ゴッドウルフの行方/ロバート・B・パーカー | れきしくん

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二十世紀~現代アメリカの作家ロバート・B・パーカー(1932~2010)の小説『ゴッドウルフの行方』(1973)を読みました。





ロバート・B・パーカーはハードボイルド小説を得意とする作家です。僕はパーカーには全く興味なかったのですが、村上春樹さんがパーカーのファンと知ったときから認識を改めて今冬ようやく読む機会を得ました。パーカーは多作家で何を読もうか迷ったのですが、スペンサー・シリーズが最も人気とのことで、中でも『約束の地』(第五作)と『初秋』(第七作)が面白いらしいのでそれにしとこうと思いました。しかしこのシリーズはそれぞれが独立した長編小説ですが、登場人物が一作ごとに成長を遂げていって人間関係も微妙に変化していくとのことなので、それならばシリーズの始めから読んだ方がよいかと思って第一作の『ゴッドウルフの行方』から順番に(飽きるまで)読んで行くことにしました。






1973  The Godwulf Manuscript

『ゴッドウルフの行方』

大学内で起きた、中世の貴重な写本の盗難事件の行方は?話題のヒーローのデビュー作


スペンサー・シリーズ第①作。

ロバート・B・パーカー(41歳)の小説デビュー作。読んだ感想→まあまあ。ふつう。可もなく不可もなく。それなり楽しめた。スペンサー・シリーズは回を重ねるごとに面白くなっていくそうなので今後が期待出来るのなら一回目としては悪くないです。ボストンが舞台ということで地理を頭に入れることに注力しました。


★★★☆☆




1974  God Save the Child

『誘拐』

家出した少年を捜索中、両親の元に身代金要求状が!スペンサーの恋人スーザン初登場


スペンサー・シリーズ第②作。

ロバート・B・パーカーの文章にだいぶ馴染んできました(翻訳ですが)。レイモンド・チャンドラーの小説と似た雰囲気です。事件の経過とか解決はそんなに面白くはないですが、ボストンの町の描写とか、主人公が料理してたり食事したりジョギングしたり、日常の詳細な記述を読んでるのは楽しいです。


★★★☆☆




1975  Mortal Stakes

『失投』

大リーグのエースに八百長試合の疑いがかかった。現代の騎士、私立探偵スペンサー登場


スペンサー・シリーズ第③作。

ボストンと言えばレッドソックスしか知らなかったので、ようやくフェンウェイ・パーク(レッドソックスの本拠地)が出てきたので嬉しいです。作者のパーカーはマサチューセッツ州出身なのでボストンが地元という感じがよく出ています。ストーリーは前回よりも凝っていて面白くなってます。難点は探偵のスペンサーがちょっとおせっかいなことです。


★★★☆☆




1976  Promised Land

『約束の地』

依頼人夫婦のトラブルを解決しようとするスペンサー。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作


スペンサー・シリーズ第④作。

このシリーズの中では唯一賞をとっているので期待しましたけど出来としては平均レベル。


★★★☆☆




1978  The Judas Goat

『ユダの山羊』

老富豪の妻子を殺したテロリストを捜すべくスペンサーはホークとともにヨーロッパへ!


スペンサー・シリーズ第⑤作。

前作までと比べてスケールがでっかくなりました。主人公のスペンサーは探偵というよりほとんど殺し屋。ここまで読んだ中ではこれが一番好きです。


★★★☆☆




1980  Looking for Rachel Wallace

『レイチェル・ウォレスを捜せ』

誘拐されたレズビアン、レイチェルを捜し出すため、スペンサーは大雪のボストンを走る


スペンサー・シリーズ第⑥作。

ずっと連続でこのシリーズを読み続けてきたのでさすがにちょっと飽きてきました。ですが、最後まで読んだらやっぱり面白かった!


★★★☆☆




1980  Early Autumn

『初秋』

自閉症の少年を自立させるためにスペンサーは立ち上がる。ミステリの枠を越えた感動作


スペンサー・シリーズ第⑦作。

マッチョな探偵筋肉と幸薄い少年赤ちゃんの交情がメインのシリーズ中の異色作です。


「あんたは何だ、児童心理学者?」

「いや。スーザンがそう言ったんだ」

「とにかく、彼女は頭がおかしいよ」

「きみが何も知らないことは分かっているが、今のはルール違反だ」

「何が?」

「人が愛している人間をけなすことだ、分かるか?彼女の悪口は言ってもらいたくない」私たちはフライバーグ・センターにいた。

「謝るよ」

「オーケイ」


スペンサーは自閉症の少年に対してなるべく本音で語ろうとするので、スペンサーの本当の人柄がよく分かるのでファンにとっては有難い回です。


★★★★☆






飽きたわけではないですが、ここで一端止めます。このシリーズ無茶苦茶面白いってわけではないですが、それが返ってよいです。洋ドラの刑事ものを観てるぐらいな感じで気軽に楽しめます。『初秋』なんかは傑作だけれど重苦しくもあるから、こういう感動系はたまにでいいです。スペンサー・シリーズは40作あるらしいので死ぬまでには全部読みたいです。