くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

備忘録ばかりだと、思い出に浸る懐か
しい人になってしまいそうなので、こ
んな話題を。



これは、スピーカーシステムに使用す
る電子回路の仕様を決めるために使用
したテスト用の配線です。もう用済み
のものばかりなので捨ててしまっても
構わないようなものばかりですが、な
んとなく袋に放り込んで残してありま
す。

だからガレージが片付かない……。

そんなことはともかく、スピーカーシ
ステムでは、ツィーター付きのモデル
にクロスオーバーネットワーク用のハ
ーネスを設定することはもちろん、フ
ルレンジユニットだけで鳴らすモデル
にも、それぞれのモデルごとに専用の
回路を組み込んでいます。


回路といっても、コンデンサーと抵抗
器を組み合わせただけの簡単なもので
すが、それぞれのモデルに合わせた鳴
り方を目指して、一聴しただけでは分
からないんじゃないの? というとこ
ろまで、徹底的にこだわって仕様を決
めています。

実際のところ、めちゃくちゃたいへん
です。音響測定機器など持ち合わせて
いませんし、気持ちよいという感覚の
判断は人間にしかできないという想い
もあるので、仕様を決定するのはすべ
て自分の耳頼りになります。

具合の悪いことに、耳の聞こえ方はそ
の日ごとに違いますので、回路に限ら
ず音質に係わる判断が必要な作業は、
耳の調子がよいときにしかできません。

そして、気持ちです。

よし、これでいこう! という設定が
決まったときは、わたし自身が心底感
動を覚えたときだけです。生身の人間
ですから、嫌なことがあったり疲れす
ぎていると気持ちも凹むじゃないです
か。そういうときには、この作業はで
きないんです。

抵抗器のコンマ1桁の値違いのどちら
を選ぶかが、何日も決められないこと
なんて茶飯事です。

テスト用に用意している抵抗器です。
この中から、ベストな1つの組み合
わせを選ぶわけです。



初めて会ったわたしが助手席にいるに
も係わらず、試聴しながら思わず涙を
浮かべる状況って、普通じゃないと思
うんです。想定の範囲ではダメです。
想像もしなかったことが起こったとき
に、人は激しく心を揺すぶられるもの
だと思います。

スピーカーが鳴らす音を、音楽に変え
ることって、そこを目指すことだと思
うんですよね。


右側の黒いユニット仕様はND用Ver.1。
試作段階からずっと開発車で2年以上
の酷使に耐えてよく唱ってくれました。
試聴会で皆さんに聴いていただいたの
も、このユニットの音楽です。左側は
ND用Ver.2の試作機です。



現在製作しているモデルの回路は、将
来DSP機材等を使ってオーナー自身
が好みの設定を探ってみたくなったと
きに簡単に取り外せるよう、スピーカ
ー線の間に割り込ませる外付け仕様に
していますが、NA/NDロードスタ
ーのメインスピーカー用の回路は、外
付けハーネス仕様からユニットへ直接
半田付けする仕様に変更しました。こ
れは雨水等による水濡れの心配を考慮
したものです。これまでの外付け仕様
でも、多少の水濡れで問題が発生する
ようなことはありませんが、水没する
ような状況は避けるように配線を取り
回してください。そして、ユニット直
付け回路仕様では、配線に白い印を付
けて、そこをカットすれば簡単に回路
がキャンセルできるように製作してい
ます。





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してください。ブログよりも更新が楽
なので、スピーカーシステムの話、ク
ルマの話、はるかにたくさんの発信を
しています。下のURLから飛べます。



山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
webTV「モーター日本」
facebook / Yamaguchi Munehisa
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2020年末の備忘録、昨日の続き。
まだ11月です。

一週間後のロードスターNA/ND試
聴会に向けての準備、夜中に突然ステ
アリングを交換したり、本題とあまり
関係ないことをしていましたが、よう
やく試聴車づくりらしいことを始めま
した。

