働くということ・34 梅島みよ子さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

株式会社マネジメントサービスセンター 顧問
梅島みよ子さん


仕事で、適性を判断するためのレーダ
ーチャートを書いてもらうことがある
んです。デコボコと金平糖(こんぺい
とう)みたいな格好に出来上がったチ
ャートを見ると、ほとんどの人はうわ
ぁダメなんだなぁって洩らすわね。

まん丸なチャートに完成する人間であ
りたいと思うし、上司はそういう部下
を作りたがるんです。

でもね、例えば決断力が高い人は、慎
重性が低く出やすいんです。当たり前
でしょ。相反する事柄まですべて満点
な人間なんて、いないんです。まずそ
の事実に素直に認めることが、大切だ
と思います。

私で言うと、計画組織力がとても低い
んですね。だから私の周りには計画組
織力にすぐれた人たちがいっぱいいて、
私の短所をカバーしてくれるわけです。

これは私ダメだから、あんたがやって
ねって。

自分のダメなところは、ダメだとオー
プンにしておけば、人が助けてくれま
す。恥ずかしいことなんかじゃないで
すよ。みんなそれぞれデコボコしてる
んですから、お互いに凹んでいるとこ
ろをPRして助けあえばいいじゃないで
すか。完璧な人間なんて、気持ちが悪
いわよね。

私は大正生まれで、ものごころが付く
頃は昭和の不景気だったんです。日本
全体が貧乏で、とにかく人間働かない
と生きていけない。

私はたまたま開業医の娘で、食うに困
るほどの貧乏はしませんでしたが、そ
れでも毎日両親が働く姿を見てました
から、男であっても女であっても働く
のが普通という環境の中で育ってきた
んですね。だから近ごろ働く働くって
世の中大騒ぎしてるけど、なんかピン
とこない。人間生まれたら働くのが当
たり前でしょって思うんです。

そうは言ってもこの歳まで働くことを
楽しみ続けられているのは、好きな仕
事しかやってこなかったからでしょう
ね。

日本の企業は一般に、知識や技術とそ
の実行力の2つだけで個人の能力を測
ろうとする傾向があるんです。けれど
も私は、それに加えて高いモチベーシ
ョンを保つことが必要だと思います。

人はそれぞれ持って生まれた能力の中
に、訓練して伸ばせるものと、そうで
ないものがあるわけです。好きな仕事
に従事してる人はハッピーだけど、頑
張っても伸びる素地のない部分を延々
やらされてるようだと辛いでしょ。

もちろん自分のとっての好き嫌い、向
き不向きを自覚するためには、少なく
ともひとつのことを3年くらいは続け
てみる必要はありますけど、それでも
ダメだと感じるなら別のことに挑戦す
ればいいんじゃないかしら。

常に好きな仕事ができるポジションに
身を置くために私がしてきたことと言
えば、やっぱりスピークアウトするこ
とでしょうね。

こんなことやりたくないわ、なんてネ
ガティブな言葉じゃなくて、この仕事
いいわね、私もやりたいわ、なんだっ
たら手伝わせてって、ポジティブに。

ただ、ひょっとしたらその仕事、実際
にやってみたら同僚よりも時間が掛か
ったり、女性なら妊娠や育児で傾倒で
きない時期が重なったりすることもあ
るかもしれないわね。

でも、そういうときこそ自分に足らな
い部分もスピークアウトして助けても
らえばいいのよ。

その代わり、少々評価が悪かろうが給
料下げられようが、あきらめること。
壺の中に突っ込んだ手を抜きたければ、
握ってる栗は放さなきゃ。会社は経済
体ですからね。

でもね、そんなことは毎日生き生きと
楽しく働けることに比べれば、大した
ことじゃないと思うわよ。

Interview, Writing: 山口宗久

「かもめ」2006年12月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです


※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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