかの、
斜め上45度から、
モチーフに光を当てるのが、
いちばん描きやすいのだけど、
人それぞれ好みがある。
好みに合わせればいい。
ミカンの絵の場合、
たぶんアトリエの天井の照明だろうけど、
真上から光が来ていて、
しかもモチーフを見下ろして描いているので、
「全光」に近い状態。
あまりにむずかしい。
もう7、8年前になるだろうか。
彼女のその年の、
二科展入選作を見たことがある。
女性を真正面から描いていた。
何てむずかしい構図にするのだろう、
と驚いた記憶がある。
つまり真正面からだと、
顔で言えば、奥行きを表現できる、
頬骨から後頭部にかけた、
頭部の側面にあたる部分が、
画面上で面積が少なくなってしまう。
狭い面積で奥行きを表現するのは、
よほど技術がないとできない。
じっさい彼女の絵は立体感を欠いていた。
それからその絵のモデルは痩せ型。
当然、二重顎ではない。
なので顎の下側が隠れてしまっているのだ。
そこは顎と首をつなぐところ。
つまり前に出た顎と奥にある首との関係を、
つなぎのない状態で表現しないといけない。
これは最上級の難易度。
ほんと、恐るべき構図!
彼女は1990年に二科展に初入選している。
キャリアは長い。
なのになぜ今もって、
デッサン力がなさすぎなのだろう。
どこかで、あるいは誰かに、
絵を習ってないのだろうか。
そう思いつつWikipediaを眺めていると、
原良次という画家が先生、
と書いてあった。
二科展のお偉方。
入選作となってもギリギリ許される、
絵にすることだけ、
体裁を整えることだけ教えて、
厳しい指導はしなかったのかも知れない。
「しなかった」と書いたのは、
原良次さんは1925年生まれ。
もう亡くなっているはずだから。
調べたかぎりでは、
生年しかわからなかった。
彼女の現在の先生も不明。
原さんの絵も何枚か見てみた。
彼の師は鶴岡義雄という、
芸術院会員だった「大物」画家、
ということもわかった。
しかしそれらについて書くとすると、
長くなりすぎる。
今日はやめておこう。