スピーカーシステムの試聴車は、格段
によい機材を使って、特別な音楽空間
に仕立てているわけではなく、スピー
カーシステムを取り付ければ誰でも手
に入れられる音楽空間として仕上げて
います。

2万円ほどで買える汎用のヘッドユニ
ットを使って、DSP機能等の仕掛け
がない普通のパワーアンプを使って、
スピーカーシステムに付属されるパッ
シブクロスオーバーネットワークのハ
ーネスを使って取り付ければ、これと
同じ音に仕上がりますよ、という構成
です。

逆に言えば、スピーカーシステム本体
はもちろん、ハーネスに組み込むクロ
スオーバーネットワーク回路の数値が
まずいと、誰が組んでもガッカリな音
になってしまうわけで、今回のように
開発完了一発目として開催する試聴会
では、直前まで細かな仕様を見直しな
がらの準備となり、心身共に限界まで
絞り込むような準備となります。



NAロードスタースピーカーシステ
ム・タイプ3のメインスピーカーです。

ロードスター用スピーカーシステムに
興味を持って開発の経緯をチェックし
ていただいている方はご存じだと思い
ますが、この金色のコーン紙のユニッ
トは、もともとND用のベースボード
をアクリル製からCFRP(ドライカ
ーボン)製に変更するのに併せて、マ
ッチングの最適化を図るために選択し
たものです。

メルセデスW124用シリーズ2がW
123/W201用の開発を通じて、
メルセデス用シリーズ3がロードスタ
ーND用の開発を通じて見つけたユニ
ットを、それぞれの車種に合わせてマ
ッチングして完成させたモデルですか
ら、わたし的にはそれほど目新しい経
緯を踏んでいるわけではありません。

スピーカーシステムはいつ買うのがい
ちばんいいですか? という質問をい
ただいたことがあります。つまり、最
終モデルはいつ出るのですか? とい
う意のお訊ねですが、いつでもこれが
決定版の最終モデルだと思って開発し
ています。ですから、新しいものの方
が「音がいい」というものではなく、
すべてのモデルがそれぞれの個性を備
えた最良のモデルだと考えています。

そもそも「いい音」の定義は普遍では
なく、1つの正解など定義しようがあ
りません。ただ、モデルチェンジを行
うときは、既存のモデルにない新たな
可能性を必ず見据えて開発に着手して
いることは確かです。

NAロードスター用タイプ3では、タ
イプ2よりもわずかに大径になったユ
ニットが生み出す中低音の分厚い鳴り
感をNAロードスターの音楽空間づく
りに活かしたいと考えました。タイプ
2の驚くほど細やかな音のディテール
の表現を実現してくれたユニット(N
D用Ver.1と同じ)の味わいに、分厚
い中低音を足すことができる可能性が
あるユニットだと直感したというわけ
です。NDよりも走行音が大きく、走
り始めると中低音がみるみる薄くなっ
てしまうNAロードスターにとても適
したユニットだと、ND用Ver.2の開
発を通じて感じたわけです。

エンクロージャーを使用するわたしの
スピーカーシステムでは、その容積と
の兼ね合いが極めて難しい課題となり
ます。つまり、大きな口径のユニット
ではユニットの背圧が大きすぎて、密
閉型エンクロージャー特有の鳴り癖が
強く感じられてしまいます。口径が小
さすぎると背圧を十分に与えることが
できずに、ユニットがオーバーシュー
トして雑音や故障の原因になります。

スピーカーシステムの新しいモデルを
開発するときは、まず目星を付けたユ
ニットを買ってきて、このテストを行
います。そこで問題を感じたら、即ボ
ツです。このテストで露呈するエンク
ロージャーとのミスマッチは、その組
み合わせが持つDNAのようなものな
ので、どんなに手を掛けても決して消
えることなくどこかに潜み、あるとき
突然ある音楽のある部分で露呈します。
ああ、やっぱり出てしまったと後悔し
ても後の祭りなんです。またユニット
選びからやり直さなければならなくな
ります。ですから、とても慎重にユニ
ットを吟味して、これは相当によいと
感じなければ採用しません。

