働くということ・33 叶井俊太郎さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

映画宣伝プロデューサー
トルネード・フィルム 
代表取締役社長 叶井俊太郎さん

“巨乳ランドリーもみ洗い”なかなか
いいでしょ。そう、海外のポルノ映画
のタイトルです。

アルバトロスという映画配給会社に勤
めて最初に与えられた仕事は、海外か
ら買い付けたポルノ映画に邦題をつけ
ることでした。初出勤の日から3年く
らいやってましたね。何という仕事を
やらせるんだなんて、全く思いません
でした。それどころか、結構楽しんで
やってましたから。

タイトルを目にした人がニヤッとして、
どんな内容なんだろうとか、おもしろ
そうとか、観てみたいとか思う瞬間が
あるんだろうなって思うと、それを考
えることがどうしようもなく楽しかっ
たんです。

自分の作ったタイトルで、誰かの想像
力がかき立てられるわけじゃないです
か。映画の内容はともあれ、ね。

誰かを楽しませたいっていう思いは、
いつごろから芽生えたんですかね。ハ
ワイに留学したとき、ラジオ番組のDJ
をやってたんですが、その頃にはすで
にあったと思います。

ワイキキビーチで女の子にマイク向け
て友だち紹介してもらうコーナー作っ
てみたり。DJネームは“ウメ”で、そ
のコーナーは“ココナツ数珠”つなぎ。
ふざけてますか? 思いつきですよ、
ほんと思いつき。でも楽しいでしょ。

帰国して、仕事しなきゃっていうんで、
やっぱラジオつながりかなと思ってラ
ジオ局のアルバイトみたいなことを始
めたんです。

映画紹介用の資料を集めるように言わ
れて。映画の仕事っていうものがある
のを知ったのは、そのときですね。こ
れはおもしろいかもしれないって直感
して、宣材持ってくる映画会社の営業
マンに、働かせてもらえませんかって
逆に自分の宣伝し続けて、やってみる?
って声掛けてくれたのがアルバトロス
だったんです。

こんなやり方で就職できるわけないよ
なって思ってたけど、やってみたらう
まくいきましたね。

結局営業は、結果オーライなら手段な
んてきっと何でもいいんですよ。

映画業界っていうのは、多分にギャン
ブル的要素が強い世界なんです。これ
は絶対に当たるだろうなんて作品に出
会うことなんてまずなくて、でも扱う
すべての作品に映画館へ足を運んでも
らう動機付けを与えなくてはならなく
て。

さすがにコレはムリだよなぁって思う
作品も含めて、奇跡が起こって大ヒッ
トしたらどうしようなんてこと考えな
がら、プロモーションするわけです。

僕の仕事はエンターティナーですから、
たとえそれがどんな内容の作品であっ
ても、ハッとするようなタイトルやキ
ャッチを示して映画館までの道を敷く
んです。

映画館を出てくるときに、満足してた
り頭に来たり、いろいろ感想はあると
思うんですが、少なくとも観てみたい
という楽しい気分にはなってもらえた
のかなって。

そのためにどういう手法を採るかはす
べて自分基準で、自分の中で最大限に
膨らませた妄想の中からコレだと思う
もので表現するのが僕のやり方なんで
す。

小学生の頃に映画のチラシを2万枚も
集めて、内容を妄想しながら楽しんで
たことと本質は変わらないんですよ。

邦画を扱いたくて独立して、何本かの
話題作を提供することができましたけ
ど、すべて周りに影響されることなく
自分基準のやり方で突き進んでいける
のは、オレはエンターティナーなんだ
っていう確固たる自信があるからだと
思います。

過去の実績の上に立つことよりも、こ
んなに楽しい発想、絶対に自分にしか
できないって信じ続けることこそ、
僕の原動力だと思うんです。

Interview, Writing: 山口宗久


「かもめ」2006年11月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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