PORSCHE デッドニング・ぼろぼろ | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

ポルシェに限った話ではないですが、


30年選手のクルマのドアの内張りを外
すと、戸袋の中はほとんどボロボロで
す。

80年代以降製のメルセデスやポルシェ

のサビの少なさは大したものだなぁと

思います。ドイツの高額車では、ちょ

うど亜鉛めっき鋼板が使われ始めた

頃だったと思います。



けれども、ドアのアウターパネルの裏
側に貼り込まれている制震シートは、
ほぼ間違いなく化石化しています、
カッチカッチでパリパリで、あちこち
剥がれて、砕けた破片が下に積もって、
泥や埃と絡まって水抜きの穴を塞いだ
りしています。


ポルシェ993、製品版の部品を製作す
るために、若干の修正箇所を入れた試
作部品がわたしの手元にありませんの
で、試聴していただけるまでにもう少
し時間を要することになりました。

その間に、スピーカーシステムの取り
付け工程を検証しながら、気づいたこ
とを記録しているわけですが、
I.Y.A.Garage に必須作業事項、手順
として伝えようと思うこと以外にも、
いろいろな作業をしてしまうのは、わ
たしの悪い癖です。



スピーカーシステム開発のために貸し
ていただいている993の戸袋の中はこ
んな感じです。

ポルシェの工場で貼り込まれた制震シ
ート、完全に干上がって縮んでしまっ
ていて、ほとんど全面が剥がれて浮き
上がっていました。スピーカーシステ
ム開発の邪魔になったので、パリパリ
と割りながら除去した状態が、この写
真です。戸袋の底にもいろいろ落ちて
ますね。このクルマが特にひどいわけ
ではなく、新車から30年が経過したら、
こんなの当たり前です。W124もW126も
フツーにこんな感じです。NAロードス
ターは、これに大量のサビが加わって
いる感じの眺めになります。



さて、どうしましょうか。


修正部品が届くまで時間があるし、目
にしてしまったこういう光景を見なか
ったことにして組み戻せないタイプで
もあります。


まず、化石化したまま頑固に貼り付い
ていた制震シートを除去しました。こ
れ、外板、つまりボディパネルの裏面
への作業ですから、かなり気を使いま
す。妙な道具でこじったりしたら、ボ
ディパネルが凸凹になってしまいます。
慎重に、かつしっかりと剥がし終えた
ら、お掃除です。制震パネルを貼り付
けていた接着剤の跡をきれいに拭きと
得います。この作業にも気をつけるべ
きことがあります。汚れ落としには溶
剤を使わざるを得ないのですが、あま
り強い有機溶剤や、力を入れてゴシゴ
シこすりすぎると、下塗りの塗膜を落
としてしまいます。そんなこんなを注
意しながら、こんな感じに仕上がりま
した。掃除機も掛けたので、戸袋の底
もきれいでしょ。



最後に、アスファルト系の制震シート
を貼ります。制震シートの類はいろい
ろと研究しているので、ガレージに転
がっていたりするのですが、接着剤は
このために適切なものを新たに買いま
した。

で、仕上がりはこういう感じです。





オーディオのために、ドアの内側全面
をデッドニングするのは好きではあり
ません。ドアが重くなってヒンジがお
かしくなる可能性が高まります。もし
剥がしたくなってもちょっと無理かも
と断念しそうなくらいブチルゴムのベ
タベタが大変なことになります。その
クルマが本来持っているドアの響きを
変えてしまいます。どんなクルマでも
ズドンと閉まればいいわけじゃないと
いうのが、わたし考えです。

けれども、新車のときに自動車メーカ
ーが施した制震処理、すなわちメーカ
ー標準装備のデッドニングが経年劣化
ダメになったら、それを補修すること
に抵抗はありません。たぶんこのポル
シェのオーナー氏にも、余計なことを
して、と怒られることはないと思います。



ただ、片側3時間くらいは掛かります。
両側で、ほぼまる1日仕事になります。
ササッと簡単にできない事情は、前半
を読んでいただければおわかりだと思
います。

なので、これをプロの作業者に、つい
でにやっておいて、というのは通りま
せん。かといって、この作業をやった
ので丸一日分の作業賃を請求しても払
ってもらえないのが自動車整備という
仕事だったりするので、工場は「やら
ない」、オーナーは「知らない」まま、
朽ちてゆくにまかせるしかないんです
ね。正確な知識があって、クルマのた
めにモノを言えるディレクターがいな
いと、ただ整備工場に出していれば大
丈夫ということでもなかったりします。

ちょっと話が逸れましたが、
I.Y.A.Garageがこれをやってくれるか
どうかは、直接岩間くんと相談してく
ださい。わたしから指示したりお願い
したりできるようなことではありませ
ん。

わたしが茅ヶ崎ガレージで預かるクル
マについては、これまでも、これから
も、こういうことは“おまけ”です。
特にオーナー氏に報告したりはしませ
んが、焦ってやらなければならない状
況でもない限り、ふつうにやってます。
わたしは、取り付けのプロではないの
で、クルマのために好きなことができ
ればそれでいいんです。


というわけで、修正部品が届いたら、
すぐに組戻して音楽が聞けるように、
細かすぎることをコツコツとやってま
す。

空冷ポルシェ911、これまでの常識の
範囲には存在しない、つまり誰にも想
像できない音楽空間です。ぼちぼちお
問い合わせが入り始めています。あり
がたいことです。





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してください。ブログよりも更新が楽
なので、スピーカーシステムの話、ク
ルマの話、はるかにたくさんの発信を
しています。簡単な動画ですが、スピ
ーカーシステムの音を車内で録音した
ファイルも、Facebook内にはたくさ
んあります。鑑賞だけならアカウント
は不要です。下のFacebookのURLから
飛べます。

山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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