そんなこんなを繰り返しながら、この
日は試聴会に向けて、配線を敷き直す
ところからNAロードスターの試聴車
を作りました。






明くる日の夕方頃、ようやくNAロー
ドスタースピーカーシステム・タイプ
3の試聴車が仕上がりました。




予定では、その場で組み替え可能な開
発用のネットワークハーネスをセット
した状態で2、3日走り込んで、ネッ
トワーク回路の数値を確定させるつも
りでした。

ところが……。


続きは、次回。




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2020年末の備忘録、昨日の続きで
す。

11月は中旬までスピーカーシステム
以外の仕事であっという間に過ぎてし
まい、いきなり20日の写真です。

28日に愛知県一宮市でNA/NDロ
ードスタースピーカーシステム試聴会
を開催することが決まっていたので、
その準備の一コマがこの写真です。



NAロードスターのステアリングコラ
ムです。

ステアリングホイールには、握ったと
きの感触や回し心地に人それぞれの好
みがあります。わたしの場合は、MO
MO製のギブリ3というモデルがそれ
で、スカイラインRSターボに乗って
いた頃に初めて手に入れ、ポルシェ9
44S2CS、968CSと所有のM
T車が入れ替わっても、常にこのステ
アリングに付け替えて乗っていました。

このロードスターを譲り受けたときに
付いていたナルディ製のステアリング
もなかなかよかったのですが、ふと、
どうしても“いつものヤツ”で運転し
てみたくなったわけです。

運よく、MOMO純正のNAロードス
ター用ステアリングボス(ステアリン
グホイールとステアリングコラムリン
グのマウントアダプターですね)をヤ
フオクで見つけることができ、晴れて
交換の儀となりました。

写真のデータを見るとAM3時25分
とあります。試聴会への出発を1週間
後に控えた深夜にする作業かと、自分
の止められない性格を知る思いの記録
ではあります。

ちなみにギブリ3、絶版になる前に予
備を買ってあるので2本あります。事
故でも起こして曲げてしまわない限り、
一生分確保できているかな、と。

古くなったグリースを拭ってからきれ
いに清掃して、新しいグリースに打ち
替えておきました。樹脂部品との組み
合わせで働くこういう部分には、信越
化学のシリコングリースがわたしのお
気に入りです。



ステアリングボスには、ホーンスイッ
チのアースリングがあるのですが、ヤ
フオクで買ったこのボスは長年ポイン
トブラシが摺動した痕が残っています。
何から付着したのでしょう、ゴム質の
黒い汚れもこびりついています。

取り付ける前に磨きました。わざわざ
付け替えるステアリングホイールです
ものね、少しでも滑らかに回ってほし
いですから。



磨き終わりました。ブラシ痕を消しき
れませんでしたが、指で撫でてもすべ
すべの面になりました。

磨き終わりのこの写真、AM4時28
分の撮影だそうです。ほんと、何やっ
てるんでしょうね。




でも、なんとかこの状態になりました。
ちなみにAM5時28分撮影。今年は
早く寝ましょう……。





同じ日のAM10時に、メルセデスW
124がやって来ました。

W124スピーカーシステム・オリジ
ナルからシリーズ3への交換と、リア
スピーカーキットの取り付け。そして
DSPのセットアップデータ変更とい
うお題目です。

このメルセデスのオーナー氏、W12
4用の初期モデル(オリジナル)から
ずっとスピーカーシステムを応援して
くださっています。メルセデス用のオ
ーディソン製DSPセットアップとい
う企画をスタートしたときもそうでし
たし、実はシリーズ3もリアスピーカ
ーキットもずいぶん前に購入してくだ
さってました。

