山中伊知郎の書評ブログ -234ページ目

僕たち、プロレスの味方です

僕たち、プロレスの味方です/ユリオカ超特Q;ケンドーコバヤシ
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プロ野球の衰退が騒がれているが、あれは実質的には「巨人軍」が衰退しているだけであって、たとえば北海道に行けば日本ハムの盛り上がり方は尋常ではないという。

しかし、ここ10年で、はっきり衰退感のあるものといえばスキーとプロレスだな。昔は、冬っていえばテレビでもスキーのシーンだらけだったのに、今やほとんど見なくなってしまった。プロレスも、地上波は真夜中で30分か。猪木が視聴率20%をとっていた時代も今は昔。

 てなことで、今回は、ユリオカ超特Qとケンドーコバヤシが出した『僕たち、プロレスの味方です』。かつての村松友視の本のタイトルをそのままいただいたわけだが、まずそもそも、よくこの企画が通ったな、とそこに感心してしまう。プロレスがそもそも下降線の上に、お笑い芸人本は、ここのところ当たりが少ない。

 内容的にみると、プロレス自体について書かれた部分は、私自身、あまり詳しくないためか、よくわからないところが多かった。それに『アメトーーク!』などでもしばしば語られており、ハッとする新鮮な驚きはない。

 だが、それ以外、ことにときたま垣間見える「お笑い」について触れられるエピソードが興味深い。たとえばユリオカなら、「自分は初めから受け身をとる気のない芸人、エスパー伊東や鳥居みゆきみたいな絡みづらい芸人を相手にするのが得意」という発言。ケンコバなら「オレはレーザーラモンHGに2年で潰れるが、あのハードゲイキャラをやれ、と進言した」という発言。そういうあたりを知るだけでも、この本を読む価値はあると思う。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

書評プログを立ち上げるにあたって、まずどの本から行くか、新宿紀伊国屋の店に入って、考えた。けっこう第一回目というのは、選択が難しい。自分の趣味に走りすぎても、どうも扱う世界が狭くなりそうな気がするし、かといって、あまり流行を追いすぎるのも軽い抵抗はある。

 で、結局、結論はあっさり出した。

先のことはともかく、一回目は流行を追おう。それで、さっそく買ったのが、この一年でダントツのベストセラーとなっている。『もしドラ』こと、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』。

ベタといえばベタ。さんざ、いろいろなところで書かれている本だが、まずはこれを取り上げてみたいと思う。


 第一印象として浮かんだのは、「まるで西洋医学の本みたい」ってこと。西洋医学では、人間の器官をちょうど機械の部品のように発想するから、人工臓器や臓器移植、という方向が生まれる。さらには、自然に逆らってでも命を長らえる延命治療という問題まで出てくる。

 なぜか『もしドラ』を読んでいると、発想はそれと同じ感じなのだ。人間一人一人を「部品」としてとらえて、目的に向かって機能的に動かしていく。ま、ドラッカーさんの『マネジメント』自体がそういう本だったのだろうから、それは当然なのだろう。登場人物たちは、基本的に「記号」であって、肌で感じられるキャラクターは、薄い。

 そして、次に感じたのは、まるで「長く、巧妙に作られた企画書を読まされているみたい」ってこと。「高校野球の女子マネージャーと、ドラッカーという、まったく異質なものをうまく融合して見せれば、こんなに万人受けする本が作れますよ」という企画意図が、どのページを読んでも浮き上がってくる。 

 主人公の女の子は、本を読む限り、まるで天海祐希か篠原涼子が似合いそうなタフな女なのに、イラストではかわいい女子高生になっている。これもまァ、ライトノベル的なテーストを入れて、若者受けを狙ってるんだろうな。

 その一方で、構成は、いかにも一段一段と階段を上っていくサクセスストーリーの作りで、こちらはオッサンにもとっつきやすく出来ている。

 ま、たぶん、書評プログを書いてみようと思わなかったら、まず、この本は表紙のわざとらしい女の子のイラストを見ただけで「食わず嫌い」で読まなかったろうし、読んでみたら、やっぱりあまり好きにはなれなかった本。

 しかし、それが売上げ200万部に迫ろうという現実がある。日本人て、こういう「組織論」、好きなんだな。みんな、「オレは、組織なんか飛び出したい」って言ってるくせに。

 私個人は、野球するなら、甲子園行くより、もっとのんびりと楽しみたいときに楽しめばいいじゃないかと思う。

というより、野球自体をやらない。

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