ぜひわたしに取り付けをしてほしいと
いうことだったのですが、コロナのせ
いで延び延びになってしまい、ようや
くの作業と相成った次第です。



W124スピーカーシステム・オリジ
ナル。2011年に製作を開始したと
きは“オリジナル”という名前を付け
て後継機と区別することになるなんて
夢にも思いませんでした。優に300
セット以上をW124オーナーの手元
に届けることができました。今となっ
ては懐かしい眺めですね。



現在、W124のフロント用は、この
シリーズ3のみ製作しています。10
年以上の時間を掛けて到達した究極の
モデルです。モニタースピーカーのよ
うな細やかな音楽のディテールが丸見
えになるような情報量なのに、何時間
でも大きな音で聴いていたくなるほど
聴き疲れしません。そして何よりも、
音楽性の高さが絶品です。我ながら、
よくぞここまで辿り着きましたと思っ
ています。



W124リアスピーカーキットです。
フロント用にシリーズ3をラインナッ
プしたのに続いてリアスピーカーを同
じユニットで製作することにしました。
W124スピーカーシステム開発の推
移を追いかけてくれている方は、リア
スピーカーは鳴らさないで、フロント
のスピーカーシステムだけで、とずっ
と言ってきたことを知っていると思い
ます。せっかくフロントがいい音にな
ったのに、リアから同じ音をラジオの
ような音で鳴らしたら台無しになって
しまうということで、ずっとそのよう
にアナウンスしてきました。

ただ、左と右の世界にステレオ感があ
るように、前と後ろの間には奥行き感
という音像世界があること、もちろん
よく知っていました。公表することは
なかったはずですが、リアスピーカー
を使ったW124での立体的な音像の
研究や実験もずいぶんやりました。

でも、薄っぺらで鼻をつまんだような
音の純正スピーカーは言うに及ばず、
カーオーディオ用の……つまりがっつ
り低音を、キンキンに高音を、のよう
な音づくりになっているスピーカーで
は、どうにもならなかったんです。フ
ロントで響く官能的なエンジンサウン
ドが吠えているのに、それに同調して
リアシートで古びたディーゼルエンジ
ンが唸る中に身を置くような感じにし
かなりませんでした。

リアスピーカーがフロントと同じ値段
なのは高いよ、ということなのでしょ
うか。ほとんど売れないので製作終了
も検討していますが、凄まじい音楽空
間が実現できます。恐らく、カーラジ
オのような純正オーディオしか聴いた
ことなかった耳が、初めてスピーカー
システム・オリジナルを聴いたときと
同じくらいの衝撃を感じてもらえると
思います。最初はW201、W126
と共用できる仕様で開発していたので
すが、結局妥協できないところが出て
きて、W124専用モデルになってし
まったことも敗因のひとつかもしれま
せんね。



オーディソン製のDSPパワーアンプ
です。W124セダンの場合は、トラ
ンク内の天面トレイ部に取り付けてい
ます。フロント、リアのスピーカーシ
ステムも含めて、取り付けに際して、
ねじ穴1つ開けていません。1枚のデ
ッドニングシートも使っていません。
ここも、猛烈にこだわっているところ
です。パソコンをつないで、サウンド
セットアップを完了しておしまいです。

この写真を撮った時間がPM5時。お
疲れ様でした、というわけでガレージ
のシャッターを閉めて、仕事部屋の
Macの前に座ったはずです。何時に寝
たかまでは覚えていません。あはは。





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あっという間に1月も半分が過ぎまし
た。忌々しい新型コロナ禍はまだまだ
猛威を振るっていますが、皆さんどの
ような新年のスタートダッシュを踏み
しめていますでしょうか。寒さも一段
と厳しくなる頃です。どうぞ体調を崩
さない程度に楽しく気張ってください。

わたしは年末年始がいつだったのか、
まるで記憶にないほど突っ走ってます。
休みたいとは思うんですが、休めない
のは性格のようです。無理が利かない
年齢になっていることを自覚しつつ、
今年も楽しんでゆきたいと思います。


今晩は久しぶりに性急な案件がないの
で、備忘録を兼ねて年末からのことを
書き留めておきたいと思います。とは
言っても、書き物の仕事は公にできな
いことばかりなので、スピーカーシス
テムの話ばかりになりますが、お付き
合いください。




休めない性格だなんて言いながら、い
きなり遊びに行った話です。10月の
末に、JohnとYokoのダブルファンタジ
ー展を観てきました。



ビートルズを聴き始めたのは、小学校
4年生の頃からです。ガールとかミッ
シェルとかミスター・ムーンライトが
最初に好きになった曲です。初めて買
ったアルバムは「ラバー・ソウル」で
す。けっこう渋いところから入ったな
ぁと思いますが、ガールを聴きたくて
このアルバムを選んだのだと記憶して
います。いま、玄関の額の中身を変え
てきました。半世紀ほど前にお小遣い
を貯めて買ったレコードのジャケット、
懐かしいです。



すごく長い時間、会場にいました。3
時間か4時間。

中学生まではポールが好きだったんで
すけど、高校の頃から猛烈にジョンが
好きになりました。どうしてあんなに
挑戦的なのにこんなにやさしい空気が
漂う人なのだろうと、今でも思います。

1つ、1つ、立ち止まってゆっくり感
じてきました。高校1年の12月に遭
遇した衝撃のニュースに至るまでの彼
の時間をわずかでも知ることができて、
ほんとうにうれしかったです。









MX−30の広報車を貸していただき
ました。



借り出したその足でスピーカーシステ
ムに使う新しい材料を調べるために秋
葉原へ。駐車場でたまたま同じような
ボディカラーのメルセデスとBMWと
並びましたが、デザインはもう優劣で
はなく好き嫌いの範疇に確実に入って
いますね。

まだまだ細かなことで気になるところ
はありますが、それは受け手の感じ方
の違いもあるので、どんなクルマにも
存在することなのかもしれません。そ
れを細かく感じて、その理由を知ろう
とするところから自分の仕事は始まる
わけですが、実はもっと大きな範囲を
包み込んでいる空気の気配が、マツダ
のこの先を決定づける大切ごとなのか
もしれないとこの1、2年思っていま
す。

秋葉原にクルマを停めたまま、靴を買
いにアメ横まで歩きました。



ドラゴン・ベアーという靴のメーカ
ー、知ってますか? 売っているお店
が少ないので、上野の直営店で2足買
いました。

このメーカーの製品に、とても運転し
やすい靴があるんです。どうしてこん
なに運転しやすいんだろうと思って、
じっくり観察したことがあるのですが、
ディテールの1つひとつがなるほど理
に適っているなと感じます。写真に撮
ってあるので、こんど紹介しますね。

レーシングシューズまではいらないけ
ど、ミスなくスムースに運転しなけれ
ばならないシーンがわたしの仕事には
あります。テストコースでの試乗会な
どはその典型なのですが、履きつぶし
てしまったものと同じモデルを新調し
たというわけです。


というわけでその日は帰りが9時頃に
なりました。今日から1週間、この子
は何を話してくれるでしょうか。




明くる日、さっそくこんな写真を撮っ
ています。








少し前にあったプレス試乗会と、昨日
走った印象の理由を知るための観察で
す。どんなクルマでも、何らかの印象
を持ったら、それを理屈で納得してお
くことは必ず必要なことです。

よいですね、よくないですね、を感じ
るのは直感ですが、それはクルマに興
味を持たない人も含めた誰にでもでき
ることです。

それがどうしてなのかを機械としても、
クルマが開発された背景としても、自
分の持っている知識を総動員して、わ
からなければ本を読んだり取材を掛け
たりして納得してから、初めて表現の
時間に入れるわけです。

わたしの場合、役者としてのエンタメ
性が低いので、そういうところで頑張
らないと生きていけないですし。


なことを書いているうちに、もう0時
半ですね。なんだスピーカーの話は何
も出てこなかったじゃないか、という
のは皆さん以上にわたしが感じていた
りします。まだ11月の備忘録に届い
ていませんね。明日もそれほど忙しく
ないはずなので、続きを書きたいと思
います。



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今晩中に書きあげて入稿したい原稿を
書いていたら、俳優の福本清三さんが
逝去されたと知らされた。

ハリウッド映画『ザ・ラストサムライ』
で一躍時の人となった福本さんを、京
都・太秦(うずまさ)の撮影所に訪ね
てインタビューを取ったのは、件の映
画が封切りされた翌年の2004年。

彼の演技が世界的な評価を受けたのと
ほぼ同時期だから、役者として猛烈に
脂がのっていた時期と書いても誤りで
はないと思う。

衆目に向かい合う仕事をしている人に
は独特の雰囲気があるものだというこ
とは、わたしがミュージシャンのマネ
ジャーをしているときに知り合った多
くのいわゆる有名人を通じて感じてい
た。果たして撮影所で迎えてくれた福
本さんにも、想像通りの雰囲気が漂っ
ていた。それは、個のオーラで、主役
を張るような俳優ではなく、東映京都
撮影所の社員として勤め上げたいわゆ
る大部屋役者の一人ではあっても、凜
とした個が放つ透明感の強いベールが
全身を包んでいる気配を強く感じた。

自身のホームグラウンドで行われたイ
ンタビューは、リラックスした声色の
うちに進んだが、"私”という強い個
のオーラは終始彼を包んでいたように
記憶している。


けれどもそのオーラは、福本さんが日
常的に纏っているほんの薄いものであ
って、役者としての魂が放つオーラは、
その何百倍も分厚い圧倒的な迫力を持
つものだと知ってたまげたのは、イン
タビューが終わって写真撮影に移った
ときのことだった。

時代劇の撮影セット、縁側で斬られて
悶絶する様子を撮らせてほしいという
カメラマンのリクエスト。

わかりました、よろしいですか、とカ
メラマンとの間合いをはかった次の瞬
間、うわぁぁぁぁぁーー、と悲痛な声
をあげて床に崩れ落ちた福本さんの全
身からは、易々と見てはいけない何か
を目前にしているような気配がブワッ
と放たれていた。怖ろしいと感じて身
を引くほどのオーラを、1/100秒
の時間の壁のあちらとこちらで放ち分
けることができるこの技は、紛うこと
なき超一流のプロフェッショナルの仕
業だと感じたものだ。


福本清三さん逝去の報を受け、そのと
きに書いた記事を紹介したいと思う。

その前に、当時原稿には書かなかった
インタビューのメモの中から、印象的
な彼の言葉(テープに残ったそのまま。
編集なし)を記しておきたい。


福本清三さん、安らかに。


撮影:橋本 玲


それぞれのシーンでそれぞれの仕事で
カチンコが鳴るシーンあるはず。命を
縮めるような仕事なのか、楽しい仕事
なのか。


僕らはカチンコによってバッと心拍数
動きますからね。命縮めてるかもしれ
ませんね。やっぱ心臓バクバクしてる
もん。まぁ、セリフ一言にしてもやっ
ぱ演じないと、主役さんに迷惑掛ける
し、スタッフにも迷惑かけるし。なん
とか、それをうまいことやろうという
ことはありますしね。そのためには、
練習うんぬんも、たった一言のセリフ
でも何回も何回も。そういう神経は使
いますしね。そういうことでいうと、
命ということに関して言えば、縮めて
るような感じはしますけどね。



演じるのは作品のためか、自分の役者
魂のかめか


僕らの仕事は、そこまで掘り下げてい
うのはないんですけど、やっぱり自分
なりには思いもありますし、なんとか
仕事がうまくいくように。やっぱりそ
れは、経験もいりますし、あたまから
はできませんし、先輩に教えてもらっ
たり、やっぱりみんなにからカバーし
てもらわんと自分ひとりでじゃできな
いことですからね。何にでもそうやと
思うんですけどね。自分一人でやって
るみたいに思うけど、みんなの援護と
か教えてもらったりとか、そういう力
でだんだん大きくなってきますしね。
自分の力なんてたいしたものじゃない
ですしね。やっぱりみんなに支えられ
て、なんでもそうやと思うんですけど
ね……。そういう掘り下げて考えたこ
と、ないですよ、そんな難しい……。
役者っていうのは、こうなりたいこう
なりたい、っていう我が強いというこ
とはありますよね。あいつよりもオレ
がっていうのはありますよね。


  ****************************

40年間「斬られ役」一筋
俳優 福本清三さん

そら僕らかてもっと映りたいですよ。
そういう気持ちは、常にあります。で
もね、社会に出て働き始めて自分の役
割っていうか、器量も含めてね、分か
ってくるもんやと思うんです。

主役になる役者さんがおって、自分ら
みたいな大部屋の役者がおって。

ええとか悪いとかやなくて、それぞれ
の持ち場があるんやな、って。我慢す
るんと違って、自分が誠心誠意頑張れ
る場所があるねんな、って。

僕はね、ごっつい田舎の出でね。都会
に出たらネクタイ締めてしゃんとでき
ると思って、京都の親戚んとこの米屋
に丁稚奉公に来たんです。

ところがヨレヨレの格好で毎日汗みど
ろ。これじゃ全然イメージと違う、何
とかここ以外のところで働きたいと思
ってたときに、紹介されて撮影所に入
ったんです。つまり、元から役者志望
というわけでは、全然ないんですね。
それどころか、撮影所って何をするん
やろってなもんです。

それでも大部屋俳優として仕事を始め
て、毎日土手の上を走ったり通行人や
ったりしてるうちに、自分が何をせな
いかんのかということが分かってきま
すやろ。怒られたり怒鳴られたりしな
がらやけど、自分の持ち場をきちんと
演じるためには、どうしたらええんや
ろうって考え始めるようになりますわ
な。

あのね、演じるっていっても主役が芝
居してる背景として後ろ横切ったり、
むしろに包まれて死体として転がっと
ったり、そんなんですけどね。それで
も自分なりに考えて演じるようになる
んです。

若い頃っていうのは、興味持てたら無
垢な気持ちになって、辛抱してでも頑
張ってみようと思えるところが値打ち
やと思います。

ところがね、若いからこそ挫折もある
んです。

あるとき、短いけどセリフを言わない
かんことになったんです。見たことも
ないような大きなキャメラ向けられて。
ところが、うまいこと言われへんかっ
て……。自分には役者は向いてないっ
て、熱でて寝込みました。


で、思ったんです。僕は大部屋俳優の
一番になろうって。

いま思えば挫折しそうになったのは、
何かの見返りを期待しとったからなん
でしょうね。

見返りいうのは、他人の評価でしょ。
自分がこれだけやったら、これだけ与
えられる。それを意識して何かをやる
ようになったら、自分を見失います。
誰かが見てるから頑張るとか、ええキ
ャストもらえたから頑張るとか、そう
いうんではあかんのです。

仕事はね、自分のためにやるもんなん
です。

レンズの端っこに映ってようが映って
まいが、むしろに包まった死体を自分
の最高の芝居で演じることです。

見てもらおうと思うんやなくて、結果
として如何に見られるか、ということ
が大事なんです。

僕は大部屋俳優やから、通行人でも死
体でも斬られ役でもええ。キャメラに
見られてることを意識して真っ白にな
ってしまうんやなくて、自分に集中し
て演じることのできる大部屋俳優とし
ての一番になろうって。


不思議と誰も見てないところで積み重
ねてる努力こそ、何よりも人の目に付
くもんなんですね。

大好きなセリフがありましてね。“ヤ
クザいうのは、利口でなれず馬鹿でも
なれず。中途半端でなおなれず”って
いうんです。ええでしょ。

人間、中途半端がいちばんイカンとい
うことなんですな。


Interview, Writing: 山口宗久
かもめ・2004年3月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです




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